4.研究開発課題の個別評価 (10)脳・神経変性抑制因子を利用した神経変性疾患の予防・治療技術

研究成果最適移転事業成果育成プログラムC(プレベンチャー)
(旧:新規事業志向型研究開発成果展開事業)
平成11年度採択課題事後評価報告書

平成14年12月

研究成果最適移転事業成果育成プログラムC(プレベンチャー)評価委員会
(旧:新規事業志向型研究開発成果展開事業選考評価委員会)

4.研究開発課題の個別評価

(10)脳・神経変性抑制因子を利用した神経変性疾患の予防・治療技術

リーダー 酒井 治美
サブリーダー 池田 穣衛(東海大学総合医学研究所 教授)

1 )) 研究開発の概要
 脳・神経の細胞死(アポトーシス)を抑制するNAIPタンパク質及びNAIP遺伝子を利用した神経変性疾患(老年性痴呆、パーキンソン病、アルツハイマー等)の予防及び治療技術を開発する。神経変性疾患の予防薬や治療薬のスクリーニング・評価、同疾患の遺伝子治療への利用が期待される。

2 )) 事後評価内容
A)成果
 神経細胞のアポトーシスを防ぐNAIP遺伝子を活性化する化合物をスクリーニングする方法を確立し、スクリーニングによって得られた有効な物質をマウスの実験で確認し、そのうち神経変性疾患の治療に応用できる可能性のある数個の化合物が得られた。
 特許出願数:1件

B)評価
計画の達成度: NAIP遺伝子を活性化して神経細胞死を抑制し、神経変性疾患を治療しようとする目標に対して、NAIP遺伝子を活性化する薬剤のスクリーニング系を確立し、マウスで有効な化合物抽出等に成功したことから、ほぼ当初の目標を達成した。しかし、ヒトの神経変性疾患治療薬としての外挿性はなお検討が必要である。
知的財産権: 基本特許に関しては権利化済みで、特許調査も行い競争力あるものと認められるが、幾つかのリード化合物群を含めたスクリーニング系の出願については、迅速な対応が必要である。
起業化計画: 薬剤開発までを見込むのは無理があり、有力企業との提携が必要とされる。事業としてはNAIP遺伝子を軸とした測定系、活性化化合物スクリーニング系など、薬剤周辺技術に的を絞った方が良いかも知れない。海外を含む大手製薬企業は、ベンチャー企業との提携のタイミングに関し、開発ステージの初期段階を避ける傾向にあり、薬剤候補に関するある程度の実験データを求めることから、現段階では製薬企業との提携は難しいかもしれない。
新産業創出: 神経変性という難病への治療法という重要性の大きな研究開発であり、稀少薬の範疇に入ると思われる。医療面での必要性は高いが、マウス実験の段階では、なお未知の部分が大きい。
総合・その他: 当初の技術面での目標はほぼ達成したが、研究開発終了時点では、ベンチャー企業設立には至らなかった。創薬ベンチャー企業に関する製薬企業やベンチャーキャピタルの考え方は、研究着手時点より保守的となっている面もあり、起業化に関してはやむを得ない面がある。

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