科学技術振興事業団報 第27号

平成9年7月22日
埼玉県川口市本町4-1-8
科学技術振興事業団
電話(048)226-5606(総務部広報担当)

「鉄・遷移金属系ナノ結晶軟磁性合金の製造技術」の開発に成功

 科学技術振興事業団(理事長 中村守孝)は、財団法人電気磁気材料研究所所長 増本健氏、東北大学金属材料研究所教授 井上明久氏の研究成果である「鉄・遷移金属系ナノ結晶軟磁性合金の製造技術」を当事業団の委託開発制度の平成4年度課題として、平成5年3月から平成9年3月にかけてアルプス電気株式会社(社長 片岡政隆、本社 東京都大田区雪谷大塚町1−7、資本金約212億円、電話(03)3726-1211)に委託して開発を進めていた(開発費約10億7千万円)が、このほど本開発を成功と認定した。
 エレクトロニクス関連機器を構成する部品の中で、スイッチング電源用トランスやノイズフィルタなど磁気応用デバイスの開発は、半導体デバイスに比べ遅れた状況にある。このため磁気応用デバイスの高性能化、小型化を可能とする高い飽和磁束密度と優れた軟磁気特性(透磁率、保磁力など)を兼ね備えた新材料の開発が望まれていた。
 本新技術は、鉄・遷移金属系非晶質合金を500〜700℃で熱処理して、粒径5〜15nmの微細な鉄結晶が非晶質相中に均一分散した組織とすることにより、従来材料よりも高い飽和磁束密度と高い透磁率を同時に兼ね備えた合金を製造するものである。
 本新技術による合金は、飽和磁束密度、透磁率などの諸特性において優れ、かつ、高周波領域においても磁心損失が小さいことから、特にkHz帯域用スイッチング電源に使用されるトランス、ノイズフィルタなどの種々の磁気部品の磁心(コア)として用いられ、電子機器の高性能化、小型化に寄与するものと期待される。

「鉄・遷移金属系ナノ結晶軟磁性合金の製造技術」(背景・内容・効果)

従来合金と本新技術による合金との比較(図1)

B-H曲線(磁気ヒステリシス曲線)(図2)

Fe-M-Bナノ結晶軟磁性合金の高分解能透過電子顕微鏡写真(写真1)

Fe-M-Bナノ結晶軟磁性合金薄帯(写真2)

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