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資料4

開発課題名「オールインワン化学発光顕微鏡システムの開発」

最先端研究基盤領域 先端機器開発タイプ

開発実施期間 平成28年10月〜令和3年3月

チームリーダー :  永井 健治【大阪大学 産業科学研究所 教授】
中核機関 :  大阪大学
参画機関 :  株式会社東海ヒット、東京大学
T.開発の概要
 励起光の照射を必要としない化学発光によるイメージングは、励起光が必要な蛍光イメージングでは困難な、光感受性細胞や光照射に弱い細胞の長時間観察および、複数の光遺伝学的ツールによる細胞操作技術との併用も可能にする。しかし、これらを簡便に実現する顕微鏡システムが実用化されていないため普及が進んでいない。本課題では、完全遮光状態で発光基質を自動的に安定供給するだけでなく、薬剤刺激も行うことができ、さらに任意の時空間パターンで光摂動を与えることが可能なオールインワン化学発光顕微鏡システムを開発する。
U.開発項目
(1)要素技術開発
 完全遮光装置、培地潅流/発光基質・薬剤添加装置をそれぞれ開発し、顕微鏡と組み合わせたほか、高速オートフォーカスのプログラムを開発した。実際の生細胞を観察し、24時間連続で化学発光像が撮影できることを確認した。3色以上の光刺激照射による細胞の光操作を併用することが可能であることを実証した。
 新規に発光キノコから化学発光タンパク質を単離し、その特性について解析し、また人工進化で高機能化にも成功した。独自の化学発光タンパク質として利用が可能であることがわかった。
(2)プロトタイプ化
 既存の顕微鏡へ必要な機能をオプションとして後付する「アドオン型」について、上記各要素技術の実用化装置を開発し、全ての機能をPC上より操作することを可能とした。また顕微鏡との一体型である「パッケージング型」については、商品化に向けたプロトタイプを開発した。
V.評 価
 本課題は、要素技術タイプで開発した高光度化・多色化・各種機能プローブ化を図った化学発光イメージング技術をベースに、光遺伝学との併用可能かつ3Dイメージング可能なオールインワン化学発光顕微鏡システムを開発するものである。
 本開発では、オールインワン化学発光顕微鏡システムに必要な要素技術の開発に成功するとともに、当初予定していなかった創薬向けに機能を絞り込んだパッケージング型システムも開発し、製品化まで到達したことは高く評価できる。さらに、新たな発光タンパク質も見出しており、化学発光プローブの開発でも世界をリードし続けている。これらの開発により、化学発光顕微鏡の普及への道を切り拓いたと言え、新しい分析装置としてライフサイエンスをはじめとする多くの分野での利用が期待できる。
 今後は、ユーザーニーズに適合する化学発光プローブの開発と3Dイメージングなどの機器性能の向上、および知財戦略を踏まえたさらなる進展を期待したい。
 本開発は、当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する。[S]