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資料4

開発課題名「太陽電池評価のための3D顕微メスバウア分光装置の開発」

グリーンイノベーション領域 機器開発タイプ

開発実施期間 平成24年10月〜平成29年3月

チームリーダー :  吉田 豊【静岡理工科大学 理工学部 教授】
サブリーダー :  小粥 啓子【株式会社アプコ 代表取締役】
中核機関 :  静岡理工科大学
参画機関 :  株式会社アプコ
T.開発の概要
 多結晶シリコン太陽電池に製造過程で混入する微量鉄不純物は、キャリア捕捉中心として発電効率を大きく低下させる大きな要因になっている。本開発は、γ線集光技術と電子計測マッピング技術をもとに、3次元顕微メスバウア分光装置を開発し、多結晶シリコン太陽電池に含有する鉄不純物を制御するための原子スケールの目を与え、発電効率向上に寄与することを目指す。本装置により、発電中の多結晶シリコン太陽電池の鉄顕微観察が可能になり、結晶粒毎に粒界や転位などの格子欠陥と鉄不純物との相関を明らかにし、表面から深さ関数で鉄不純物の非破壊評価が可能になると期待される。
U.開発項目
(1)2次元顕微メスバウア分光装置の高機能化
 電子線後方散乱装置(EBSD)、電子分光器(HVCSA)、FESEM、EBICを搭載した分光装置を開発し(同一視野での顕微メスバウア観察を可能にし)、単結晶・多結晶シリコンウェーハの鉄拡散・欠陥との相互作用観察を実現した。また、制御ソフトを開発し、3次元顕微メスバウア分光装置開発に生かし、最終目標を達成した。
(2)鉄不純物のキャリア捕捉断面積評価
 電子線照射下及び光照射下で、その場観察により太陽電池動作中の鉄不純物のキャリア捕捉断面積を評価し、最終目標を達成した。
(3)3次元顕微メスバウア分光装置の開発
 3次元顕微メスバウア分光装置を開発し、実際のシリコン太陽電池、多結晶シリコン材料、鉄鋼材料などの鉄不純物を観察し、最終目標を達成した。
V.評 価
 本課題は、太陽電池の発電効率に影響を与える鉄不純物を、非破壊で成分ごとにマッピングできるオンリーワン技術であり、当初の開発目標はほぼ達成し、学術的、技術的にも高いレベルの装置を開発した。
 シリコン太陽電池中のFe2+がキャリア捕捉に重要な役割をもつことを初めて示したことは特筆すべきであり、高品位の電池製造に道を拓くものである。また、放射線管理区域外でも使用可能な機器を開発しており、実用化の観点からも高く評価できる。本装置は微量の鉄の状態を観察できることから、今後鉄鋼分野やバイオ分野など幅広い分野への展開が期待できる。
 本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する。 [S]