○個人型研究(さきがけ)
氏名 | 機関名 | 所属部署名 | 役職名 | 研究課題名 |
青木 淳賢 | 東京大学 | 大学院薬学系研究科 | 助教授 | 生理活性リゾリン脂質の多様性とその意義の解明 |
阿部 郁朗 | 静岡県立大学 | 薬学部 | 講師 | 二次代謝酵素の機能開拓と新規生物活性物質の創製 |
石井 聡 | 東京大学 | 大学院医学系研究科 | 講師 | オーファン受容体の脂質天然リガンドの探索 |
稲田 利文 | 名古屋大学 | 大学院理学研究科 | 助教授 | 機能性RNAによる代謝調節の分子基盤の解析 |
尾池 雄一 | 慶應義塾大学 | 医学部 | 講師 | 「肥満症」におけるエネルギー・脂質代謝制御と血管新生制御との連関の解明 |
木下 俊則 | 九州大学 | 大学院理学研究院 | 助手 | 気孔開閉と細胞膜H+-ATPaseの活性調節機構の解明 |
田中 元雅 | University of California, San Francisco |
Dept. of Cellular and Molecular Pharmacology |
Postdoctoral fellow | プリオン凝集体の代謝産物に着目した細胞機能制御 |
豊島 文子 | 京都大学 | 大学院 生命科学研究科 |
助手 | 細胞膜脂質による分裂軸方向の制御とがん化に伴う変化 |
初谷 紀幸 | 京都大学 | 大学院理学研究科 | 日本学術振興会 特別研究員 |
耐病性植物作出を目指した植物細胞死の制御系の解明 |
深田 正紀 | 国立長寿医療センター | 研究所 | 省令室長 | シナプス機能におけるS-アシル化動態の時空的解析 |
村上 誠 | 財団法人 東京都医学研究機構 |
東京都臨床医学 総合研究所 |
副参事研究員 | 分泌性ホスホリパーゼA2群の分子種固有の機能の解明 |
由良 茂夫 | 京都大学 | 大学院医学研究科 | 助手 | 胎生期低栄養による成長後の代謝異常発生機序の解明とその予防戦略の開発 |
総評:研究総括 西島 正弘(国立感染症研究所 細胞化学部長)
細胞内の代謝研究は、現在、質量分析計などを活用して代謝産物群を体系的あるいは網羅的に解析するメタボローム解析手法の導入により新しい時代を迎えつつあります。本研究領域では、メタボローム研究に資する新しい分析手法の開発、微生物・動物・植物の変異・病態・発生過程等におけるメタボローム解析を行い、特定の細胞状態を規定する代謝産物の同定、新しい代謝過程の発見、代謝産物の変化情報に基づく細胞機能の解明と制御などを目指す研究を対象としました。
本研究領域の募集に対し、計216件と多数の応募があり、これらの研究提案を15名の領域アドバイザーとともに書類選考を行い、とくに内容の優れた研究提案26件を面接対象として選考しました。面接選考においては、研究のねらい、研究計画、研究の主体性、将来性等を中心に審査しました。また、研究構想が本研究領域の趣旨に向き合っていること、高い独創性を有すること、新規性に富むことについても重視しました。選考の結果、本年度の採択課題数は、12件となりました。競争倍率は18倍であり、この分野の研究に対する関心が非常に高いことが示されました。また、書類選考の段階で面接選考の対象とならなかった研究提案の中にも、優れたものが多数ありました。
メタボローム研究は、ゲノム情報を活用するポストゲノム研究として、プロテオーム研究の次に来る新しい領域であり、生化学、細胞生物学、ゲノム科学、バイオインフォマティックス等幅広い分野の研究者の方々から様々な研究が提案されました。本研究領域は、まだ端緒についたばかりであり、メタボローム研究の範囲を厳密に定義することはせずに、新しい生理活性代謝産物の発見、並びに、疾患特異的な代謝マーカーによる診断法の開発、代謝疾患治療薬の開発、有用な代謝産物を効率よく産生する実用生物の開発等を志向し、基礎研究の見地から将来大きく発展する可能性が高いかを考慮しました。その結果、今年度は競争倍率が高く残念ながら、メタボローム研究に関わるすべての分野の提案を採択することはできませんでした。
来年度も、世界的にも黎明期にあるメタボローム研究における新たな方法論の創出や技術展開を目指すという観点から、さらに研究構想を練り上げて挑戦して下さい。世界に先駆けて、我が国がメタボローム研究をリードしていくために、将来を担う研究者の方々が挑戦的な研究構想を持って応募されることを期待しています。