学生アイデアファクトリー2025 自主研究発表大会Students' Idea Factory 2025 Final Presentation
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日本科学未来館 7階 イノベーションホール
出展者名
日本科学振興協会
Japanese Association for the Advancement of Science
プログラム概要
「学生アイデアファクトリー」は、自主研究に取り組む大学学部生・短大生・高専生の研究アイデアを発掘・支援するプロジェクトです。科学技術振興機構主催サイエンスアゴラ 2025 の舞台にて、全国から集まった28名の学生全員が自身の研究アイデアを披露します(ポスター発表)。さらに、選抜された 8名はステージでの口頭発表も行い、優秀なアイデアには最高 30 万円の研究奨励金が授与されます。プロジェクト内での交流を通じて共感を広げ、仲間や良きライバルとともに刺激的な時間を過ごした学生たちは、未来の科学人材としての飛躍が期待されます。「日本の科学を、もっと元気に。」へとつながる学生たちの姿をお見逃しなく!
The “Students’ Idea Factory” project discovers and supports original independent research ideas from university undergraduates, junior college students, and technical college students. At Science Agora 2025, hosted by the Japan Science and Technology Agency, all 28students from across the country will present their unique research ideas (poster presentations). Additionally, eight selected students will give oral presentations on stage. Outstanding ideas will receive awards and research grants of up to 300,000 yen. Through interactions within the project, students have broadened their perspectives, spent exciting time with their peers and friendly rivals, and are expected to make great progress as future scientific talent. Don’t miss the students’ efforts for “brighter sciences and a brighter Japan!”
登壇者プロフィール
全国から集まった学部生・高専生 28名
日本中から集まった自主研究に取り組む大学学部生・高専生 28名が登壇し、それぞれの自主研究アイデアを発表します。
学生アイデアファクトリー Alumni
過去の受賞者を中心に、先輩参加者からプログラム終了後の自主研究の進捗・成果などを共有してもらいます。
深澤 知憲
学生アイデアファクトリー 実行委員長
特定非営利活動法人 日本科学振興協会(JAAS)代表理事
(株式会社エマージングテクノロジーズ 代表取締役社長)
太田 航
学生アイデアファクトリー 実行委員長
特定非営利活動法人 日本科学振興協会(JAAS)フェロー
(横浜市立大学医学部 助教/YCU Frontier Research Fellow)
タイムテーブル
✏️出展レポート
話し合った未来像
本イベントでは、個人(自主研究を行っている学生)の興味やアイデアを基に、より良い社会や科学の進歩に貢献する様々な未来像が話し合われました。
- 社会課題の解決と世界観の打破:
多種多様な参加学生や専門家、一般聴衆との対話や議論を通じて、自身の研究アイデアや研究活動そのものに対する自信・経験をさらに深めていく作業が実践的に行われました。これはまさに「アイデアファクトリー」の描いているシナリオでもあり、社会課題の解決にもつながっていくことが期待されます。また、自らの世界観を破るきっかけとして、同分野のみならず異分野の背景をもつ他者とも積極的に交流し合うことの重要性も再確認されました。 - 医療とQOLの向上:
切除手術など患者に精神的・身体的負担をかける治療法とは一線を画した、がん治療法(免疫応答の光制御)の提供が目指されています。また、日常の音に不快感を覚えるミソフォニアの症状を持つ人々が暮らしやすい社会の実現や、固いものを食べられない高齢者向けの美味しい嚥下食など、「取り残さず、諦めない社会」の構築に関する対話がなされました。 - 持続可能性と環境:
コンポストを核とした地域循環モデルの構築や環境リテラシーの向上、野生動物の間接的利用による持続可能な社会設計、さらには外来植物の強い適応能力を宇宙での農業に役立てるアイデアなどが提案されました。 - 科学と平和:
海中に大量に存在する重水素を使った核融合炉を開発し50年後の世界の平和に寄与することや、環境行動と投資意識の変容を促しガンジス水系全体の保護・保全を目指すことなどが議論されました。 - 個人的な探求:
「意味付けの科学」というアプローチでストレスを外在化し、それによって誰もが泣いて笑える社会の実現を目指すアイデアが発表されました。そして、閉会式では内閣府統括官からの激励の言葉として「楽しくやっている人が世界を少しでも良くしていく」という姿勢の重要性が謳われました。
意見・論点
ファイナリストによるステージ上での口頭発表や、参加学生全員によるポスター発表での質疑応答では、アイデアの実現可能性、新規性、技術的な課題、そして倫理的な側面に関する活発な議論が展開されました。
- 技術的課題とモジュール化:
光制御による免疫応答の活性化について、皮膚の外から光を当てた際の光の到達深度が数ミリ程度であるため、より深部に届かせるために赤外線に反応する光スイッチタンパク質へのモジュール化や、内視鏡による内側からの照射が必要となるという論点が出ました。 - 新規性と先行研究との比較:
濃厚ポリマーブラシを用いた面ファスナーの研究では、類似した既存の製品(金属ナノワイヤーを使用)は脱着ができない点が課題であり、日常生活で取り外し可能な接着力を持つ有機物材料が求められている点が明確化されました。 - 研究目的の明確化:
ストレスの可視化(メンタルフグシステム)に関する研究では、可視化自体が目的ではなく、言語報告のような後付けの内省ではない、「リアルタイムでの意味付け」の生成を観察するためのツールであるという点が明確に説明されました。 - 社会実装の障壁:
インドのガンジス水系での環境意識変容を促すプロジェクト(参加型アクションリサーチ)において、インドでは知識やモノ(トイレの設置不足など)だけでは人々の意識や環境行動がなかなか促進されないという社会的な要因が論点として挙がりました。 - 倫理と実用性:
コンポスト由来の微生物電池については、発電量が少ない(鉛蓄電池の1/1000)という実用上の課題があるものの、それを教育コンテンツとして活用する可能性が示されました。また、研究の過程で科学と倫理、測って良いものと測ってはいけないものといった根本的な問題に直面したという指摘もありました。 - データと検証:
日米の個人主義・集団主義を絵本で比較する研究では、テキスト研究とイラスト研究で異なる結果が出たため、サンプル数の拡大と文脈を含めた再検証の必要性が論点となりました。
キーワード
- 科学技術・材料:
光感受性タンパク質、CAR-T細胞、濃厚ポリマーブラシ、昆虫細胞、ソフトマテリアル、MOF(金属有機構造体)、ペロブスカイト型太陽電池、核融合発電、キャビテーション、テラフォーミング - 生物・医学:
免疫応答、キラーT細胞、クラゲの睡眠、外来植物、微生物電池、ミジンコ、脳血流、リハビリトレーニング、ゲノム編集 - 社会・概念:
ミソフォニア、ストレス、意味付けの科学、メンタルフグシステム、参加型アクションリサーチ、生物指標、個人規範、教育コンテンツ
来場者との対話から得られたこと・今後に生かせること
参加学生は、審査委員や来場者、さらにはプログラムの卒業生(アルムナイ)との交流を通じて、具体的な研究推進のきっかけや今後の方向性に関する洞察を得ました。一連の活動を通じて研究の楽しさや難しさ、やりがいなどをリアルに体感し、自身の将来像などをより明確にできたという声も聞かれました。
- 専門家からの確証:
アクセラレーションプログラムを通じて、学生の研究アイデアがその分野に近い研究者や技術者との相談の機会を得ており、例えば、光スイッチタンパク質の第一人者に設計の妥当性を確認してもらうなど、研究設計への確信を得ることができました。 - 熱意と外部連携:
昨年の最優秀賞(JAAS賞)受賞者の体験談から、自身が好きな研究に熱中することで周囲に楽しさが伝わり、協力したいという人が現れること(例:ミジンコ養殖業者からの無償提供、NPOへの参加)が示され、情熱の大切さがメッセージとして強調されました。 - 具体的なデータと実証:
ガンジス水系の問題に取り組む学生は、まず子供たちが生物指標にどのようなリアクションを取るかを把握するため、日本の小学校などで研究活動を始めるという具体的なステップを計画しました。また、利き手ではない手での運動獲得に関する研究では、脳血流のデータ解析に引き続き取り組むことが示されました。 - 継続的なサポート:
学生自主研究推進機構(SINAPS:シナプス)や卒業生の有志団体(SparVeX:スパーベックス)といった協力団体により、学生に対する研究相談の機会や予算、人脈の提供(パイプつなぎ)といった継続的な支援を行うことが約束されました。 - 人との繋がりの重要性:
審査委員長の箕浦真生先生(立教大学 副総長)からの総評では、「研究者が探求し、物づくりをし、失敗から学び、フィードバックするというプロセスは人が行うべきことであり、この機会で得られた『人との繋がり』を大切にして、今後も研究を続けてほしい」というメッセージが送られました。