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領域紹介

研究領域の概要

 本研究領域は、先端的ライフサイエンス領域と構造生物学との融合によりライフサイエンスの革新に繋がる「構造生命科学」と先端基盤技術の創出を目指します。すなわち最先端の構造解析手法をシームレスに繋げ、原子レベルから細胞・組織レベルまでの階層構造ダイナミクスの解明と予測をするための普遍的原理を導出し、それらを駆使しながら生命科学上重要な課題に取り組みます。  具体的には、様々な生命現象で重要な役割を果たしているタンパク質を分子認識のコアとして位置づけ、以下の研究を対象とします。

  • (1)タンパク質同士または核酸や脂質等の生体高分子との相互作用や、糖鎖修飾、ユビキチン化、リン酸化、メチル化などの翻訳後修飾及び生体内外の化合物による時間的空間的な高次構造の変化等を階層的に捉えることにより機能発現・制御機構を解明する研究
  • (2)ケミカルバイオロジー等の手法による将来の分子制御、分子設計に資する研究
  • (3)結晶構造解析、溶液散乱、核磁気共鳴(NMR)、電子顕微鏡、分子イメージング、質量分析、計算科学、バイオインフォマティクス、各種相互作用解析法等、様々な位置分解能、時間分解能(ダイナミクス)、天然度(in situ からin vivo)で構造機能解析を行う新規要素技術開発
  • (4)要素技術を相補的かつ相乗的に組み合わせることで、重要な生命現象の階層構造ダイナミクスの解明をめざす相関構造解析法の創出

 こうした目標達成に向け、最先端の構造生物学的アプローチとの融合により生命科学上の挑戦的なテーマを独自の視点で取り組む研究、または、独自に開発した革新的構造機能解析手法で細胞分子生物学、医学、薬学分野の重要な課題解決に取り組む研究を奨励します。

H26年度 募集・選考・研究領域運営にあたっての方針

 複雑な生命体の仕組みを、タンパク質、核酸、脂質などの生体分子、それらの集合体としての生体素子群の3次元立体構造をもとに解明する構造生物学は、最先端解析装置や新規構造解析法の開発、ケミカルバイオロジーとの融合などを背景に近年大きな進展を見せています。特に様々な疾患、食品の安全性、環境向上等にかかわるタンパク質の立体構造情報は、医薬開発や産業応用に直結することが期待されています。一方で、構造生物学が今後のライフサイエンス発展の根本的な原動力となるには、細胞内外でのダイナミックな相互作用や高次構造の変化によって引き起こされる生命現象を、分子の複合体及び生体高分子の修飾ならびに動態解析を通して明らかにするというようなさらに高いレベルの研究が求められています。そのためには、さまざまな位置分解能、時間分解能(ダイナミクス)、天然度(in situからin vivo)で解析を行う複数の手法をシームレスに繋げて、特定の生命現象について時空階層を超えた構造機能解析を行うことにより階層構造のダイナミクスを解明するいわゆる 相関構造解析法のようなアプローチも重要となります。また、個々の分子の情報の集積に基づいて生体分子同士の相互作用様式、特に、相互作用表面の推定や相互作用の際の構造変化を正しく予測するための普遍的原理の導出も求められています。

 このような研究を発展させていこうとしたときに、構造生物学と先端的ライフサイエンス領域の研究の真の意味での融合が必要とされます。構造生物学者はターゲットとする生命科学分野に対する深い理解とコミットメントが重要ですし、逆に生命科学分野の研究者が自身の研究対象について構造生物学的なアプローチを縦横に駆使して研究を進めることがより高いレベルの理解へと繋がると考えます。このような異分野融合から生まれる新しい「構造生命科学」は、“原子レベルで生命を見る、知る、そして使う”というところまで進展し、ひいてはライフサイエンスの革新に繋げられるものにまで成長することを期待します。

 本年度の募集に当たっては、戦略目標である「多様な疾病の新治療・予防法開発、食品安全性向上、環境改善等の産業利用に資する次世代構造生命科学による生命反応・相互作用分子機構の解明と予測をする技術の創出」を意識しながら、第一期生11名、第二期生12名の研究分野も考慮して、(1)ライフサイエンスと他の分野の連携、(2)食品・環境分野、(3)NMR、ケミカルバイオロジー、振動分光学等を含む相関構造解析 を重視します。

 さきがけは基本的に個人型研究ではありますが、本戦略目標の基本的な考え方である異分野連携、特に、ライフサイエンスと構造生物学の融合した 「構造生命科学」につながる研究の進め方について明示してください。

 なお領域運営に当たっては、ライフサイエンスと構造生物学の融合を目指すことから、さきがけ領域内だけでなく、同じ戦略目標のCREST「ライフサイエンスの革新を目指した構造生命科学と先端的基盤技術」、CREST「生命動態の理解と制御のための基盤技術の創出」や、平成24年度に開始した文部科学省「創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業」など、関連するプログラムや事業との連携・ 協働を重視して、新しいアイデアや共同研究が生まれるような場を多く設けることにします。