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「第三回アジア・アラブ新エネルギーフォーラム」に参加して〜SATREPS学生インターン体験記
2013年05月06日〜08日 青森県 弘前大学


シリカから太陽電池級シリコンを得る弘前大の直接還元炉


弘前大の創立50周年記念会館で開かれたフォーラム。数多くの研究成果が発表された。


アルジェリア側の研究代表者であるオラン科学技術大学のStambouli教授とSATREPS学生インターンの尾城さん

「第3回アジア・アラブ新エネルギーフォーラム」に参加して〜SATREPS学生インターン体験記
理解者・協力者連携促進員 尾城旺子(上智大大学院理工学研究科M1年)

SATREPSの22年度採択課題「サハラを起点とするソーラーブリーダー(SSB)研究開発」のプロジェクト関係者が集まる「第3回アジア・アラブ新エネルギーフォーラム」が5月6日から3日間、弘前大学で開かれ、私もSATREPS学生インターンとして参加いたしました。国際共同研究の相手国であるアルジェリアだけでなく、チュニジア、ドイツ、中国、韓国、台湾など9か国から約130人が参加し、太陽電池や超伝導に関わる様々な研究発表を聞くことができたのは、大変有意義な体験だったと感謝しています。

弘前大学の伊高健治准教授にご案内いただき、プロジェクトの研究で用いられている同大学北日本新エネルギー研究所にある実験装置を見せていただいたことが強く印象に残っています。高純度シリカから太陽電池級シリコンを取り出す直接還元炉と呼ばれる装置です。

カーボン製のルツボの中に砂から取り出したシリカを投入し、高周波による加熱で1800度の高温で反応させ、太陽電池級シリコンを取り出します。私が一番驚いたのは、ルツボ内へのシリカ(二酸化ケイ素)投入の方法でした。ただ無造作に試薬を入れるのではなく、二酸化ケイ素とカーボンを何層にも重ねて置くことにより、太陽電池級シリコンを最も効率よく析出させているとうかがいました。

実験によって還元できた太陽電池級シリコンは約5グラムで、実用化するにはさらに多くの太陽電池級シリコンを取り出す必要があるそうです。「ルツボを大きくすればいいのでは?」と質問してみたのですが、「たとえば大きなドラム缶にシリカを投入しても1800度にまで上げる機材や電力がなく困難」とうかがい、最先端の研究を進める難しさを垣間見たような気がしました。

会期中の忙しいスケジュールを調整していただき、アルジェリア側の研究代表者で、オラン科学技術大学(USTO)のA.B.Stambouli教授にインタビューをさせて頂く機会もありました。インタビューを通じて、Stambouli教授が、自分の研究や母国アルジェリアのことだけではなく、日本のことまで考え、このプロジェクトを成功させたい、という熱い思いを持っておられたことを感じました。私自身も、今後はもっと英語力を身につけて自信をもって意見交換ができるよう、積極的に文化交流をしていきたいという思いを強くしました。

Stambouli教授の専門はもともと電子工学だったということですが、現在は太陽光発電を使って砂漠の地下水をくみ上げ、脱塩化して砂漠の灌漑に利用する社会システムに取り組んでおられるとのことです。インタビュー記録を一問一答でご紹介したいと思います。

尾城さん: 太陽光発電と水利用を結び付けたStambouli先生の構想はとても斬新なアイディアだと思います。しかし、砂漠で水を確保することは難しいのではないですか。

Stambouli教授: サハラ砂漠の地下には大量の地下水が眠っています。しかし、地下水を地上まで汲み上げるためのポンプが必要です。その地下水は少し塩辛いため、脱塩化をしなければなりません。ポンプ、脱塩化ともに大量の電力が必要です。これは、海水を使用する時も同様です。

尾城さん: サハラ砂漠でこのプロジェクトを行う意義を教えてください。

Stambouli教授: 世界の中で北アフリカと中東が太陽光発電の導入ポテンシャルの高い地域であるとされています。そのなかでも世界最大の砂漠であるサハラは、最も高いソーラーポテンシャルを持っている、非常に好条件な地域です。無尽蔵にある砂から太陽電池級シリコンを作り出すことができれば、太陽光発電パネルを安価に調達でき、サハラ砂漠全体に敷き詰めることも夢ではありません。

尾城さん: このSSBプロジェクトが始まったきっかけは何ですか。

Stambouli教授: 2009年に鯉沼教授が計画を発表したのが始まりです。そこからJICA、JSTの協力を得て、プロジェクトが進み始めました。現在、USTOに研究所、SaidaとAdrarで実験所が設置されています。私は鯉沼教授とAdrar周辺で砂のサンプルを取り、その砂の成分が太陽電池級シリコンの原料としてふさわしいことを発見しました。砂は砂漠に無限にあるので、その砂を用いるとコストが削減できるのです。サハラ砂漠の土地の全体のたった1割に太陽光パネルを敷き詰めれば、ヨーロッパ全体の電力を賄うことができるほど、大きなポテンシャルがあるのです。

尾城さん: アルジェリアと日本が国際共同研究に取り組む意義は何でしょうか。

Stambouli教授: 3点あります。まず一つ目は専門知識の共有です。両国の研究者がお互いの国を訪問し、研究成果を報告、共有できるには大きな意味があります。二つ目は、将来のビジネスチャンスです。このプロジェクトによってよい成果が出れば、すぐにビジネスに結びつきます。三つ目は文化交流です。生活文化、とくに食文化の違いなど、プロジェクトでの交流を通じてわかることはたくさんあります。これは、非常に重要なことです。

尾城さん: このプロジェクトの将来性について、ご意見を聞かせてください。

Stambouli教授: サハラ砂漠は強い太陽光、シリコンの原料の砂があふれており、研究拠点としての将来性があります。SSB以外にも、ドイツのDESERTEC Foundation とヨーロッパの企業群で結成するDESERTECというプロジェクトがありますが、これはサハラ砂漠の太陽熱で発電した電気をヨーロッパに送る、という、ヨーロッパのためのプロジェクトです。SSBは、日本が技術を提供する意思があり、北アフリカの将来の発展についても考慮してもらっています。研究代表者の東京大学・鯉沼秀臣客員教授には、同じ試みを北アフリカだけでなく、中東の国々、アフリカにも広げていこうという考えがあります。アフリカの人口の6割は電力インフラが整備されていない現状があるので、この様なプロジェクトは必要であると考えられます。

  • 【関連するリンク】
  • SATREPS
  • http://www.jst.go.jp/global/
  • 地球規模課題対応国際科学技術協力(Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development)の略語。独立行政法人科学技術振興機構(JST)と独立行政法人国際協力機構(JICA)が共同で助成し、地球規模課題解決のために日本と開発途上国の研究者が共同で研究を行う3〜5年間のプログラムです。39カ国で78プロジェクト(条件付採択を含む)が実施されています。
  • SATREPSプロジェクト
    『サハラを起点とするソーラーブリーダー研究開発』
    研究代表者 鯉沼秀臣(東京大学大学院新領域創成科学研究科 客員教授)
  • http://www.jst.go.jp/global/kadai/h2202_algeria.html

世界最大のサハラをはじめとする砂漠は、広大な土地、豊富な日照及びシリコンの原料であるシリカを豊富に含む新エネルギーの宝庫です。そこにソーラーブリーダー(シリコン工場+太陽光発電所)を建設し、生産した電力を使って、さらに新たなソーラーブリーダーを建設していきます。 そして送電ロスの少ない高温超伝導送電システムを用いて、世界各地へ電力を送ることを目指します。エネルギー問題の究極的解決を掲げ、不毛の砂漠を新エネルギー資源に変えていくことを試みます。

プロジェクト実現に向け基礎技術を構築中ですが、シリカを効率的にシリコンに変える新技術など、未知の挑戦的研究にアラブの研究者らとともに取り組んでいます。ほかにも砂漠地帯に高温超伝導ケーブルを通すための基礎データの集積や、サハラの砂の成分分析・分離や未利用資源の調査等を進めています。