出展者名

CREST[生命力] 胡桃坂チーム

CREST [The Power of Life] Kurumizaka Team

プログラム概要

DNAは生命の設計図ですが、とても長いため「ヒストン」というタンパク質に巻きつき、「クロマチン」として細胞内に収められています。クロマチンはDNAを収納するだけでなく、必要なときに特定のDNA情報を使えるようにもしてくれます。私たち研究者は、細かい構造まで見える特別な顕微鏡で、クロマチンの折りたたみ構造や働きを調べ、クロマチンの「故障」によって起きる病気や創薬との関わりも研究しています。
このイベントでは、模型・VR・動画・顕微鏡を使って最先端の科学をわかりやすく紹介します。また、「クロマチンって何?」「どんな研究?」「研究者の生活って?」といった疑問を、研究者本人に直接聞くことができます!

DNA is the blueprint of life, but it is very long. To fit in our cells, it wraps around proteins called histones, forming a structure called chromatin.
Chromatin not only stores DNA neatly, but it also helps organize DNA and control which parts are used. As scientists, we study how chromatin is folded and how it works, using special microscopes that can see very tiny structures.We also study how chromatin problems can lead to disease, and how this knowledge could help us develop new drugs.At this event, we will make cutting-edge science accessible to everyone through 3D models, VR, animations, and microscopes. You can also ask scientists questions like “What is chromatin?” or “What’s it like to be a scientist?”

登壇者プロフィール

胡桃坂 仁志 KURUMIZAKA Hitoshi

東京大学 定量生命科学研究所 教授
埼玉大学大学院で博士号を取得。米国NIHで博士研究員を務め、理化学研究所、早稲田大学を経て、2018年より現職(2023年より副所長)。DNAがどのように働くかを「クロマチン構造」から解き明かす研究を行っています。音楽活動にも取り組み、歌で生命の不思議を発信中(https://bit.ly/3zq8wgA)

藤芳 暁 FUJIYOSHI Satoru

東京科学大学 理学院物理学系 助教
博士取得後、2003年春より神奈川アカデミーおよび神戸大学で博士研究員として研究を行う。2004年冬、東京工業大学(現:東京科学大学)理学部物理学科の助手に着任し、現在に至る。細胞核内にあるクロマチンの働きを明らかにするため、細胞核内を個々の分子ごとに可視化できる極低温の光電子相関顕微鏡を自作している。

滝沢 由政 TAKIZAWA Yoshimasa

東京大学 定量生命科学研究所 准教授
横浜市立大学大学院にて博士取得後、早稲田大学助教を経て、2009年米国Vanderbilt大学に博士研究員として留学する。留学中に、凍結したタンパク質やDNAなどを直接観察できるクライオ電子顕微鏡に魅了される。帰国後、沖縄科学技術大学院大学を経て、2018年より東京大学定量生命科学研究所の助教、2020年より現職

畠澤 卓 HATAZAWA Suguru

東京大学 定量生命科学研究所 特任助教
埼玉大学大学院修士課程を修了後、東京大学大学院博士課程に進学し、胡桃坂研究室にて研究を開始。最先端の技術を駆使したクロマチン研究に魅力を感じ、その奥深さに惹かれる。2022年に博士取得後は、クライオ電子顕微鏡で細胞の核内を直接観察する解析を中心に取り組んでいる。特任研究員を経て、2025年より現職。

タイムテーブル

【はじめに】登壇者による自己紹介、研究紹介、企画の趣旨説明
【クロマチンの研究紹介動画】最新の結果をわかりやすく解説付きでお届けします
【クロマチンいろいろ体験コーナー】
- クロマチンの3D分子模型展示:クロマチンをさわってみよう!
- VR体験:クロマチンを動かしてみよう!
- 顕微鏡を使った細胞の観察:核を見てみよう!
- 研究者との対話:なんでも質問してみよう!
【最後に】本日のまとめ

※各コーナーの滞在時間は自由です。
研究紹介は必要に応じて複数回行います。
本企画は、途中参加・途中退出可能です。お気軽にお立ち寄りください。※

✏️出展レポート

話し合った未来像

  • クロマチン研究が進むことで、病気や生活習慣病の根本的治療方法が確立されることが期待される。
  • 疾患細胞について、どのように異常クロマチンをターゲットするかが課題。活性を失ったCRISPR-Cas9システムとクロマチンの構造を変化させるタンパク質を組み合わせて、異常なクロマチン構造を修復するシステムが構築されることが期待される。
  • 研究者になるには、研究を楽しく続けることが一番。今は研究業界も人材不足なので、大学院を卒業した後は積極的に様々なPIとコンタクトを取ればポジションは見つかる。将来、若手研究者が活躍する機会は広がるはず。

意見・論点

  • 構造のスナップショットなどに強い印象を受けた参加者が多く、「メカニズムの時系列が構造だけで理解できたのがすごい!」という感想が寄せられた。
  • 研究紹介動画を見た後に分子模型を観察したことで、「より理解が深まりました」という意見もいただいた。
  • 「さまざまな国で研究ができるのは、研究者の醍醐味だと思った」という声もあった。
  • 音楽活動をしている教授の紹介では、「教授でミュージシャン?研究者は自由で楽しそう、飽きなさそう」といった反応も見られた。

キーワード

  • 野球ボール(核サイズのたとえ)、2mのゲノムDNA、山手線一周(長さのたとえ)、スカイツリー(高さの比喩)、米粒
  • クロマチン、ヌクレオソーム、DNA、細胞、細胞核、染色体
  • クライオ電子顕微鏡、光学顕微鏡
  • DNAの読み取り、DNAの修復
  • 研究者、顕微鏡作り

来場者との対話から得られたこと・今後に生かせること

  • 近い距離でのトークや対話を通じて、「研究者=硬い」というイメージを変えることができたのではないかと思う。
  • また、参加者に分子模型を手に取っていただけたことで、大人から子どもまで、その数や多様さに驚く場面が多く見られた。
  • 分子模型やVRを用いたことで、構造生物学をより身近に感じてもらえたと感じた。
  • 小学生の参加者はクイズをとても楽しんでおり、次回もぜひ続けたいと思った。
  • 今後は、参加者(特に子ども)が持ち帰ることのできるアイテム(例:トランプなど)も用意したいと考えている。持ち帰って保管してもらうことで、将来、クロマチン研究や私たちの研究室のことを思い出してもらえたら嬉しい。