出展者名

国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所

National Institute of Infectious Diseases, Japan Institute for Health Security

プログラム概要

謎ばかりのノロウイルスの世界にご案内。シャーレで育てたヒトの腸のオルガノイド(ミニ実験パーツ)とお待ちしています!
ノロウイルスは、酸に強い、アルコールにも乾燥にも強い、などイヤな性質をいくつも持っています。ですが、研究のためにふやそうとすると、意外とふえないクセモノでもあります。キッチンや海の中でふえているイメージがあるかもしれませんが、ふえる場所はヒトの体の中なんです。
そこで登場したオルガノイド。その活躍と、研究の悪戦苦闘の歴史をみると、ノロウイルスが謎のイヤな存在から、イヤだから何とかしてやろうと思える相手に変わるかもしれません。
実物を見て、研究者と話して、一緒にへらし方を探りましょう。

Step into the mysterious world of norovirus. We’ll be waiting for you—with human intestinal organoids (mini experimental parts) in a petri dish!
Norovirus comes with a bunch of annoying traits: it resists acid, alcohol, and even drying out. But when researchers try to grow it, it turns out to be surprisingly stubborn. You might picture it multiplying in kitchens or the ocean—but no, it actually does that inside the human body.
That’s where organoids come in. Once you see how much they’ve helped, and how long researchers have wrestled with norovirus, you might start to think: “This virus is so unpleasant… but maybe we can do something about it.”
Take a look, talk with researchers, and join us in figuring out how to reduce norovirus.

✏️出展レポート

話し合った未来像

身近な感染症の一つであるノロウイルスを題材に、まだ研究が進み始まったばかりであること、そして現在どの程度まで分かってきているのかを紹介しながら、科学や医学だけでは対応しきれない感染症との付き合い方について、「感染症の対策で誰に(何を)期待するか」という問いを軸に、情報提供の前後で話し合うという対話型・体験型の出展を行った。
情報提供では、クイズと、研究者による解説付きでの実物展示を提供した。
来場者には、情報提供の前に結果が見えない形で「誰に期待するか」の投票をしてもらい、情報提供の後には(最初の投票結果を参照しながら)付箋への記入によって「誰に何を期待するか」の意見を求めた。
その過程で、「前後で意見はどう変わったか」「個人の取組と社会全体の対策とのギャップをどう埋めるか」といった対話を展開することができた。

意見・論点

1回目の投票(総数739票)では、最も多くの票を集めたのは「研究をする人」(335票)であり、次いで「ぼくたち わたしたち」(221票)、「お医者さん 看護師さん」(98票)、「役所の人 政治をする人」(74票)、「その他」(11票)の順であった。
2回目の付箋による意見(合計165枚)では、「研究をする人」(61枚)、「ぼくたち わたしたち」(53枚)、が依然として多かったものの、次いで「役所の人 政治をする人」(27枚)、「お医者さん 看護師さん」(13枚)、「その他」(11枚)と順位の変動が見られ、1回目と2回目で意見が変化した来場者も多く見られた。
研究の現状が共有されたことで改めて研究の進展への期待を強めた来場者が多かった一方で、研究費の配分や学校教育について行政的の取り組みへの期待を示す方、市民自身による予防行動や自衛の重要性に言及する方も多く見られた。また、特定の主体に限定せず、多様なステークホルダーが協働して合意形成を進める仕組みの必要性や、科学的知見が社会に還元されることの重要性を指摘する意見も寄せられた。

キーワード

医療従事者の活躍に期待する方のキーワード
「感謝」「治療」「努力」「信頼」など、信頼と応援、過重労働への共感、持続的な医療について

研究者の活躍に期待する方のキーワード
「研究」「薬」「ワクチン」「根絶」「応援」など、研究の段階を踏まえての期待と応援

行政・政治の活躍に期待する方のキーワード
「予算」「支援」「制度」「教育」「責任」など、対策の中の政治と行政の責任、及び、科学研究への政策支援の重要性

市民の活躍に期待する方のキーワード
「手洗い」「知識」「予防」「自己管理」など、当事者意識、行動と知識の重要性、社会的なリソースの配分

その他の方のキーワード
「ネットワーク」「社会実装」「ステークホルダー」など、科学と社会・制度や個人の連携、及びそれらを媒介する役割

来場者との対話から得られたこと・今後に生かせること

感染症対策を「誰かに任せるもの」ではなく、多様な主体が関わり合う課題として捉える視点が共有され、研究・制度・市民のつながりを意識する意見を多く収集できた。こうした対話を通じて得られた声は、研究機関と社会の関わり方を考えるうえでの貴重な示唆となり、リスクコミュニケーションや研究支援の改善に資する知見として活用できる。
また、体験型・対話型の設計が、研究者と来場者が互いの立場を超えて考えを交換する場として機能していたように見受けられた。対話と情報提供とを往復させる構成により、研究テーマへの関心や知識が日常や社会的文脈と結びつき、それによって具体的な対話が発生する場となっていたことが見て取れた。体験型・対話型の展示が、立場を超えた意見・情報の交換を促し、次の発信や協働のあり方を探る「対話の実験場」として機能し、今後の協働的な実践や研究の展開に活用可能であることが示された。