都会のけもの道Wildlife in the City
・ 10:00〜17:00
テレコムセンタービル 3階
出展者名
街の自然観察隊 by CoSTEP 19期修了生有志
City Nature Observer by interested graduates of CoSTEP 19th education course
プログラム概要
あなたの街で、野生動物を見かけたことはありませんか?ネコかと思ったらハクビシンやアライグマだった、という経験はありませんか?近年、野生動物が都市部に現れる機会が増えています。本企画では、動物の毛皮や骨、生物マップを展示しながら、獣害問題の現状と背景を紹介します。身近な存在となった野生動物と、私たちは今後どう向き合うべきか。展示を通じて一緒に考えてみませんか?
Have you ever seen wild animals in your town? Have you ever thought you saw a cat, only to realize it was a raccoon or a masked palm civet? In recent years, wild animals have been appearing in urban areas more frequently. We introduce the current situation and background of wildlife damage issues through displays of animal fur, bones, and sighting map. How should we deal with wildlife? Let's think about it together at our booth.
✏️出展レポート
話し合った未来像
主として、今後の「獣たちとの距離感」について話し合った。アライグマ・ハクビシンの目撃情報やクマ被害の話をしてくださる方が多くいた。「東京に住んでいるから、被害が無くてよかった」という声をいくつか聞いた。そのような声に対し、「外来生物であるキョンは、千葉県から埼玉県に広がっている情報もある」という話をした。今後は、都会であろうと野生動物の被害が当たり前となる世の中になる可能性もある。市民である我々が野生動物の存在を意識し、一人ひとりがどのように考え、行動するべきであるのか。また、市民の意見が集まり、自治体の方針が決まるため、そのような未来に対してどのような社会を目指していくべきかを話し合った。
まずは獣害を知って、意識してもらうところから始め、「自分事」として捉えてもらうことが必要。ライトな関心層=理解者を増やすことで、その中から対策のための行動を起こす人が出てくるのではないか。また「具体的な行動」は生物の命を奪うことでもあり、ハレーションも起きやすいと考えられる。そうした場面では理解者が多くいることが支えにもなる。
意見・論点
アライグマとハクビシンによる獣害の例と生息域拡大のデータを提示し、それに対してどうしたらよいかを来場者に4択で問うた。
- つかまえて処分する
- おとな:50名、こども:19名
- ひにん手術をしてもとの場所にもどす
- おとな:31名、こども:45名
- 動物園の猛獣のえさに
- おとな:16名、こども:12名
- 人間ががまんすればよい
- おとな:8名、こども:11名
加えて自由意見も募ったところ以下のような意見が寄せられた。命を奪わない対処方法の提案として「保護センターで保護する」「ペットとして飼えるか試してみる」「手術をして一緒に住む訓練をする」「安全に動物園じゃない専用の場所にあずけて人が観られるようにする」「アライグマ、ハクビシン専用の森のある檻みたいなところを作り、捕まえて入れる」「ハクビシンは台湾に送り返せばよい」といった意見がある一方、処分を前提とした意見では「殺処分するのであれば、ジビエ料理などにして提供する」といった有効利用の提案、「動物福祉的に処分方法を考えてほしい」といった動物福祉の観点からの意見も寄せられた。共生を前提とした意見としては「動物と人間で住む場所を分けられる技術ができるとよい」「元の場所に戻す」「農作物をとられないようにもぎ取る」などがあった。
「捕まえて処分する」のがよいとした大人が多かったのは、現象(今回は獣害)を現実的に捉え、将来も見越して冷静にものを考えることができる大人の属性によるもの、「ひにん手術をしてもとの場所にもどす」のがよいとする子どもが多かったのは、現状を放置すれば将来的にどうなるのかといった予測よりも、生き物の命を奪うのはかわいそうといった子供らしい心理が背景にあるのではと考えられる。「動物園の猛獣のえさに」という選択肢は、今夏デンマークの動物園が、不要になったペットを猛獣の餌用に寄付してほしいと呼びかけて物議をかもしたニュースにヒントを得て作成した選択肢であったが、4つの選択肢が適切であったかどうかは今後の検討課題としたい。
キーワード
- クマ(クマによる最近の人身被害が大きな問題になっていることから、展示品であるツキノワグマの前肢の毛皮と爪の付いた骨格を実際に触りながら会話する親子の姿も多くみられた)
- 家畜化(アライグマとハクビシンを家畜化してしまえば、問題として認識しなくなるとの意見があった。一方で、これまでの家畜化の歴史と比べるとそんな簡単な問題ではないとの声もあった)
- 可視化(目撃マップのように可視化することでわかりやすい)
- 対策(出展者が問われる場面も結構あった。具体的な方法をもっと提示してもよかった。獣害対策には費用がかかり、行政が対応することになるが、その原資は税金。限られた税収の中で獣害対策にどれだけ税金を使ってもいいのか、私たち市民にも問われてくる)
来場者との対話から得られたこと・今後に生かせること
昨年度のシカにつづき、今年度は近年都心部でもよく目撃されるアライグマやハクビシンといった野生生物による獣害について取り上げた。実際に自分が目撃したことのある生き物は、知っていはいても目撃したことのない生き物に比べて当然関心度も高い。もくげきマップ(地図への目撃情報のマッピング)と目撃メモの記入でも、目撃日時をわざわざスマホの画像で確認してくれる来場者もあり、場に「参加している感」を味わってもらえたのではないかと思う。もくげきマップのシールを数えたところ、東京23区内での野生動物の目撃はハクビシン128件、アライグマ29件、タヌキ57件。ハクビシンが圧倒的に多く、アライグマも生息範囲を広げていることが窺われた。大雑把な集計とはいえ、今後も同様に続けていくことで、都心への進出状況を追えるかもしれない。
クイズは、アライグマの足跡、アライグマの尻尾、日本に生息するハクビシンの起源、ハクビシンの食害面積、スイカの食害の犯人の5問を出題した。特にスイカの3種類の食害痕の写真から何の動物による食害かを当てるクイズは、動物の特徴を食害痕に結び付ける思考を問うものとなっており、来場者には意外性が高かったようだ。
アライグマとハクビシンの毛皮と頭骨の展示、二ホンサル、ブタ、キョンなどの頭骨の展示も、昨年と同様来場者の関心が非常に高く「触れる展示」の重要性を再認識した。触ってみたからそれがすぐ何かに結び付くということはないが、この体験が子供たちにとって、自分もはく製や骨格標本や作ってみたいとか、動物の研究をしてみたいといった希望を持つきっかけになれば喜ばしい。
アライグマ捕獲用の「箱わな」の実物を展示し、実演も行った。ただ置いてあるだけでは「こういう装置があるんだ」という認識で済んでしまうが、実際に扉が閉まる瞬間を見ることで、獣害対策に対する関心がより高まることが期待される。