JSTトップ > 先端計測分析技術・機器開発プログラム > 評価結果 > 資料4

資料4

開発課題名「超高感度無線無電極MEMS水晶振動子センサーの開発」

最先端研究基盤領域 要素技術タイプ

開発実施期間 平成28年10月〜令和2年3月

チームリーダー :  荻 博次【大阪大学 大学院工学研究科 教授】
中核機関 :  大阪大学
参画機関 :  サムコ株式会社、日本工業大学
T.開発の概要
 世界で初めて開発に成功した無線・無電極圧電振動子センサーの原理を基盤とし、MEMSプロセスを駆使して温度補正を必要としない超高感度水晶振動子センサーを開発する。これは従来の振動子センサーの数万倍の質量感度を持つ素子であり、バイオセンサー、ガスセンサー、呼気センサーとしての革新的な要素技術となり、健康・安心・安全な社会に多大に貢献することが期待される。
U.開発項目
(1)世界最高感度の無線QCMバイオセンサーの完成
 マイクロ流路内にアンテナを設置した独自のQCMセンサーを開発した。高次モードで発振周波数が1 GHzを超える超小型のQCMチップにおいて、既存の汎用QCMセンサーを大幅に上回る検出感度を実現した。極薄の水晶振動子を流路内に封じ込めるMEMSプロセスを考案し、4インチウェハから小型チップを多数採取することに成功するなど、目標を大きく上回った。
(2)バイオマーカーの検出
 装置の制御、周波数データの取得、解析用のソフトウェアを開発した。570 MHzのQCMを用いて、夾雑物の影響を受けずに血清中のCRPが1-1000 ng/mlの範囲で検出できることを実証した。また、バイオナノカプセルと融合したアッセイを行うことにより、50 pg/mlのCRPの検出にも成功した。
(3)ガスセンサー開発
 実用的に重要な水素ガスの検出を行い、現存の水素ガスセンサーの検出限界(>10 ppm)を上回る1 ppm程度の濃度の検出に成功した。
V.評 価
 本課題は、薄膜水晶振動子を用いた小型携帯可能な無線・無電極高感度圧電センサーの開発である。水晶振動子を極薄化してマイクロ流路内に載置するMEMSプロセスを開発し、1 GHzを超える高周波応答性を備え、目標を大幅に上回る世界最高感度のMEMS振動子センサーを実現した。要素技術の開発ながら、発振器、受信機、整合機、センサチップフォルダ―、ポンプ、ソフトウェアの全てを開発したことは高く評価できる。さらなる応用として、水素ガスセンサーやパーキンソン病などの早期確定診断などへの可能性も明らかにしており、医療、環境分野などへの発展が期待される。
 本開発は、当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する。[S]