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戦略的創造推進事業CREST研究領域 > CO抑制

研究領域

戦略目標

研究領域名

二酸化炭素排出抑制に資する革新的技術の創出
研究領域HP

研究総括

安井 至(独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) 理事長/国際連合大学 名誉副学長)

概要

 本研究領域は、我が国がハイリゲンダムサミットにおいて提案した2050年までに世界の温室効果ガスの排出を半減させるという目標に向け、主に二酸化炭素の排出削減について、既存の抑制技術の2倍程度の効率を有する革新的技術の開発を目標としています。例えば、再生可能エネルギーにおける画期的な性能向上を実現しうる技術、さらには、大気中の二酸化炭素の革新的な処理を可能とする技術、等の直接的、間接的二酸化炭素排出抑制技術を、新概念、新原理に立脚して創出することで低炭素社会の実現を目指す研究を対象とするものです。
 具体的には、原子力を除く非化石資源の新エネルギー技術全般を対象とするものであり、既存製品の効率を抜本的に向上できるエネルギー生産・貯蔵技術や革新的低コスト・低エネルギー化を実現しうる技術、例えば、新概念の太陽電池、二酸化炭素処理技術、海洋エネルギーやバイオエネルギー等を利用した技術などを対象とします。また、これらの技術に加え、化石資源エネルギーの利用を前提としつつも、二酸化炭素放出量を激減しうる対策技術が含まれます。このように、主にエネルギー供給側の技術全般を対象としていますが、省エネルギーを意図した需要側技術も、ある種のエネルギー創生技術であるという立場から、革新的であり、かつ社会へのインパクトの高いものであれば対象とします。
 現在の産業構造やエネルギーインフラ構造の枠組みにイノベーションをもたらす目的基礎研究の提案を期待しますが、その提案にあたっては、その技術が2020〜30年程度までに実用化された際、どの程度の排出抑制が期待できるか、何億トンの削減が可能といった定量的なシナリオが描けることを要件とします。

平成22年度採択分

研究課題
固体界面を制御した全固体二次電池の創製
研究代表者(所属)
辰巳砂 昌弘 (大阪府立大学大学院工学研究科物質・化学系専攻 教授)
概要
低炭素社会にむけて、高性能で低コストの革新的畜電池の開発が求められています。本研究では、究極の電池形態である全固体電池の実現を目的として、固体電解質として現在最も有望なガラス系硫化物材料を用いて、高出力と高エネルギー密度を兼ね備えた全固体リチウム二次電池の開発を行います。この革新的電池実現のために、電極/電解質界面の構造と反応を解明し、良好な電極/電解質固体界面を創るプロセスを開発します。
研究課題
高選択的触媒反応によるカーボンニュートラルなエネルギー変換サイクルの開発
研究代表者(所属)
山内 美穂 (北海道大学触媒化学研究センター 准教授)
概要
本研究では、アルコール、アンモニアを媒体として大気中の二酸化炭素濃度上昇のないカーボンニュートラルなエネルギー変換システムを提案し、それを実現するための新触媒の開発を行います。提案サイクルにおいて使用する燃料は液体であるため輸送が容易であり、かつ、アルカリ形燃料電池の適用により、サイクル中の貴金属使用量の低減が可能となります。さらに廃棄物の再生には、廃熱あるいは光エネルギーにより製造される水素を利用するため、環境負荷の少ないシステムとなります。
研究課題
革新的全固体型アルカリ燃料電池開発のための高性能OH-イオン伝導膜の創生と燃料電池システム設計基盤の構築
研究代表者(所属)
山口 猛央 (東京工業大学資源化学研究所 教授)
概要
本研究では、全固体型アルカリ燃料電池の開発基盤の構築を行います。全固体型アルカリ燃料電池はほとんどの金属触媒を使える反面、実用的な電解質膜が存在しません。本研究では、従来のイオン伝導機構から考え直し、新しい高耐性OH-イオン伝導膜を開発します。白金触媒に縛られない自由な金属触媒による低コスト・高変換効率・多様な燃料への適用が可能な革新的全固体型アルカリ燃料電池の開発を世界的に加速させる基盤構築を目標とします。
研究課題
超低損失パワーデバイス実現のための基盤構築
研究代表者(所属)
山崎 聡 (産業技術総合研究所エネルギー技術研究部門 主幹研究員)
概要
本研究では、二酸化炭素排出抑制に大きな効果を持つ新概念の省エネルギー超低損失パワーデバイス実現のための基盤構築を行います。その候補として、特異な物性を持つダイヤモンド半導体を取り上げます。超低損失パワーデバイス実現に必要なダイヤモンド特有の物性の物理的理解、その物性を利用した新しいデバイス物理の構築、材料プロセス・デバイス作製プロセスの問題点の抽出とその解決策の検討を総合的に行い、超低損失パワーデバイスを提案・試作し、実用化への道筋をつけます。

平成21年度採択分

研究課題
CO2固定の新規促進機構を活用したバイオマテリアルの増産技術開発
研究代表者(所属)
小川 健一 (岡山県農林水産総合センター生物科学研究所 植物レドックス制御研究グループ グループ長 )
概要
本研究では、CO2固定量や同化産物の転流量などを飛躍的に向上させることで、カーボンニュートラルなバイオマテリアル(ダイズとユーカリを中心に)の飛躍的な増産技術を開発し、化石原料由来のCO2排出を大幅に抑制する技術の開発を目指します。我々の技術は日本国CO2総排出量の約5%(世界の主要生産地に本技術を適用した場合)に相当するCO2排出を抑制できる水準ですが、本研究課題では、さらに10%以上の抑制技術を狙います。
研究課題
海洋性藻類からのバイオエタノール生産技術の開発
研究代表者(所属)
近藤 昭彦 (神戸大学大学院工学研究科 教授 )
概要
カーボンニュートラルな再生可能資源で、耕作地や水資源の限界を克服できる海洋バイオマスからのバイオ燃料生産を目指します。塩水環境で生育でき、増殖性の高いスピルリナ微細藻類などの光合成機能と代謝能力を強化するとともに、海水での高密度大量培養システムを確立することにより、デンプン生産性を2倍以上に向上させ、コア技術として確立した細胞表層工学を用いて藻類デンプンからの高効率なエタノール生産プロセスを開発します。
研究課題
海洋微細藻類の高層化培養によるバイオディーゼル生産
研究代表者(所属)
田中 剛 (東京農工大学大学院工学研究院 准教授 )
概要
海洋微細藻類カルチャーコレクションより選抜された海洋珪藻ナビクラ属をバイオマス資源として活用し、CO2排出削減可能で、食料と競合しない新規バイオディーゼル生産技術の確立を図ります。生産には高層化可能な培養システムを利用し、地域のエネルギー供給やバイオマス原料の流通、原料コストに依存しない、均質かつ安定供給可能なバイオディーゼル生産システムの構築を目指します。
研究課題
異種接合GaN 横型トランジスタのインバータ展開
研究代表者(所属)
橋詰 保 (北海道大学量子集積エレクトロニクス研究センター 教授 )
概要
省エネルギーの核となる「窒化ガリウム(GaN)インバータ」の基盤技術を確立します。そのため、結晶欠陥起因の電子準位とトランジスタ動作信頼性との相関を明らかにし、異種(ヘテロ)接合制御と新チャネル構造により、シリコン素子とは異なる新しい横型トランジスタを開発します。さらに、インバータの設計/シミュレーションと実験的評価によりGaNインバータとその集積化の切り口を探求します。
研究課題
プロトン型大容量電気化学キャパシタの研究
研究代表者(所属)
宮山 勝 (東京大学先端科学技術研究センター 教授 )
概要
水溶液を電解液として用いながらリチウムイオン二次電池に匹敵する性能を持つ、プロトン型電気化学キャパシタの研究開発を行います。プロトンの表面吸着・反応を有効に利用できる単原子層シートを活物質として用いた電極を開発することにより、安全性の高い新たな機構の大容量蓄電デバイスを構築し、CO2排出抑制のための基盤技術と基礎科学を創出します。

平成20年度採択分  中間評価

研究課題
低炭素社会のためのs−ブロック金属電池
研究代表者(所属)
内本 喜晴 (京都大学大学院人間・環境学研究科 教授 )
概要
風力発電・太陽電池など自然エネルギーの安定供給をはかるために、ポストリチウムイオン電池を指向した長寿命かつエネルギー密度の高い新しい電池を創出します。特にs−ブロック金属を負極とした電池を構築します。電極材料のナノサイズ化を行い、これらデバイスの中核をなす“イオン”と“電子”の反応場であるヘテロ界面場をナノレベルで制御し、高速にs−ブロック金属イオン移動反応が可能な電極/電解質ヘテロ接合を構築します。
研究課題
高効率熱電変換材料・システムの開発
研究代表者(所属)
河本 邦仁 (名古屋大学大学院工学研究科 教授 )
概要
未利用エネルギーである廃熱を直接電気に変換することによりエネルギー利用効率を飛躍的に高め、化石燃料への依存度を低減することによって二酸化炭素の排出削減に貢献するために無害・無毒・資源豊富で安価な高効率熱電変換材料の開発を行い、これをデバイス化・システム化して廃熱回収・電力変換へ応用する道筋をつけます。
研究課題
熱帯泥炭の保全と造林による木質バイオマス生産
研究代表者(所属)
小島 克己 (東京大学アジア生物資源環境研究センター 教授 )
概要
不適切な開発によって二酸化炭素放出源となっている熱帯泥炭土壌について、湛水化による泥炭の保全と湛水耐性種の造林によって、再び吸収源に戻す現地実証試験を行います。さらに、生産された木質バイオマスのエネルギー用資源としての適合性、ほかの資源用としての応用の可能性などを検討します。最終目標は、泥炭保全や造林からバイオマスの最適利用までのトータルシステムを提示し、排出削減ポテンシャルを確認するとともに、その実行可能性を明らかにすることにあります。
研究課題
触媒技術を活用する木質系バイオマス間接液化
研究代表者(所属)
冨重 圭一 (東北大学大学院工学研究科 教授 )
概要
バイオマスを環境に優しい液体燃料などへ変換するプロセスは、バイオマスの付加価値向上を兼ね備えた再生可能資源の高度利用技術です。バイオマスの合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)への変換効率を劇的に向上する触媒と、通常多段階で製造するガソリン基材を合成ガスから一段で与える触媒を開発することで、コンパクトで高収率な革新的バイオマス変換プロセスの構築を目指します。
研究課題
有機薄膜太陽電池の高効率化に関する研究
研究代表者(所属)
吉川 暹 (京都大学エネルギー理工学研究所 特任教授 )
概要
二酸化炭素排出削減に直結する軽量・安価なプラスチック太陽電池を開発します。そのため、セルの構成要素であるフラーレン誘導体、導電性高分子、色素超分子を新たに調製し、吸収波長領域を広げたタンデムセルを開発することにより、10%の効率を実現すると共に、分子構造と膜構造に関する光電変換の学理を究明します。
研究課題
オイル産生緑藻類Botryococcus(ボトリオコッカス)高アルカリ株の高度利用技術
研究代表者(所属)
渡邉 信 (筑波大学 生命環境系 教授 )
概要
光合成により、大気中のCO2を吸収し、利用価値の高い軽質油とほぼ同じオイル成分を純度高く、大量に産生する緑藻Botryococcus braunii(ボトリオコッカス)の高アルカリ性環境下生育株(当研究グループ発見株)を研究開発対象とし、そのオイル生産効率を一桁向上させることを目標とします。基礎、応用、工業化の各研究グループに培養試料を提供する培養センター並びに培養株の特性や新たな知見を統合する情報センターを構築して、オイル生産の最適培養条件の把握、高度な品種改良の実現、オイル生成物の効率的抽出法の開発と高度利用法の発見、屋外デモプラントの製作と実証データ取得を行い、オイル生産効率の一桁向上を実現します。また、並行して経済性を加味した大規模プラント設計を行い、将来の大規模プラント製作への道筋を作ります。
(*研究者の所属は2011年4月現在のものです)