熱輸送のスペクトル学的理解と機能的制御

戦略目標

「ナノスケール熱動態の理解と制御技術による革新的材料・デバイス技術の開発」

研究総括

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花村 克悟 (東京工業大学 工学院 教授)

概要

 本研究領域は、将来の持続可能社会および高度情報化社会・産業に革新をもたらすデバイスや新材料の実現に資するために、熱輸送の指向性制御やスイッチングとそれを可能にする原理解明、さらにその理解を支援する計算手法あるいは熱輸送のスペクトル計測等の基盤技術の創出を目指します。
 具体的には、フォノン、分子振動、電子、フォトン(電磁波)、さらにスピンなどの熱を輸送する機構にまで立ち返り、従来の巨視的な熱輸送の概念に、新たに特徴と機能を付与する画期的な研究を推進します。例えば、これらの熱輸送機構について周波数や波長ごとの成分に分解し、成分ごとの輸送指向性付与、遮断を含むオンオフ制御、特定の周波数成分によるエネルギー変換などが想定されます。それによって、熱輸送の本質的な理解と制御に寄与する基盤技術、ならびにそれに関するスペクトル学理の構築を目指します。
 本研究領域では、機械系、物理系、材料系に加え、化学系、生物系、情報系、数理系など、幅広い専門分野の研究を推進し、異なる分野の科学的知識を融合した総合的な取り組みを奨励します。そして、熱の輸送を自在に操るなどといった新たなサイエンスを切り拓く挑戦的・独創的な研究を推進します。

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平成29年度募集・選考・研究領域運営にあたっての研究総括の方針

1.背景
 近年、各種の電子機器において集積化が進み、結果として電子デバイスにおける発熱密度が上昇の一途をたどっています。そのため、従来のパッケージ化されたチップ側壁からの熱輸送による除熱方法では、限界に達しているとの見方があります。例えば、チップ内の発熱位置からダイレクトに、かつ指向性を持って内蔵ヒートパイプに直結できれば、この限界を超えることも夢ではありません。最終的に、スマートフォンなどにおいては、その最表面に熱を拡散させ環境へと放熱することになりますが、発熱位置から最表面までの熱輸送の経路や過程については、構造や材料さらに輸送因子に起因する原理から根本的に見直す必要があります。また、熱が流れてほしくないときには断熱、流れてほしいときには高熱流束といったスイッチングにより、熱マネジメントを最適化することによって達成される省エネルギー技術開発もすでに始まっています。このような熱輸送に関わるオンオフ制御に加えて、熱の行先を右へ左へと自在にスイッチングすることができれば、従来の一方的な断熱といった受動的な対処から、熱輸送に指向性を与えることにより能動的な対処、さらには有効利用へと移行できます。さらに、製造業に関わる産業工場、1台当たりあるいは1戸当たりは小さいものの数量が多い自動車や住宅などにおいて、未利用のまま排出されている熱エネルギーがトータルとして大量に存在しています。こうした熱エネルギーについても、熱を輸送する因子のフォノン、分子振動、電子、フォトン(電磁波)、スピンについて、例えば周波数や波長ごとの成分に分解しかつスイッチングすることができれば、その成分ごとに方向を振り分けることで、例えばフォノン起電力発電やフォトン起電力発電などのエネルギー変換へとつながるなど、熱輸送そのものが指向性に加えて、機能性を有することになります。
 これまで、「放熱(除熱)」「熱輸送」「熱発生」「断熱」「蓄熱」「熱エネルギー変換」等のテーマで研究が展開されてきましたが、高度情報化社会と省エネルギーに先導される、新たな社会的・産業的なニーズを受け、また、近年の微細加工技術の著しい発展や計測・計算技術の高度化を踏まえ、これらのテーマを上記のような新しい視点で捉え、科学技術・イノベーションの創出に繋げることが求められています。

 

2.募集・選考の方針
 実在系において熱エネルギー量を見積もるには温度測定が最も容易です。しかし、その熱輸送については直接その物理量を測定する方法はなく、熱流束測定に代表されるように、既知の熱伝導率を有する物質の2点間の温度差から求めるなど、やはり温度を頼りに見積もられています。この温度はいわゆる平衡状態として定義されます。一方、その熱輸送を、フォノン、分子振動、電子、フォトン(電磁波)、スピンなどが担っていると解釈すると、例えば周波数や波長ごとの成分に分解することにより、その輸送過程においては、熱という概念が当てはまらなくなります。むしろ各成分に分解することにより、輸送される(熱)エネルギーに特徴あるいは機能を付与できる可能性があります。
 本研究領域では、熱輸送を巨視的に理解しようとする従来の研究とは一線を画し、新たな概念・発想・手法を用いて、それぞれの周波数あるいは波長ごとの成分に分解した(熱)エネルギー群の特徴を詳細に理解することで、熱輸送の本質的な理解に迫る、画期的な研究を実施することを目指します。そして、その周波数や波長ごとに、例えば右へ左へ自在に熱輸送をスイッチングするような新たな発想や手法の創出を目指します。さらにこの輸送過程においては、輸送される(熱)エネルギーに特徴あるいは機能を付与できる可能性があり、計測や指向性制御、オンオフスイッチング、エネルギー変換、高分子内の熱輸送、生体・細胞の冷凍における熱輸送など、多様な研究アプローチが予想されます。公募にあたっては、機械系、物理系、材料系に加え、化学系、生物系、情報系、数理系など幅広い専門分野からの研究者の参画に期待します。
 本研究領域では、熱の輸送過程における物理量の定義や直接計測を含め、各系において、こうした周波数や波長ごとの特徴的な(熱)エネルギーを理解・制御するための基盤研究に関する提案を幅広く期待します。
 ナノ(ミクロ)レベルの研究を重視しますが、分野によっては、実在系にスケールアップしたときにナノレベルで確認したメカニズムが有効となる系を念頭に置いた広いテーマを期待します。また、実在系で支配的となり得る、界面での熱輸送現象も重視します。
 なお、周波数あるいは波長ごとのエネルギー群に分解するなどという、本研究領域の趣旨に合致するものであれば、これまでに強力に推進されているテーマを排除することはありません。
 本研究領域では、熱輸送の支配因子であるフォノン、分子振動、電子、フォトン(電磁波)あるいはスピンなどの相互作用に関する研究等、熱輸送の本質から派生した新たなサイエンスへ発展する可能性がある研究も対象とします。

 

3.領域運営の方針
 本研究領域の募集においては、個人研究者による独創的な研究提案を推進するだけでは無く、分野の垣根を越え他の研究者との相互作用により個人研究者が自己の殻を破れるか、将来的に熱科学に関する研究を牽引していく新しい「仲間」を作れるか、という人材育成の観点も重要視しています。また、平成29年度に、同じ戦略目標の下に実施するCREST研究領域「ナノスケール・サーマルマネージメント基盤技術の創出」を始めとする、研究領域内外の研究者との連携の場も活用し、本さきがけ研究が、研究者自身の今後の研究を飛躍させる上で重要なステップとなることを期待します。ついては、研究提案書に、提案者自身が将来的にどのような熱研究を発展させたいかご記載ください。
 本研究領域で採択する研究者は、研究の社会的な背景等をしっかり理解しつつ、自身のさきがけ研究を切り拓き、将来的には産業界との連携を支えられるような人材に成長することを期待します。そのため、本研究領域に参画する研究者は、研究期間中、知財権取得に関する検討を積極的に行っていただきます。
 なお、研究の進展に応じて、文部科学省ナノテクノロジープラットフォームをはじめとする、全国の研究機関や枠組みとの連携や協働を促進します。

領域アドバイザー

粟野 祐二 慶應義塾大学 理工学部 教授
大野 恵美 株式会社IHI 資源・エネルギー・環境事業領域  ボイラSBU 基本設計部 燃焼技術グループ 主査(課長)
木崎 幹士 トヨタ自動車 先進技術開発カンパニー FC技術・開発部 チーフプロフェッショナルエンジニア
小池 洋二 東北大学 大学院工学研究科 教授
中村 真一郎 株式会社デンソー サーマルシステム開発統括部 FP開発室 室長
藤田 博之 東京大学 生産技術研究所 教授
船津 高志 東京大学 大学院薬学系研究科 教授
宗像 鉄雄 産業技術総合研究所 省エネルギー研究部門 研究部門長
森 孝雄 物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 主任研究員
森川 淳子 東京工業大学 物質理工学院 教授

※領域アドバイザーは1名追加予定です。

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