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資料4

開発課題名「原子解像度顕微鏡で得られる超高速分子動画の自動化解析技術の開発」

最先端研究基盤領域 要素技術タイプ

開発実施期間 平成28年10月〜令和2年3月

チームリーダー :  原野 幸冶【東京大学 総括プロジェクト機構 特任准教授】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  株式会社システムインフロンティア
T.開発の概要
 超高速原子分解能透過電子顕微鏡で得られる有機分子の2次元動画像から、その3次元動的構造を自動的に決定できるソフトウェアの開発を行う。高速カメラによって得られる大量の電子顕微鏡動画とシミュレーションでの分子の動きを関連づけることで、時系列で変化する分子の動きを3次元的に観察できる。これにより、分子の配座変換過程や化学反応の解析、さらには結晶化過程の追跡など、基礎研究から工業プロセス管理まで幅広い波及効果が期待される。
U.開発項目
(1)撮像素子からのデータ読み出し方法の確立
 1600枚/秒で撮影した動画について、ノイズ削減アルゴリズムを最適化することにより、分子イメージングが可能であることを示した。
(2)TEM動画を高解像度化する処理手法の開発
 分子動画観察において、画像の回転方向のぶれ補正と重ね合わせを行うことによって0.1 pixelの位置合わせ精度を実現し、細い単層カーボンナノチューブの構造決定に初めて成功した。
(3)分子の3次元構造推定の自動化
 シミュレーション画像と実画像のマッチングによる分子構造推定において、95 %以上の成功率で短時間の構造マッチングを実現した。また、画像処理からマッチングまでをシームレスに行えるGUIを備えた統合ソフトウェアを完成した。
V.評 価
 本課題は、原子分解能TEMと超高速カメラにより取得した大量の画像情報を高速処理することによって、3次元分子構造を原子分解能で決定する自動化解析技術を開発するものである。
 電子顕微鏡から得られる画像がぼける原因を検討し、それに適したデータ処理法を構築している。また、カーボンナノチューブ内で動く分子について世界最高速での動画撮影に成功しており、当初の目標を達成していると評価する。
 今後は、利用する研究者と画像処理、人工知能等の最新のソフトウェア・エンジニアと十分な連携をしながら進めることを期待したい。また、ソフトウェアの著作権登録についても検討してほしい。
 本開発は、当初の目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する。[A]