科学技術振興機構報 第192号

平成17年7月25日

東京都千代田区四番町5−3
科学技術振興機構(JST)
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URL http://www.jst.go.jp

湿式成膜法による安価でコンパクトな半導体パッケージ製作技術の開発に成功

 独立行政法人科学技術振興機構(理事長 沖村憲樹)は、独創的シーズ展開事業 委託開発(注1)の開発課題「湿式成膜法による半導体ウエハー上の再配線加工技術」の開発結果を、このほど成功と認定しました。
 本開発課題は、関東学院大学工学部教授本間英夫氏らの研究成果を基に、平成14年2月から平成17年2月にかけて株式会社野毛電気工業(代表取締役社長 佐藤中則、本社 神奈川県横浜市金沢区福浦2-10-1、資本金98百万円、電話045-701-5810(代表))に委託して企業化開発(開発費約312百万円)を進めていたものです。
 半導体の小型軽量化に伴い、実装される基板を高精度に加工できる技術が必要となっています。
 半導体パッケージの製造工程において、小型軽量化を目的とした製作技術である「W-CSP(Wafer Level Chip Size Package)技術」と呼ばれる半導体ウエハー上での再配線加工を行う加工技術は、シリコンウエハー上の多数のチップに回路を形成した後、ウエハー上で電極形成・再配線・樹脂封止を行い、最後にチップ毎に切り分ける技術です。このW-CSP技術の特徴は、切断した半導体チップの大きさそのものがパッケージの大きさになるため小型軽量化できる点、およびウエハー単位ですべての製造工程を行うことにより、製造コストを低減できる点にあります。
 従来、W-CSP技術の電極形成・再配線工程においては、乾式成膜法であるスパッタリングを用いる方法が主に用いられてきましたが、設備が高価であり、大量生産を行う上で多大の設備投資を伴うものでした。一方、湿式成膜法であるめっき法は、大量処理に向いていますが、金属析出条件が難しく、めっき厚制御が困難でした。
 本開発では、めっき処理における添加剤を適切に選定し、液中電位差の調整を行うことにより、析出条件の最適化を行い、電極部へのニッケル・金めっき処理をはじめ、加工精度の高い銅ポスト作製を可能とし、電極部からの再配線加工技術を実現しました。
 本新技術の再配線加工技術は、成膜装置への投資額が軽減するばかりでなく、めっき槽の中で一度に多数のウエハー処理ができるので、電極形成・再配線加工を低価格で行うことが可能となり、小型半導体パッケージ製作分野への利用が期待されています。今後5年間で当該分野の市場において約20億円の販売を見込んでいます。

(注1)独創的シーズ展開事業 委託開発は、平成16年度まで、委託開発事業として実施されてきました。

本新技術の背景、内容、効果は次の通りです。

(背景)  スパッタリング加工法に代わるめっき厚制御に優れた湿式成膜法による半導体ウエハー上の再配線加工技術が望まれていました。

 小型軽量化を目的とした半導体パッケージ製作技術である「W-CSP(Wafer Level Chip Size Package)技術」(図-1)と呼ばれる半導体ウエハー上での再配線加工を行う加工技術は、シリコンウエハー上の多数のチップに回路を形成した後、ウエハー上で電極形成・再配線・樹脂封止を行い、最後にチップ毎に切り分ける技術であり、半導体パッケージ製造工程においては、この方法が一般的になってきました。このW-CPS技術の特徴は、切断した半導体チップの大きさそのものがパッケージの大きさになるため小型軽量化できること、およびウエハー単位ですべての製造工程を行うことにより、製造コストを低減できることにあります。
 従来、W-CSP技術の電極形成・再配線加工工程においては、スパッタリングを用いる方法が主に用いられてきましたが、設備が高価であり、大量生産を行う上で多大の設備投資を伴うものでした。一方、湿式成膜法であるめっき法は、大量処理に向いていますが、金属析出条件が難しく、めっき厚制御が困難でした。

(内容)  めっき処理における析出条件の最適化を行い、電極部からの再配線加工技術を実現しました。

 本開発では、めっき処理における添加剤を適切に選定し、液中電位差の調整を行うことにより、電極部へのニッケル・金めっき処理をはじめ、応力緩和のための加工精度の高い銅ポスト作製を実現しました。
 本技術による電極形成・再配線加工は、次の工程により行われます(図-2)。

(1) 回路を形成したシリコンウエハーに対して、無電解ニッケル・金めっき処理を行い、電極上へのめっき処理を行います。
(2) 再配線パターンを描くため、絶縁性のフォトレジストであるポリイミドをコーティング、露光処理し、2段階の銅めっき(図-3)により、電極部から再配線層を形成します。
(3) フォトリソグラフィー法により、パターンを形成し、銅めっきにより銅ポストを形成します(図-4)。なお、銅ポストは、温度変化や衝撃により、基板とチップ内に発生する応力を緩和します。

(効果)  スパッタリング法に比較し、成膜装置への投資額を軽減するばかりでなく、電極形成・再配線加工を低価格で行うことが可能になりました。

 本新技術の再配線加工技術は、小型半導体パッケージ製作分野、特に携帯用電子機器などを中心に、パソコン、携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオ、DVDレコーダ、大型液晶TV等のデジタル家電製品をはじめ、車載エレクトロニクス分野等の様々な高密度半導体として利用が期待されます。

【用語解説】
図-1 従来技術と新技術のパッケージ比較
図-2 湿式成膜法による再配線加工工程図
図-3 電解銅めっき装置外観
図-4 銅ポストと再配線の拡大写真
開発を終了した課題の評価

この発表についての問い合わせは以下の通りです。

株式会社野毛電気工業常務取締役石原 孝茂
開発営業グループマネージャー梅田  泰
特許室長 山田 忠昭
  TEL 045-701-5810(代表)
JST開発部 開発推進課菊地 博道
福富  博
  TEL 03-5214-8995   FAX 03-5214-8999