チームリーダー : |
渡邉 信嗣【金沢大学 新学術創成研究機構 ナノ生命科学研究所 准教授】 |
中核機関 : |
金沢大学
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参画機関 : |
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- T.開発の概要
- 生体分子は自らの構造を変化しながら、他の生体分子と相互作用することで機能を発現しており、構造と動きを直接的にとらえるムービー観察技術が強く求められている。本課題では、独自に考案した技術とイオン伝導顕微鏡を融合した新しい走査プローブ顕微鏡の基盤技術を開発する。これにより、液中の生細胞膜ナノ構造のムービー観察を、非接触状態において、高解像度で高速、非標識に行うことができ、生命科学研究における革新的な研究ツールとなることが期待される。
- U.開発項目
- (1)高性能HS-IcMプローブの開発
- プローブ先端形状制御手法の開発により、先端の外直径が20 nm以下のプローブを高い歩留まりで作製できるようになった。またイオン電流安定化の検討を行い、信号に対する雑音比が1 %以下で、安定した電流が得られることを確認した。
- (2)高速高安定HS-IcM計測手法の確立
- 変調周波数25 kHzの高速ACスキャン機構を開発し、単体では90 kHz以上まで動作することを確認した。
- (3)装置性能の評価(細線ナノ構造体で評価)
- 時間分解能について、4秒/フレーム(100×100 pixels、走査範囲20×20 μm2)、1.8秒/フレーム(100×100 pixels、走査範囲0.5×0.5 μm2)を達成し、空間分解能については15 nm以下を達成した。HeLa細胞の表層ナノ構造の動態を1.5時間以上にわたって安定に計測可能であることを確認した。また本装置を用いて高感度な表面電荷密度の検出が可能であること、非常に小さな弾性率の検出が可能であることを見出した。
- V.評 価
- 本課題は、生細胞の表面膜ナノ構造を液中で非標識かつ簡便に高解像ムービー観察できる基盤技術の開発である。
分子をムービー観察する技術としては高速AFMがあるが、接触型のプローブのためやわらかい生体試料の観察が困難である。本装置は非接触型のプローブを採用し、プローブの改良、高速スキャン機構の開発等を行うことで、ダメージを与えない長時間観察と高い時間分解能、空間分解能の両立を実現している。さらに、がん細胞の弾性率計測で悪性度の評価ができる可能性を見出すなど、新たな展開に向けて応用展開を着実に進めていることは高く評価できる。イオン伝導現象は複雑な物理現象を含んでおり、汎用の計測法として発展するためには測定データの物理的な解釈の検討が重要であろう。
本開発は、当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する。[S]
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