出展者名

慶應義塾大学鏡像世界創発センター

Emerging Center for Mirror-Image World Synthesis, Keio University

プログラム概要

昨年末、38名の科学者が連名でサイエンス誌に「鏡像生命は人類の脅威になりうる」と意見論文を掲載しました。鏡像生命とは地球生命とは「鏡写し関係の分子」で作られている生命のことで、合成生物学の発展により今世紀中には誕生すると考えられています。創薬の可能性が広がる一方で地球生命の免疫機構には認識されないため、鏡像生命は人類を脅かすかもしれません。また「鏡像人間」は私たちと見た目や知能は変わらないのに味覚や嗅覚は異なると予想されています。鏡像生命の最前線を学び「鏡像生命がいる世界」を想像してみんなで話し合いましょう。「神の領域に足を踏み入れた科学」に対する付き合い方も考えられるようになるかもしれません。

Late last year, 38 scientists published ”Confronting risks of mirror life” in “Science”. In that they said mirror life could pose a threat to humanity. Mirror life is the life made up of molecules that mirror Earth life. It is believed that this will emerge within this century thanks to advances in synthetic biology. While expanding the possibilities for drug discovery, mirror life could pose a threat to humanity because it cannot be recognized by the immune systems of Earth life. Furthermore, "mirror humans" are predicted to have the same appearance and intelligence as humans, but different tastes and smells. Let's learn about the cutting edge of mirror life, imagine a world where mirror life exists, and discuss it together. This may help us think how we interact with science, which has entered the realm of the gods.

登壇者プロフィール

藤原慶

慶應義塾大学理工学部生命情報学科准教授。合成生物学/人工細胞工学の研究者。
『鏡の国の生き物をつくる SFで踏み出す鏡像生命学の世界』(日刊工業新聞社)監修・著、『人工細胞の創製とその応用』(シーエムシー出版)共著、ジェイミー・A・デイヴィス『合成生物学 人が多様な生物を生み出す未来』(ニュートン新書)監訳など。

大澤博隆

慶應義塾大学理工学部管理工学科准教授。慶應義塾大学サイエンスフィクション研究開発・実装センター所長。

ヒューマンエージェントインタラクション(HAI)、人工知能、SFプロトタイピングの研究に幅広く従事。『鏡の国の生き物をつくる SFで踏み出す鏡像生命学の世界』(日刊工業新聞社)、『AIを生んだ100のSF』(ハヤカワ新書)など著書・編書多数。

茜灯里

作家・科学ジャーナリスト。

青山学院大学客員准教授。地球科学で博士号を取得、獣医師でもある。著書に第24回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作『馬疫』(光文社)、『地球にじいろ図鑑』(化学同人)、『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(集英社インターナショナル)、『AIとSF2』(早川書房、共著)、『鏡の国の生き物をつくる SFで踏み出す鏡像生命学の世界』(日刊工業新聞社、共著)など。

タイムテーブル

司会 茜灯里(科学ジャーナリスト・青山学院大学客員准教授)

オープニング
鏡像生命って何?<慶應義塾大学准教授 藤原慶>
今、鏡像生命で問題視されていること<慶應義塾大学准教授 大澤博隆>
参加者からの質問タイム
鏡像生命のいる世界を想像してみよう<参加者のワーク>
結果発表と参加者・演者全員での対話<ワークに対するフィードバック>
クロージング

✏️出展レポート

話し合った未来像

鏡像生命は近い将来、必ず合成される。普通の地球生命と鏡像生命の違いは何か。普通の地球生命と鏡像生命が出会うと何が起こるのか。鏡像生命が現れることの利点と脅威点は何か。「地球・現代」「地球・50年後」「地球・300年後」「他の星・現代」に鏡像生命が現れたとして、その背景(どうやって作られたか)を考えつつ、現れたことで世界はどう変わるか、私たちと出会ったら何が起こるのか等に配慮しながら参加者がストーリーを作って発表、研究者からコメントをフィードバックする。

意見・論点

鏡像生命を人工的に作る場合、酵素はどうするのか。何年後くらいにできそうか。それまでに研究費はどれくらいかかりそうか。科学的、倫理的な限界点はどこにあるのか。

キーワード

鏡像生命、合成生物学、鏡写しの関係、鏡像バクテリア、鏡像人類、新しい科学とSF小説の関係、鏡像生命には私たち地球生命の免疫は働かない

来場者との対話から得られたこと・今後に生かせること

アメリカの科学者の「鏡像生命を作るべきではない」という声明を紹介しつつ、鏡像生命が恐れられているところ、利点となるところなどをレクチャーしたところ、来場者からは合成生物学者が鏡像生命を作ることへの反発・嫌悪は見られなかった。「鏡像生命について一般にもっと知られれば世間の理解も得られて研究スピードも加速する」という意見があり、研究者側はアウトリーチの大切さを再確認できた。