出展者名

ライフサイエンス教育研究会

Life Science Education Circle

プログラム概要

本企画では、ラベンダーをはじめ5〜10種類の天然エッセンシャルオイルと、それらを模倣した合成香料をクイズ形式で嗅ぎ比べていただきます。来場者は「どちらが天然の香料か」を当てる体験を通じて、合成香料と天然香料の違いや共通点に気づき、合成香料に対する誤解や不安を解消します。五感を使った参加型の対話を重視し、子どもから大人まで幅広い層に香りの魅力と科学の奥深さを楽しんでいただくことを目指します。

In this program, visitors will compare six natural essential oils—including lavender—with their synthetic counterparts, presented in a quiz-style format.
Through the experience of identifying “which scent is natural,” participants will discover both the differences and similarities between synthetic and natural fragrances. This hands-on activity is designed to dispel common misunderstandings or anxieties about synthetic fragrances.
By emphasizing interactive, sensory-based dialogue, the event aims to engage a broad audience—from children to adults—in appreciating the allure of scents and the fascinating depth of science behind them.

✏️出展レポート

話し合った未来像

今回の展示・体験を通して共有された未来像は、「科学と自然の対立ではなく、共生の未来」である。来場者との対話の中で、合成香料が「自然をまねてつくられた人工物」ではなく、「自然を理解し、持続可能な社会をつくるための手段」であるという認識が広がった。多くの人が「自然=善、人工=悪」という単純な価値観から一歩踏み出し、「科学は自然を壊すものではなく、自然から学び、それを再現し、支えるための知恵である」という考え方に共感していた。
特に印象的だったのは、香りをテーマにすることで、科学の抽象的な話題を誰にでも分かる形で実感できた点である。理科離れが進む中で、五感を使って「体験する科学」は、今後の科学教育・科学コミュニケーションの重要な方向性になると確信された。
さらに、「合成香料の利用が自然保護に貢献している」という点も大きな発見として共有された。限りある資源を無闇に採取するのではなく、科学的に再現することで自然環境を守る。これは、単なる香料技術にとどまらず、科学がもつ倫理的・社会的役割を象徴している。未来に向けては、こうした“体験から学ぶ科学”を広げ、科学を「生活と自然をつなぐもの」として発信し続けることが目標として確認された。

意見・論点

体験を通じて寄せられた意見や議論には、社会に根付く価値観の変化がよく表れていた。

  • 「人工=にせもの」という固定観念が予想以上に根強いことが分かった。多くの来場者が“人工”という言葉に否定的な印象を抱いていた。
  • しかし、説明を聞き、香りを実際に嗅ぎ比べるうちに「同じ分子なら同じ香り」「人工は自然をまねた科学の成果」という理解に変わる場面が多く見られた。
  • 特に、「合成香料を使うことで自然を守る」という話題では、感心や驚きの声が上がった。「においで環境保全の話ができるとは思わなかった」という感想もあった。
  • 分子模型と香りを対応させた展示では、「形が少し違うだけで香りが変わる」「目に見えない世界がこんなに具体的に感じられるんだ」といったコメントが多く、構造と性質の関係を直感的に理解できたとの声が寄せられた。
  • 一方で、「香りが強い製品による不快感」や「香害」に関する意見もあり、香りの快・不快の個人差や配慮の重要性についての議論も生まれた。

このように、単なる科学知識の伝達にとどまらず、「香りと人間の関係」「科学と社会の関係」を考える場になったことが特徴的であった。

キーワード

「自然をまねる科学」、「人工はにせものじゃない」、「同じ分子なら同じ香り」、「自然を守るための合成」、「科学は自然とともにある」、「香りで学ぶ化学」、「五感で感じる科学」、「香りの中にある生きものの知恵」、「嗅覚で学ぶSDGs」、「身近な科学の入り口」

来場者との対話から得られたこと・今後に生かせること

(1)香りは科学コミュニケーションの“入口”である
嗅覚という感覚的なテーマは、世代・専門性を問わず人々を引き込む力をもつ。来場者の多くが「香りなら興味をもてる」「難しい話が自然に入ってきた」と話しており、香りを媒介にした科学体験は、理科教育だけでなく、生涯学習・市民科学にも応用できると感じられた。

(2)誤解の修正と科学的思考の促進
「天然=安全」「人工=危険」という社会的誤解を、体験を通して科学的に考え直すきっかけになった。香りという具体的な事例を用いることで、抽象的な「科学リテラシー教育」を実感的に行うことができた。

(3)教育・社会への展開
学校や地域での科学教室、ワークショップなどで「香りの科学」を取り入れることにより、化学・生物・環境といった教科横断的な学びができる。特に中高生にとって、化学構造式や代謝経路が“香り”として理解できることは、教科内容の興味喚起にもつながる。また、一般市民向けの講座では、「科学を使って自然と共生する」という社会的テーマの理解を促す素材としても効果的である。

(4)科学の倫理と環境意識
合成香料は“自然をまもる技術”として理解されるべきである。人間が自然を模倣しながら、新たな環境との共存関係を築く過程そのものが、現代の科学と社会のあり方を象徴している。科学は自然を敵視するのではなく、自然の中に人類がどう位置づくかを問い続ける営みであるという視点を、今後の展示・発信活動でも一貫して伝えていきたい。