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資料4

開発課題名「オンサイト蛍光偏光イムノアッセイ装置の開発」

最先端研究基盤領域 先端機器開発タイプ

開発実施期間 平成28年10月〜令和2年3月

チームリーダー :  渡慶次 学【北海道大学 大学院工学研究院 教授】
中核機関 :  北海道大学
参画機関 :  Tianma Japan株式会社、東北大学
T.開発の概要
 食品中の抗生物質や合成抗菌剤、カビ産生毒素や細菌産生毒素などを迅速、簡便に検出できるオンサイト蛍光偏光免疫分析装置を開発する。液晶素子とイメージセンサーを組み合わせることで、小型・安価・多サンプル同時測定が可能な装置が実現する。これにより、既存の食品分析分野のみならず、セントラルキッチンなどにおけるオンサイト分析や他との区別化によるブランド力強化などの、食品分析に関する新しい分野の創出が期待できる。また、医療診断や環境分析への応用も十分期待される。
U.開発項目
(1)小型実証機の製作
 装置を構成する光学系及び検出器を検討するとともに、装置の最も重要なキーパーツである液晶素子については、カラーフィルターレス、最適な液晶モード及び液晶セル構造/材料選択により、既存民生品の液晶素子に比べて、透過率5.7倍及び偏光純度2.0倍の液晶素子を開発した。いずれも、目標を大きく上回った。
(2)小型実証機の機能評価終了
 精度について、カビ毒での性能評価を実施し、繰返測定精度0.7〜1.8 %を達成し、感度については従来FPIA装置と同等感度を達成した。測定時間も1分弱を達成し、サンプル数も、9サンプル同時測定が可能とし、実証機外装のサイズ、重量2.7 kgを含め、すべて目標を上回った。カビ毒、食物アレルゲン、抗生物質、原虫、ウイルス、バイオマーカーなど様々な測定を実施し、開発したマイクロチップの有用性を確認した。
(3)ユーザー評価
 北海道立衛生研究所にてユーザー評価を実施し、公定法(LC-MS/MS)と同程度の精度で測定が可能であることを示した。ユーザーフレンドリー化のための装置改善点についてのコメントを受けて、装置改良に反映させた。
V.評 価
 本課題は、液晶変調器とイメージセンサーを組み合わせた独自開発の蛍光偏光測定システムを用いて、抗生物質や細菌を現場で迅速・簡便に検出する装置の開発である。液晶素子の性能は目標を大幅に超え、測定再現性と小型化でも目標を上回っている。従来は高価格な装置を用いて数時間かかっていたイムノアッセイ測定が、オンサイトで低価格、短時間に計測できたことは高く評価できる。
 また、新たな成果として鳥インフルエンザや新型コロナウィルスへの応用など、事業化にむけた多種のプロジェクトが進行中であり、今後のさらなる進展が期待される。
 本開発は、当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する。[S]