出展者名

生物系特定産業技術研究支援センター

BRAIN(Bio-oriented Technology Research Advancement Institution)

プログラム概要

2050年には世界の人口が増え、今の1.7倍の食べ物が必要になると予想されています。でも、効率だけを重視した農業では、地球の自然が壊れてしまうかもしれません。これからは、環境への負担を減らしつつ増産し、またフードロスもなくす工夫が大切です。本企画では、レーザーで害虫を退治して農薬を減らす方法や、使われなかった野菜を凍らせて粉にし、おいしくムダなく使うアイデアを紹介します。未来の食と地球を守るために、私たちと一緒に考えてみませんか?

By 2050, the world's population is expected to increase, requiring 1.7 times more food than we currently produce. However, agriculture that focuses solely on efficiency might damage the Earth's natural environment. Moving forward, it is crucial to find ways to increase production while reducing environmental impact and eliminating food waste. This project introduces methods such as using lasers to control pests and reduce pesticide use, and ideas for freezing unused vegetables and turning them into powder to be used deliciously and without waste. Let's think together about how to protect the future of food and our planet.

登壇者プロフィール

千葉 一裕 Chiba kazuhiro

国立大学法人東京農工大学 学長
ムーンショット目標5 プログラムディレクター
日本の国立大学としては初めて国連食糧農業機関 (FAO) と包括的連携協定の締結を主導するなど、国際的な研究活動、人材育成に積極的に取り組む。
スタートアップ企業 (JITSUBO (株)) を創業しており、研究成果の社会実装に関する豊富な知見・経験を有する。

日本 典秀 Hinomoto Norihide

国立大学法人京都大学大学院農学研究科 教授
ムーンショット目標5 プロジェクトマネージャー
農業害虫防除研究の第一人者。特に天敵を用いた生物的防除に詳しい。DNAから景観レベルまで多方面にわたった研究を行っている。2019年日本応用動物昆虫学会学会賞受賞、2023年〜2024年度日本応用動物昆虫学会会長。

古川 英光 Furukawa Hidemitsu

国立大学法人山形大学大学院理工学研究科 教授
ムーンショット目標5 プロジェクトマネージャー
ソフトマター工学と3D/4Dプリンティングの先駆的研究者。食品・医療・ロボティクスに応用可能なやわらかい材料の社会実装を推進中。科学技術・学術政策研究所 「ナイスステップな研究者」にも選出。

久保 知瑛里 Kubo Chieri

日本科学未来館 科学コミュニケーター
来館者との対話活動やイベントの企画・運営などを担当。より多くの人に科学を伝え、未来館を楽しんでもらえるためにできることを日々模索しています。植物と食べることが大好きで、以前はトマトの花について研究していました。これから先もみんなでおいしいご飯が食べられるように、地球に優しい農業について一緒に考えてみませんか?

【害虫被害ゼロ農業プロジェクトの対話者】

伏田 直弘(株式会社ふしちゃん 代表取締役社長)

農業経営学を学んだ後、大手外食チェーン、金融業界に転職後2015年に就農

世古 智一(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 植物防疫研究部門 上級研究員)

その場をすぐに去らずに餌探索を続ける「あきらめが悪い」天敵を研究

【フードロス削減 長期保存プロジェクトの対話者】

鈴木 健太郎(有限会社大山製菓 代表取締役社長)

山形の食文化を支えるとともに、それぞれの地域の良さを発信できる製品づくりを目指す

長澤 大輔(有限会社舟形マッシュルーム 代表取締役社長)

山形県舟形町でマッシュルームを生産加工販売、「天才きのこを、日本中の食卓へ」

タイムテーブル

ファシリテーション 久保 知瑛里(日本科学未来館 科学コミュニケーター)

ムーンショット目標5に関する背景と目指す姿
千葉 一裕(東京農工大学 学長)
害虫被害ゼロ農業プロジェクトの紹介
日本 典秀(京都大学大学院農学研究科 教授)
農業法人や研究現場(オンライン中継)との対話
伏田 直弘(株式会社ふしちゃん 代表取締役社長)、世古 智一(農業・食品産業技術総合研究機構 植物防疫研究部門 上級研究員)
フードロス削減 長期保存プロジェクトの紹介
古川 英光(山形大学大学院理工学研究科 教授)
製菓会社や農業法人(オンライン中継)との対話
鈴木 健太郎(有限会社大山製菓 代表取締役社長)、長澤 大輔(有限会社舟形マッシュルーム 代表取締役社長)
クロージング
森下 興(生物系特定産業技術研究支援センター 所長)

✏️出展レポート

話し合った未来像

2050年に90億人に達する世界人口を見据え、限りある地球資源のもとで「誰もが笑顔で“いただきます”と言える未来」をテーマに議論を実施した。
科学技術を活かしながら、環境と生産のバランスをとり、持続可能な食料供給システムを社会全体で構築していく未来像を共有した。

意見・論点

千葉一裕氏(東京農工大学)は、食料自給率と環境負荷の現状を指摘し、食料の廃棄削減と資源循環の必要性を強調した。
日本典秀氏(京都大学)、伏田直弘氏(株式会社ふしちゃん)、世古智一氏(農研機構)からは、「害虫被害ゼロ農業プロジェクト」として、農薬に頼らずAIとレーザー技術、天敵昆虫を組み合わせた新たな防除技術が、有機農業の現場での実用化への期待および持続的防除の未来の姿が議論された。
古川英光氏(山形大学)、鈴木健太郎氏(大山製菓)、長澤大輔氏(舟形マッシュルーム)からは、「フードロス削減プロジェクト」として、地域産業や食品加工との連携を進めることで、新しい価値の創出や地域活性化、日本国内やグローバルな社会実装につなげられることが示された。
森下興氏(生研支援センター所長)は、産学官の連携による社会実装の必要性を強調し、セッションを総括した。

キーワード

サステナブル農業、害虫被害ゼロ、食料安全保障、AI×農業、資源循環、フードロス削減、天敵昆虫、地域連携、脱農薬、未来の「いただきます」

来場者との対話から得られたこと・今後に生かせること

来場者からは、「食料問題を身近に感じた」、「技術が現実的に活用される道筋を知れた」との声が多く寄せられた。
特に、農業者と研究者、企業、一般市民が一緒に未来の食を考える場の価値が再認識された。
今後は研究成果を社会へ広く共有し、消費者の理解を深めながら、実践的なフィールドでの検証・普及を進めていく予定である。