プロジェクト紹介

病床の減床と都市空間の再編による健康イノベーション

研究代表者

研究代表者:伊藤 由希子
伊藤 由希子
津田塾大学総合政策学部 教授

プロジェクトの目標

① 人口減少下におけるダウンサイジング・マネジメントの方法論を効率化すること

病院のダウンサイジング・マネジメントにおいては、規模の縮小と生産性の向上を両立することが必要である。そのためには、既存の病院事業を転換するきっかけと、他事業からもたらされる代替的な収益の試算が重要である。そこで各自治体の成功事例や失敗事例を踏まえ、具体的で現実的な手段を検討する。

② 既存の医療機関の持つ空間や情報を他業種の事業展開と有機的に結合すること

既存の病院事業を転換するには、その空間の利用価値や医療情報を、他の事業者のマーケティングツールとすることが有効だ。しかし、現状では情報の所有や利用の権限が不明確なために活用されていない。そこで自治体と協力して情報のオープン化を図り、他業種からの投資機会の拡大につなげる。

プロジェクトの概要

日本は諸外国と比べて病床数が多い一方で、病床あたりの医師数が少なく、入院が長期化することが大きな課題となっている。特に、中規模都市では、人口・疾病の動態を踏まえた、病床機能のダウンサイジング・マネジメントが欠かせない。

この現状については、すでに、国の行財政改革や社会保障政策の枠組で、数々の政策が検討されている。しかし、地域における病院の運営主体や自治体では、地域産業への悪影響や病院の経営環境の悪化を懸念し、具体策の実行に至らないことが多い。つまり、「病床が多すぎるのに、それを減らすインセンティブが現場において希薄である」ことが本提案における「解決したい課題」である。

そこで、本プロジェクトでは、病床の減床こそが地方創生や病院の経営改善に必要な選択肢となるよう、方法論としての「減床政策モデル・都市計画モデル」を提案する。そのためには特に、「規模の縮小と生産性の向上が両立すること」と「異業種にとっての投資機会を開拓すること」が、いわば車の両輪として重要である。特に、(1)規模縮小がむしろ生産的なサービス展開の契機となるように投資機会が開拓されること、(2)従来は一つの市町村保険者や医療機関内にとどまっていた、地域の医療の利用実態が、投資のための情報として異業種に活用されること、を本研究での目標とする。

さらに、特定の成功事例や失敗事例の研究をこえて、汎用性のある方法論につなげることがイノベーション政策として重要である。地域において収集すべき情報や、進めるべき法的手続きについても、政策手順が確立するよう知見を蓄積してゆく。


プロジェクトイメージ

ページトップに戻る