資料4

新規採択研究代表者・研究者および研究課題概要


○個人型研究(さきがけ)

戦略目標「代謝調節機構解析に基づく細胞機能制御に関する基盤技術の創出」
1 研究領域:「代謝と機能制御」
研究総括:西島 正弘(国立感染症研究所 細胞化学部長)

氏名 所属機関 所属学部・
学科など
役職 研究課題名 研究課題概要
青木 淳賢 東京大学 大学院薬学系研究科 助教授 生理活性リゾリン脂質の多様性とその意義の解明 脂質に関するメタボローム解析はポストゲノムの現在の重要課題の一つです。本研究では、生理活性脂質リゾリン脂質に焦点を絞り、その構造・機能に関する解析を行います。リゾ脂質は多様な分子種から構成され、その産生にはホスホリパーゼと呼ばれるリン脂質代謝酵素が関与しています。本研究では、これまで、機能未知のホスホリパーゼに焦点をあて、その機能解析を通じ、新たな脂質代謝系の発見、新しい脂質の機能解明を目指します。
阿部 郁朗 静岡県立大学 薬学部 講師 二次代謝酵素の機能開拓と新規生物活性物質の創製 有機化学を基盤として、医薬品として重要な天然物基本骨格形成に関わる二次代謝酵素の触媒能の可能性を引き出し、さらに酵素機能を人為的に制御することにより、効率的な新規有用物質の生産を目指します。即ち、結晶構造に基づく部位特異的変異の導入により、植物ポリケタイド合成酵素の機能を改変します。また、一連の人工基質をプローブとして作用させることにより、新たな酵素機能を開拓し、非天然型新規生物活性物質の創出を目指します。
石井 聡 東京大学 大学院医学系研究科 講師 オーファン受容体の脂質天然リガンドの探索 ヒトゲノム解析の結果から、100を超える未だリガンド不明のオーファン受容体の存在が明らかになりました。脂質は生体にとって重要な代謝産物ですが、その一部はオーファン受容体を介して機能する可能性が高いと思われます。そこで本研究では、オーファン受容体の脂質天然リガンドを見つけることを目的とします。この研究の成果は、脂質の新しい生体機能や疾患との関係を理解するのに役立ち、また新薬開発を通して疾患治療に貢献できる可能性があります。
稲田 利文 名古屋大学 大学院理学研究科 助教授 機能性RNAによる代謝調節の分子基盤の解析 生命の基本は遺伝と代謝ですが、代謝産物の遺伝子発現における機能、特に翻訳段階での機能はほとんど不明です。本研究では、代謝産物の蓄積という代謝ストレスに応答した遺伝子発現について解析し、代謝産物の新たな機能の解明を目指します。特に翻訳制御の解析により、機能性RNAによる代謝調節の可能性を検討します。代謝調節における新規機能性RNAの役割が明らかになった場合、医学を含めた多くの分野への貢献が期待されます。
尾池 雄一 慶應義塾大学 医学部 講師 「肥満症」におけるエネルギー・脂質代謝制御と血管新生制御との連関の解明 「メタボリックシンドローム」病態の最上流に位置する「肥満」あるいは一見その対極にある「やせ」の表現型を呈すマウスを対象として、メタボローム解析で生体内の代謝変化を網羅的に解析します。生体の脂質蓄積・分解・燃焼・消費システムにおける恒常性維持の分子基盤解明、さらには新しい代謝経路及び経路間の相互作用の発見、新しい生理活性代謝産物の同定、新規創薬標的の特定に挑みます。
木下 俊則 九州大学 大学院理学研究院 助手 気孔開閉と細胞膜H+-ATPaseの活性調節機構の解明 植物の表皮に存在する気孔は、植物特有の代謝反応である光合成に必要な二酸化炭素の唯一の取り入れ口で、太陽光に含まれる青色光に応答して開口し、植物と大気間のガス交換を行っています。本研究では、気孔開閉変異体を用いた気孔開閉の分子機構の解明、気孔開口を含め植物細胞において多様な機能を担っているマスターエンザイム細胞膜プロトンATPアーゼ (H+-ATPase) の活性調節機構の解明を目指します。
田中 元雅 University of California,
San Francisco
Dept. of Cellular and
Molecular Pharmacology
Postdoctoral fellow プリオン凝集体の代謝産物に着目した細胞機能制御 酵母プリオンの系を用いてプリオン凝集体代謝産物の構造、物理的性質とそれが引き出す細胞機能、表現型との相関関係を解明し、その知見を参考に、細胞内プリオン代謝産物の構造や性質を制御することによりプリオン粒子の伝搬を阻害し、プリオン感染を阻止する新規なプリオン病治療戦略の開発を目指します。本研究は原因蛋白質が凝集体を形成する他の神経変性疾患の発症機構解明や治療薬開発にも道を拓くものです。
豊島 文子 京都大学 大学院
生命科学研究科
助手 細胞膜脂質による分裂軸方向の制御とがん化に伴う変化 生物が卵からその固有の形を作っていく過程では、個々の細胞が一定の軸方向に沿って分裂する現象が重要です。細胞分裂の軸方向は、紡錘体と細胞表層に存在する因子との相互作用で決まることが明らかとなってきました。本研究では、細胞膜の脂質成分が分裂軸方向を制御する分子メカニズムを解明することを目指します。また、がん化に伴う脂質成分の分裂期における動態変化を解析することで、腫瘍の早期診断法の新規開発を試みます。
初谷 紀幸 京都大学 大学院理学研究科 日本学術振興会
特別研究員
耐病性植物作出を目指した植物細胞死の制御系の解明 農業は化学肥料と農薬に依存した結果、飛躍的に生産性を向上させてきました。しかし、化学農薬の過剰散布による人体や生態系への影響が社会問題となっています。今後想定される人口増加にともなう食糧問題に備え、薬剤に頼らない環境に調和した病害防除技術の開発が求められています。本研究では、植物本来の生体防御機構を利用した耐病性作物の分子育種を目指します。
深田 正紀 国立長寿医療センター 研究所 省令室長 シナプス機能におけるS-アシル化動態の時空的解析 蛋白質は翻訳後修飾により、遺伝情報を超えて新たな機能や制御機構が付加され、複雑な細胞機能を制御します。中でもS-アシル化修飾は多くの機能蛋白質にみられる脂質修飾であり、蛋白質を特定の膜ドメインに輸送し、その機能をダイナミックに制御します。本研究ではS-アシル化動態を測定、可視化する技術を創出し、S-アシル化修飾反応の全容解明を目指すとともに、特に神経シナプス機能制御機構との関連を明らかにすることを目指します。
村上 誠 財団法人
東京都医学研究機構
東京都臨床医学
総合研究所
副参事研究員 分泌性ホスホリパーゼA2群の分子種固有の機能の解明 膜リン脂質分解酵素である PLA2 には多くの分子種が存在しますが、アラキドン酸代謝あるいは生体膜リン脂質の再構成に関わる細胞内 PLA2 群と比べ、細胞外に放出される分泌性 PLA2 (sPLA2) 群の主たる機能は未だ不明確です。本研究では、遺伝子改変マウスを用いて各 sPLA2 分子種の真の生体内基質を同定し、脂質メタボロームの見地から各酵素の生理機能を明らかにすることを目的とします。
由良 茂夫 京都大学 大学院医学研究科 助手 胎生期低栄養による成長後の代謝異常発生機序の解明とその予防戦略の開発 肥満や耐糖能障害、高血圧を合併するメタボリック症候群の罹患者増加が社会問題となっています。近年の疫学的研究から、胎生期の低栄養が脂肪細胞などの代謝制御機構に恒常的な変化を残し、メタボリック症候群のリスク因子となることが判明しました。本研究では、胎生期の低栄養によってメタボリック症候群を発症するマウスモデルを用いて脂肪細胞の代謝調節における特異的診断マーカーの検索あるいは予防・治療戦略の立案を目指します。