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戦略的創造推進事業CREST研究領域 > 持続可能な水利用を実現する革新的な技術とシステム

研究領域

戦略目標

「気候変動等により深刻化する水問題を緩和し持続可能な水利用を実現する革新的技術の創出」

研究領域名

持続可能な水利用を実現する革新的な技術とシステム
研究領域HP

研究総括

大垣 眞一郎((独)国立環境研究所 理事長)
(副研究総括:依田 幹雄((株)日立製作所 情報制御システム社 技術主管))

概要

 "本研究領域は、現在抱えている、あるいは気候変動などによって将来さらに深刻化すると予想される国内外の様々な水問題への 適応策となる、物理的・社会的な水利用システムの創出を目指します。革新的な水処理技術や水資源管理システムによって、 水供給、排出、再利用、資源回収における、水の質と量の統合的な最適化を行い、エネルギー、コスト、環境負荷、健康・環境への安全性、 地域社会の状況などの観点からもっとも合理的で持続可能な水資源の利用システムを提起する研究で、かつ、実社会への適用性を十分に配慮した 研究を対象とします。
 具体的には、膜、オゾン、セラミックスなどによる高度処理および海水淡水化に関する基盤要素技術開発とそれらの利用システム技術、 水質評価手法、成熟度の高い技術と革新的技術との統合化による上水、下水、工業用水、農業用水、工場排水などの造水・処理・循環・資源回収システム、 地下水の利用も含めた水圏の総合的水資源・水環境管理、水質管理システム、また、新しい原理による革新的な浄水・造水・水利用技術の 開発などに関する研究が含まれます。"

平成23年度採択分

研究課題
迅速・高精度・網羅的な病原微生物検出による水監視システムの開発
研究代表者(所属)
大村 達夫 (東北大学大学院工学研究科 教授)
概要
水循環系を媒介とする感染症リスクの拡大防止策は脆弱であり,安全で安心な水利用を期待する人々に社会的不安をもたらしています。本研究では、毎年560万人にのぼる感染性胃腸炎患者数を低減する新しい水監視システム(WaterWatch)の構築を目指します。下水中の病原微生物を迅速・高精度・網羅的に検出する技術を新たに開発し、その技術を用いて都市下水を継続的に監視することで、感染症発生後速やかに社会に情報を発信することが可能となります。これにより、感染が拡大する前に感染拡大防止策をとれるため、感染拡大を大幅に抑制することが期待されます。
研究課題
安全で持続可能な水利用のための放射性物質移流拡散シミュレータの開発
研究代表者(所属)
沖 大幹 (東京大学生産技術研究所 教授)
概要
持続可能な水利用のためには、人類が利用しようとする水源の水が利用に適しているかどうかを的確に診断予測する技術が不可欠です。本研究では、ヨウ素131 やセシウム137 等の放射性物質が大気の流れによって移動し、雨などに伴って地表面に降下し、土砂等とともに水の流れに沿って川を流下して、どういうタイミングでどの程度の濃度で水道取水源に到達するかを推計できるシミュレータを構築します。これにより、一時的な取水停止や積極的な水処理の実施など臨機応変な対応によって安全な水質が確保されるようになり、安全で安心な水利用の実現に貢献することが期待できます。
研究課題
良質で安全な水の持続的な供給を実現するための山体地下水資源開発技術の構築
研究代表者(所属)
小杉 賢一朗 (京都大学大学院農学研究科 准教授)
概要
気候変動等によるリスクが高まる中、良質で安全な水の持続的な供給を実現するためには、本来の自然の力を活かした、汚染や災害に強い水資源開発を行うことが重要です。本研究では、山地河川流出水の観測とリモートセンシング・物理探査手法とを効率良く組合わせることにより、河川源流域において優良な山体地下水帯を効率よく探査し水資源開発を可能とする革新的な技術を構築します。この技術によって、国土の73%を占める山地の山体を天然のダムとして活用し、水資源の多様性を確保することで良質・安全な水の持続的供給を実現すると同時に、洪水・土砂災害の軽減を図ることが期待できます。
研究課題
多様な水源に対応できるロバストRO/NF膜の開発
研究代表者(所属)
都留 稔了 (広島大学大学院工学研究院 教授)
概要
膜分離法は、健全で持続可能な水再生・再利用のために必要不可欠な技術となっています。日本は世界トップの膜製造技術とシェアを誇りますが、現状では膜汚染や膜洗浄の困難さなど多くの課題があります。本研究では、塩素存在下で、広範囲のpHおよび熱水などの過酷な条件でも使用可能なロバスト性を有する逆浸透/ナノろ過(RO/NF)膜を開発するとともに、多様な原水への対応可能性を明らかにし、その実用化のための実証試験を行います。この技術開発によって日本の膜技術と膜処理システムが世界を引き続きリードすることが期待できます。

平成22年度採択分

研究課題
ナノテクノロジーとバイオテクノロジーの融合による革新的な水処理微生物制御技術の開発
研究代表者(所属)
池田 宰 (宇都宮大学大学院工学研究科 教授)
概要
ナノテクノロジーとバイオテクノロジーの融合による革新的な水処理技術を開発します。新たに開発するナノ素材を用いて微生物のコミュニケーション機能を制御することにより、まったく新しい微生物制御技術を確立します。この技術を下水処理や膜処理で問題となるバイオファウリング対策やバイオフィルムの制御などに応用し、高効率な水処理の実現を目指します。
研究課題
都市地下帯水層を利用した高度リスク管理型水再利用システムの構築
研究代表者(所属)
伊藤 禎彦 (京都大学大学院地球環境学堂 教授)
概要
将来到来する気候変動にともなう水量・水質変動の激化に対し適応するために、地下での水質変換過程を取り込んだ都市内水循環利用システムを研究します。すなわち、都市下水を、地下浸透に適した水へ変換し、地下水涵養と地下環境中での水質浄化を目的として地下浸透を行い、さらに水道原水として利用するシステムを構築します。本研究では、特に地下浸透プロセスに着目し、受入可能な水質条件、地下での水質変換過程、水循環システムとしての持続可能性の検討などを行います。定量的微生物リスク評価と微量汚染物質の高感度モニタリングにより水質を管理する管理型地下浸透プロセスの技術的成立要件も提示します。
研究課題
地圏熱エネルギー利用を考慮した地下水管理手法の開発
研究代表者(所属)
小松 登志子 (埼玉大学大学院理工学研究科 教授)
概要
地球温暖化やヒートアイランド現象の影響による浅層地下水の温度上昇、さらにはヒートポンプシステムの実用化などに伴う地圏の熱環境撹乱は、地下水保全や地圏生態系に影響を与える恐れがあります。本研究では、地圏の熱環境の変化が物質循環や微生物生態系に及ぼす影響を考慮した環境アセスメントツールを構築するとともに、持続的で高度な地下水利用・管理手法を開発します。
研究課題
超節水精密農業技術の開発
研究代表者(所属)
澁澤 栄 (東京農工大学大学院農学研究科 教授)
概要
農業用水の利用効率を格段に高めるため、作物吸水により発生するわずかな根圏域水圧差を利用した作物吸水ニーズ適応型の超節水精密農業技術を開発します。具体的には、根域の精密水分観測技術、オンラインリアルタイム負圧差潅漑技術、使用水の再生・循環システム、作物吸水ニーズ評価方法を開発し、省エネルギー・超節水型の植物工場モデルの確立を目指します。本技術は乾燥地等での節水農業への応用が期待できます。
研究課題
地域水循環機構を踏まえた地下水持続利用システムの構築
研究代表者(所属)
嶋田 純 (熊本大学大学院自然科学研究科 教授)
概要
地球温暖化や人口増加により地球規模での水資源は不足しており、その安定供給のために持続可能な地下水利用システムを早急に構築する必要があります。本研究では、地下水管理の先進地域である熊本地域を研究フィールドとして、帯水層構造とその循環機構に基づく流域地下水の水量管理手法、硝酸性窒素汚染による水質負荷の軽減や原位置浄化技術、生物モニタリング手法など、水量・水質両面からの管理を踏まえた持続的地下水利用システムの開発を行います。
研究課題
モデルベースによる水循環系スマート水質モニタリング網構築技術の開発
研究代表者(所属)
三宅 亮 (広島大学ナノデバイス・バイオ融合科学研究所 教授)
概要
安全安心な水供給のためには、水循環系での水質を多点できめ細かくモニタ・管理する、IT利用スマートモニタリング網構築が望まれます。そのために、水質モニタ内部のマイクロ流体要素(μ-fluidics)レベルから、モニタを多点配置したシステムに至るまで、動作予測・評価が可能な、ミクロからマクロまで統合したHILS(Hardware In the Loop Simulator)によるモデルベース型の開発環境基盤を構築します。またこれを用いて各種のオンサイト設置型水質モニタを開発します。

平成21年度採択分

研究課題
水循環の基盤となる革新的水処理システムの創出
研究代表者(所属)
岡部 聡 (北海道大学大学院工学研究科 教授)
概要
安全安心な水供給の持続性を向上させるためには、多様な水資源の有効活用を前提とした水循環システムの構築が重要です。本研究では、膜分離技術を核とした革新的な上水、下・廃水処理システムの開発、および、微量汚染有害化学物質と病原微生物を対象とした水の安全性評価・管理手法の開発を行います。加えて、実証プラントを運転し、新規水循環システムとしての妥当性を総合的かつ多角的に検討し社会への適用を目指します。
研究課題
荒廃人工林の管理により流量増加と河川環境の改善を図る革新的な技術の開発
研究代表者(所属)
恩田 裕一 (筑波大学生命環境系 教授)
概要
今後、気候変動により激化する水問題を解決するため、本研究では、荒廃した人工林を管理することにより、渇水流量増加による水供給量の平準化と最大化を図るとともに水質の改善をもたらす革新的な水資源管理技術を開発します。具体的には、荒廃した人工林において強度な間伐を行い、流量増加や水質改善の状況について、包括的な調査を行います。それらのデータをもとに、人工林の管理が流域からの水供給量に及ぼす影響を定量化するための水資源管理モデルを構築します。
研究課題
世界の持続可能な水利用の長期ビジョン作成
研究代表者(所属)
鼎 信次郎 (東京工業大学大学院情報理工学研究科 准教授)
概要
CO2削減目標の設定の際には、気候変化についての長期見通しとCritical Level(許容上限)が決定されました。同様に、地球規模での水危機の緩和と回避のためには、さまざまな将来シナリオ下での水需給の長期見通しを作成し、持続的な水利用のCritical Levelを決定し、危機回避のビジョンを作成する必要があります。本研究では、最先端の世界水資源モデルを活用し、この一連の情報創出を成し遂げ、水の安全保障に貢献することを目指します。
研究課題
21世紀型都市水循環系の構築のための水再生技術の開発と評価
研究代表者(所属)
田中 宏明 (京都大学大学院工学研究科附属流域圏総合環境質研究センター 教授)
概要
21世紀型の都市水循環利用システムの構築を目指し、水の輸送とカスケード利用を考慮したエネルギー消費量の改善と、河川水、湖沼水、下水、下水処理水に含まれるリスク要因を制御する新しい水処理技術を開発し、利用用途と安全性、エネルギー、環境負荷の特徴を明らかにします。また、新しい都市水循環利用システムと従来型の都市水利用システムを安全性、エネルギー、環境面で比較、評価し、地域に適したカスタムメイドなシステムを提案します。
研究課題
地域水資源利用システムを構築するためのIntegrated Intelligent Satellite System(IISS)の適用
研究代表者(所属)
中尾 真一 (工学院大学工学部 教授)
概要
本研究では、複数の膜技術を統合した革新的な水処理システムを開発して地域内に分散配置し、これに成熟度の高い自然エネルギー活用技術や個々の施設を有機的につなぐ情報管理技術を融合し、まったく新しい独創的な地域水資源利用システム「Integrated Intelligent Satellite System(IISS)」の構築を目指します。中核となる膜技術の研究では、膜表面の水構造という分子レベルのミクロな視点から、新たな低ファウリングNF/RO膜を開発します。また、ファウリングを抑制するMBRシステムを開発します。
研究課題
気候変動を考慮した農業地域の面的水管理・カスケード型資源循環システムの構築
研究代表者(所属)
藤原 拓 (高知大学教育研究部 教授)
概要
水および食料の安全保障の観点から、食料生産の場である農業地域の持続可能な水管理システムの構築が不可欠です。本研究では、農業地域の分散した汚濁物質排出源に対応した「面的」な水再生技術、ならびに面的に存在するバイオマス資源の質と分布状況に応じた「カスケード型資源循環システム」から構成される新規水管理システムの構築を目指します。また、このシステムが気候変動への適応策・緩和策と両立できるための適用条件を明らかにします。
研究課題
気候変動に適応した調和型都市圏水利用システムの開発
研究代表者(所属)
古米 弘明 (東京大学大学院工学系研究科 教授)
概要
水資源の局在性に対応するため、ユビキタス型水資源となりうる雨水、地下水、再生水の利用を見直し、新たな水質リスクや水質安定性の評価手法、環境コスト評価や利用者選好を考慮した水利用デザイン手法を開発します。さらに、気候変動を想定した都市圏の水資源の利用戦略を創出することを目指し、流域圏の気象・水文変動や水量・水質変動の予測を行い、需要と供給のバランスのとれた調和型の都市圏水利用システムを提案します。
(*研究者の所属は2011年4月現在のものです)