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科学技術振興機構報 第700号

平成21年12月22日

東京都千代田区四番町5番地3
科学技術振興機構(JST)
Tel:03-5214-8404(広報ポータル部)
URL http://www.jst.go.jp

冷凍倉庫で自動走行可能なフォークリフトの開発に成功

JST(理事長 北澤 宏一)はこのほど、独創的シーズ展開事業・委託開発の開発課題「冷凍倉庫におけるガイドレス無人フォークリフト」の開発結果を成功と認定しました。

独創的シーズ展開事業・委託開発は、大学や公的研究機関などの研究成果で、特に開発リスクの高いものについて企業に開発費を支出して開発を委託し、実用化を図っています(平成21年度の課題公募は、既存事業を再編し新規事業A-STEPにて実施します。詳細情報 http://www.jst.go.jp/a-step/)。

本開発課題は、岡山県立大学 情報工学部 神代 充 准教授の研究成果をもとに、平成18年3月から平成21年3月にかけて日本輸送機株式会社(代表取締役社長 裏辻 俊彦、本社住所 京都府長岡京市東神足2−1−1、資本金48億9000万円)に委託して、企業化開発(開発費約2億円)を進めていたものです。

冷凍倉庫におけるフォークリフト作業は作業者の健康面や作業の効率面から無人化が求められていましたが、これまでの無人フォークリフトではガイド設備注1)を使用した低速走行しかできないため不便で、普及が遅れていました。

この新技術は、周囲状況を搭載カメラで検知して自律制御を行いながら自動走行する方式で、有人フォークリフトと同等性能を有するガイドレス無人走行です。

有人なみの時速10kmを超える自律走行を達成するために倉庫内の3次元CAD情報注2)を2次元情報に変換してカメラ画像と比較する技術を確立し、画像処理にかかる計算時間を大幅に短縮することに成功しました。その結果、最高時速15kmおよび走路上の障害物判定時間0.5秒以内を達成しました。

この新技術により冷凍倉庫の作業効率化が進み、さらに劣悪な環境作業から作業者が解放されることにもつながります。

また、今後、無人化ニーズが高まるものと思われる原子力関連設備や危険物管理区域など他の分野での無人作業用に応用され、普及していくことが期待されます。

本新技術の背景、内容、効果の詳細は次の通りです。

(背景) 有人フォークリフトと同等性能を有するガイドレス無人フォークリフトが望まれています。

現在、冷凍倉庫における有人フォークリフト作業は、低温環境であることから作業者の健康上の問題で長時間の連続作業ができず、非効率的であることからガイド設備のついた無人フォークリフトが開発されています。しかし、ガイド設備を必要とする無人フォークリフトは導入の経済的負担が大きいことや、既存の施設への導入が困難こと、有人運転に比べ走行速度性能が低いことやレイアウト変更などへの対応が悪いという問題があり、普及が進んでいませんでした。これらの問題を解決するために有人フォークリフトと同等性能を有するガイドレス無人フォークリフトが望まれていました。

(内容) リアルタイムで対象物を認識できる高速画像処理技術により高い作業効率が期待できます。

本技術では、倉庫内のCAD情報からあらかじめ作成した3次元モデル仮想空間画像(図1右上)と、カメラから得られるリアル空間画像(図1左上)を比較して自車の位置を特定し、自動走行を行います。さらにその位置のあらかじめもつ画像の輝度データとカメラ画像の輝度データを比較して障害物を認識します。(図2

自動走行および障害物認識を高速に計算する画像処理技術を開発した結果、自動走行の最高速度は有人走行なみの時速15kmに達し、走路上の障害物を0.5秒以内に認識して緊急停止することが可能になりました。さらに、カメラ画像情報から目的物の形状を認識し自動荷役する機能や、複数台の荷役作業を可能とするフォークリフトの倉庫管理システムを開発した結果、有人フォークリフトと同等性能を有するガイドレス無人フォークリフト(図3)を実現しました。

(効果) 無人化ニーズの高い幅広い分野への展開が期待されます。

本技術により、これまでは無人フォークリフトの導入が困難であった、既存の冷凍倉庫や新規冷凍倉庫への導入が容易になることから冷凍倉庫の自動化が進み、作業の効率化や作業者を劣悪な作業環境から解放することにつながります。

また、今後、少子高齢化や安全への配慮などにより原子力関連設備や危険物管理区域など、無人化が望まれる分野への展開も期待されます。

<参考図>

図1

図1 仮想空間イメージとカメラ画像の比較により位置を特定

図2

図2 障害物判定処理

カメラ画像データ(図(a))で自車の位置を確認して、あらかじめ持っている輝度データ(図(c))を抽出する。障害物がある場合、カメラ画像データ(図(b))を輝度データ化したもの(図(d))と図(c)を比較して障害物を認識する。

図3

図3 ガイドレス無人フォークリフト

<用語解説>

注1) ガイド設備
無人搬送車や無人フォークリフトを誘導走行させるために必要な地上設備のこと。電磁誘導式(床内または床上に設置された誘導線に電流を通じ、発生する磁界を検知して誘導する方式)や磁気誘導式(床内または床上に設置された発磁体を磁気センサーで検知して誘導する方式)が一般的である。
注2) CAD情報
CAD(computer-aided design=コンピューター支援設計システム)により生成されたデジタル情報。本稿においては、建物の柱など建造物の3次元図面データを指す。

開発を終了した課題の評価

<お問い合わせ先>

日本輸送機株式会社

広報担当:小泉 秀幸(コイズミ ヒデユキ)
総務部 総務課
〒617-8585 京都府長岡京市東神足2−1−1
Tel:075-956-8602 Fax:075-955-3797

開発担当:長谷 日出樹(ハセ ヒデキ)
技術本部 物流システム技術部 エンジニアリング課
〒521-1334 滋賀県蒲生郡安土町西老蘇8番地1
Tel:0748-46-6860 Fax:0748-46-4843

独立行政法人 科学技術振興機構 イノベーション推進本部 戦略的イノベーション推進部
担当:三原 真一(ミハラ シンイチ)、室賀 薫(ムロガ カオル)
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8995 Fax:03-5214-8999