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科学技術振興機構報 第661号

平成21年8月7日

東京都千代田区四番町5番地3
科学技術振興機構(JST)
Tel:03-5214-8404(広報ポータル部)
URL http://www.jst.go.jp

積層成形技術による屈折率分布型モノクロレンズアレイの製造に成功

 JST(理事長 北澤 宏一)はこのほど、独創的シーズ展開事業・委託開発の開発課題「屈折率分布型レンズ注1)製造技術」の開発結果を成功と認定しました。
 独創的シーズ展開事業・委託開発では、大学や公的研究機関などの研究成果で、特に開発リスクの高いものについて企業に開発費を支出して開発を委託し、実用化を図っています。(平成21年度の課題公募は、既存事業を再編し新規事業A−STEPにて実施します。詳細情報 http://www.jst.go.jp/a-step/
 本開発課題は、鳥取大学 教授 古田 武の研究成果をもとに、平成18年3月から平成21年3月にかけて日本ライトン株式会社(代表取締役社長 余 敬倫、本社 東京都千代田区外神田2丁目16番2号、資本金13億9642万9000円)に委託して、企業化開発(開発費約1億3000万円)を進めていたものです。
 屈折率分布型レンズは、屈折率分布により光線を曲げて光を集めるレンズで、正立像を映しだすことができます。そのため、レンズを多数並べてアレイ状とすることによって、ファックスやスキャナーなどの読み取りレンズとして利用されています。しかし、屈折率分布型レンズの製造には高度な制御技術が要求され、製造が極めて難しく、多大なエネルギーが必要でした。
 この新技術は、屈折率の異なる高分子溶液から芯ファイバーを引き上げ、連続的に層を積み重ねて同心円状に全体を形成することにより、滑らかな屈折率分布を形成し、モノクロファックスに必要な解像度を達成しました。
 プラスチックの屈折率制御技術は、光学素子製造の将来を担う重要な技術の1つとして考えられています。この開発では、芯ファイバーの引き上げによる連続積層成形という従来とは異なるアプローチから製造技術を確立しました。今回の開発成果を応用し、さらに解像度を高めたカラー用レンズアレイまで技術を発展させることが期待されます。また、新しいプラスチック光学材料は次世代プラスチック光ファイバーや、プラスチック球面レンズへの応用など幅広い光学分野への展開が期待されます。

 新技術の背景、内容、効果の詳細は次の通りです。

(背景) 効率的に屈折率分布型レンズを製造する技術が望まれています。

 屈折率分布型レンズ(図1)はファックスやスキャナーの読み取りレンズとして使用されていますが、屈折率分布型レンズの製造には屈折率を内側から外側へ同心円状に滑らかな変化を持たせるための高度な制御技術が要求され、製造が極めて難しく、多大なエネルギーが必要でした。そこで、低エネルギーかつ簡便に屈折率分布型レンズを製造する技術の開発が望まれています。

(内容) 低エネルギーで屈折率分布を高い精度で連続的に成形する技術を開発しました。

 本新技術は、屈折率が異なる高分子溶液から芯ファイバー(プラスチック光ファイバー)を引き上げることで、滑らかに変化する屈折率分布を形成しました(図2)。この操作を連続的に繰り返すことで、屈折率分布型レンズを連続的に製造します。光学材料としてはメチルメタクリレート(MMA)注2)が一般的に使用されますが、作業環境の影響を受けやすく、多層を積み重ねて全体を成形すると個々の層における微少な製造誤差も積み重なって大きな誤差となるため、高精度な屈折率分布制御が困難であるという欠点がありました。今回、連続多層成形技術専用のプラスチック光学材料を新たに開発することにより、常温常圧に近い条件で高精度な屈折率分布を形成することができました。その結果、モノクロファックスに必要な解像度を達成しました。

(効果) 幅広い光学分野への展開が期待されます。

 プラスチックの屈折率制御技術は、光学素子製造の将来を担う重要な技術の一つとして考えられています。この開発では従来とは異なるアプローチから製造技術を確立しました。今回の開発成果を応用し、さらに解像度を高めたカラー用レンズアレイまで技術を発展させることが期待されます。また、新しいプラスチック光学材料は次世代プラスチック光ファイバーやプラスチック球面レンズへの応用など、幅広い光学分野への展開が期待されます。

開発を終了した課題の評価

<参考図>

図1

図1 屈折率分布型レンズの結像の様子


図2

図2 積層成形の様子

<用語解説>

注1)屈折率分布型レンズ
 内側と外側の屈折率が滑らかに変化しているレンズ。光ファイバーの一種で、内部に高精度な屈折率分布を持つことでレンズとして作用する。このレンズ素子は正立等倍実像を結像するため、多数配列することで、広範囲の画像を結像する。

注2)メチルメタクリレート(MMA)
 一般的な透明樹脂である、アクリル板、PMMAなどと呼ばれている樹脂の原料。

<お問い合わせ先>

日本ライトン株式会社
〒101-0021 東京都千代田区外神田2−16−2
小野 美穂(オノ ミホ)
Tel:03-3258-6501 Fax:03-3258-6505

独立行政法人 科学技術振興機構 イノベーション推進本部 戦略的イノベーション推進部
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
三原 真一(ミハラ シンイチ)、剱持 由起夫(ケンモチ ユキオ)
Tel:03-5214-8995 Fax:03-5214-8999