出展者名

JAMSTEC海域地震火山部門

Research Institute for Marine Geodynamics, JAMSTEC

プログラム概要

火山は、地球内部から外側へエネルギーや物質を放出する場所で、火山から噴き出す岩石は、地球の中で何が起きているかを私たちに教えてくれます。そして、一口に火山から産まれた石と言っても、海洋底でチューブのような形になってしまった枕状溶岩や、成長を続ける西之島を作る安山岩、沖縄に大量に流れ着いた軽石など、様々な姿をしています。
火山やマグマの活動によって地球内部からやってきた岩石を、どうやって取ってきて、どんなふうに研究しているのか、現場の様子を紹介します。また実際に取ってきた岩石を見たり触ったりして、一つ一つの石に含まれる地球内部からのメッセージを一緒に読み解いていきましょう。

Volcanoes are places where energy and materials are ejected from the Earth's interior to the surface, and the rocks that erupt from volcanoes tell us what is happening inside the Earth. When we talk about rocks formed by volcanoes, there are various types, such as pillow lava that has formed into tube-like shapes on the ocean floor, andesite that Nishinoshima Island larger and larger, and pumice that has washed ashore in large quantities in Okinawa.
We will introduce how we collect rocks that have come from the Earth's interior, and how we investigate them. Let's touch the rocks derived from the Earth's interior, and decipher the messages contained within each rock.

✏️出展レポート

話し合った未来像

本州から遠く離れた小笠原諸島には海底火山や火山島がいくつも存在しています。本企画では、小笠原の火山活動が意外と身近でも感じられる機会があることを、実際に火山からもたらされた岩石を見ながら来場者とともに考えました。
2021年の海底火山「福徳岡ノ場」や2023年の硫黄島の噴火では、軽石が火山から放出されて、数カ月後に1000km以上も離れた沖縄に流れ着くという現象が見られました。特に2021年の軽石漂流は、港が使えなくなるなどのトラブルも起きたため全国ニュースとなり、記憶に新しいかもしれません。そういった軽石漂流現象は、規模の違いこそあれ数年~十数年に一回程度は起きていることがわかり始めてきました。今後、似たような軽石漂流が起きたときに、災害と呼ばれるような現象につながってしまうのか、或いは被害を最小限に留めることが出来るのかを考えていくうえで、個々の軽石漂流で見られたことを丁寧に記録して、一人ひとりの市民が記憶にとどめておくことが大切となるでしょう。
また、2013年から噴火を繰り返している西之島では、当初は島が成長していることが注目されていましたが、2020年には爆発的な噴火が発生して島の形が大きく変わりました。研究者たちは、再び島が成長するフェーズに戻るのか、或いは爆発を繰り返すのかに注目して、継続的な観測・監視をしています。生物が居なくなった大地にどうやって再び動植物が広がっていくのかという天然の実験室でもある西之島の今後がどうなるのかも、注目ポイントです。

意見・論点

4年前に軽石漂流が話題になっていたことを覚えている人は多かったが、ニュースで見たにとどまる人が殆どでした。実際にその時にやってきた軽石が水に浮かんでいるのを見て、火山現象の不思議さを改めて実感した方が多かったです。
また、2023年の硫黄島噴火由来の小規模な軽石漂流については、今回のブース来訪で初めて知った方が多く、同じように1000km海を流れてきた軽石でも見た目や大きさにいろいろな物があることに驚いていました。更に、当日ブースでは2.5kg、長径45cmの軽石を実際に持ち上げてみることが出来たのですが、見た目に反する軽さに驚くとともに、海に浮かぶだろうことに納得がいった様子でした。
西之島での陸地の形成についても、実際に西之島で生まれた様々な火山岩を見て、手に取り、また地形の変化を3D模型で見ることで、ニュースになっていた「島の成長」が実際にどのようなものだったのかを実感してもらえた人が多かったようです。今後の島の成長に期待する声が多かったです。

キーワード

大小の軽石を実際に持ってみての「軽い」という驚きの声が多く出ていました。また、軽石が何故水に浮くことが出来るのか、外に見えているだけでなく中にもたくさんの泡が出来ているから、ということを実物を見ながらイメージしてもらえました。
島の成長、もキーワードとなりました。

来場者との対話から得られたこと・今後に生かせること

日本は火山が多く見られる国で、活発な火山活動のニュースは日々の暮らしでも聞くことが多いです。一方で、海の火山の観測は陸よりも困難が多い、というのは、意外と知られておらず、今回の来場者も海底火山や火山島の観測難度の高さの話を聞くことは新鮮な驚きにつながっているようでした。
日本周辺には多くの既知、そして未知の海底火山が存在しており、これからも海底火山の調査を継続し、知見を集約していくことは、防災の面からも重要と言えるでしょう。その際には、身近にも海底火山の影響が及びうるということを、市民にも広く知識として知ってもらうための工夫をより一層凝らす必要があると感じました。
海岸に漂着する軽石は、もっともわかりやすく海底火山の活動が目に見えるものの一つであることを、今回の来場者の反応を通じて確認しました。実物を手に取ってみることの「体験」を、今後も様々なアウトリーチの場で活かしていきたいと考えています。