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SATREPSザンビアプロジェクトの成果100円検査キットにエジプト政府が注目
2014年01月28日〜30日 エジプト・アラブ共和国 カイロ

SATREPSザンビアプロジェクト「結核及びトリパノソーマ症の診断法と治療薬開発」が開発した結核注1)迅速診断法について、研究代表者の鈴木定彦教授(北海道大学人獣共通感染症センター)は、エジプト中央公衆衛生研究所(Central Public Health Laboratory)で技術講習会を実施しました。これは、エジプト政府保健人口省(Ministry of Health and Population)の国家結核対策プログラム(National Tuberculosis Program:NTP)注2)の要請を受けたものです。

今回のエジプトでの技術講習会には、エジプト側から国家結核対策プログラムのプログラム長をはじめ、職員、研究員が参加し、この診断法に高い関心を示しました。講習会後には、国家結核対策プログラムから鈴木教授に対し、エジプトでの公定法としての承認も視野に入れ、本プロジェクトの診断法の評価試験をしたいとの提案もなされました。 本SATREPSのザンピアプロジェクトが開発した診断技術は、試験管内で遺伝子断片を大量に増幅する技術(LAMP法)を応用しています。1検体あたり約100円で結核菌を迅速に検出します。また、アフリカ睡眠病注3)をおこすトリパノソーマ原虫の遺伝子を検出可能な診断キットも開発しました。

従来の他の検査法では操作が複雑で、結果の判定までに時間がかかるなどの課題がありました。また、感染症検査にはほかに、PCR法という病原体のDNAを増幅する迅速で確実な方法がありますが、1検体あたりの検査費用はおよそ1,000円で、アフリカでは普及が進んでいませんでした。

本プロジェクトの約100円という低コストの検査キットは、試薬をすべて1つにして乾燥状態としているので、迅速・簡便・確実であり、冷蔵保存・流通が難しい途上国でも室温保存が可能で取り扱いやすくなっています。

なお、この結核診断法はザンビアでの公定法としての承認を受けるため、同国政府保健省主導の下、大学研究教育病院を中心としたチームによる評価試験の段階に入っています。また、アフリカ睡眠病診断法については、ザンビアで実際に患者の診断に活用され始めています。

このように本プロジェクトの成果は、SATREPSが実施されたザンビアだけでなく、エジプトにも波及しています。今後、世界保健機関(WHO)や企業とも連携していく予定で、他の多くの途上国への成果の展開が期待されています。

注1)結核
結核菌によって引き起こされる感染症で、世界で約20億人が感染しているものと考えられている。2011年の世界の新規患者は約900万人、死亡者は約140万人、我が国の新規患者は22,681人、死亡者は約2,166人と報告されている。
注2)国家結核対策プログラム(National Tuberclosis Program:NTP)
エジプト政府により、1989年保健人口省内に設置。同省傘下の公的医療機関に対し、主に結核サーベイランスや、結核患者に対するDOTS(Directly Observed Treatment Short Course、直接監視下短期化学療法)の導入を推進してきている。
注3)アフリカ睡眠病
ツェツェバエが媒介する寄生性原虫トリパノソーマによって引き起こされる感染症。サハラ砂漠以南のアフリカに見られる疾病で、年間の死亡者は約5万人と推定されている。早期に発見した場合には治療できるが、中枢神経症状を呈した患者の致死率はほぼ100%と言われている。我が国での発生は無いが、アフリカからの帰国者による発生が疑われた場合には診断が必須である。
  • SATREPS
  • http://www.jst.go.jp/global/
  • 地球規模課題対応国際科学技術協力(Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development)の略語。独立行政法人科学技術振興機構(JST)と独立行政法人国際協力機構(JICA)が共同で助成し、地球規模課題解決のために日本と開発途上国の研究者が共同で研究を行う3〜5年間のプログラムです。39カ国77のプロジェクトが実施されています。
  • SATREPS平成20年度採択プロジェクト
    「結核及びトリパノソーマ症の診断法と治療薬開発」
    研究代表者:鈴木 定彦 北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター 教授
  • http://www.jst.go.jp/global/kadai/h2012_zambia.html

サイエンスニュース2013
アフリカの感染症と闘う 100円検査キット開発(2014年02月06日配信)より