報告書(別紙1) > 3.研究開発課題の個別評価

独創的シーズ展開事業 独創モデル化
平成16年度採択課題 事後評価報告書

平成17年10月

独立行政法人科学技術振興機構
科学技術振興審議会技術移転部会
独創モデル化評価委員会


(別紙1)
3. 研究開発課題の個別評価
 11 大腸及び肝臓癌の診断・治療用抗体の開発

企業名 :株式会社 サイメディア
研究者(研究機関名) :秋山 徹(東京大学 分子細胞生物学研究所 分子情報研究分野 教授)

1) モデル化の概要および成果
 独創モデル化開始以前に大腸癌及び肝癌の発症の鍵をにぎるWntシグナル伝達経路の標的遺伝子を網羅的に検索し、癌細胞で発現の亢進している新規標的遺伝子としてBAMBIを見出してきた。本モデル化では、この標的遺伝子産物に対する抗体を作製して、治療用及び診断用に適用するためのデータ取得を目指した。本モデル化においてマウス及びラットのモノクローナル抗体作製を行い、BAMBI配列特異的抗体を計23種類取得した。その内2種類については、BAMBI発現癌細胞に対して結合性を示し、ヒト臨床標本において癌組織特異的染色性を示した。これらの結果を通して次の成果を得るに至った。1 本モデル化において用いたモノクローナル抗体作製法により大腸癌細胞に結合し得る抗体が取得できること、2 本モデル化において確立した免疫組織化学的染色法は癌診断を可能にすること、3 本モデル化において作製された放射能標識抗体は癌特異的放射線治療に利用できる可能性があることを示した。
2) 事後評価
1 モデル化目標の達成度
目標を上回る数の標的遺伝子産物に特異的な抗体を取得し、これら抗体を用いた免疫組織化学的染色における検出方法と検出感度を確立したことより診断薬としての性能の確認は達成した。標的遺伝子産物に対する抗体の癌抑制効果の検討は途中段階だが、概ねモデル化目標は達成された。
2 知的財産権等の創出
現在まで創出なし。
3 企業化開発の可能性
比較的早期に高精度癌診断キットの製品化が見込まれる。
4 新産業、新事業創出の期待度
期間を要すると思われるが、標的遺伝子産物をターゲットとする癌診断・治療法の新規な事業展開が期待される。
3) 評価のまとめ
 本モデル化により、癌特異的放射線治療の可能性を確認できた点は評価できる。今後は、当初のモデル化目標であった胆癌マウスに標的遺伝子に対する抗体を投与し、癌が縮退するかどうかの検討まで進める必要がある。この癌抑制効果の確認の結果が良好であれば、治療薬の作製につながり、今後の企業化の可能性も期待できる。

一覧に戻る 次へ

目次に戻る

This page updated on October 25, 2005
Copyright©2005 Japan Science and Technology Agency.
www-admin@tokyo.jst.go.jp