JSTトップ > 先端計測分析技術・機器開発プログラム > 評価結果 > 資料4

資料4

開発課題名「蓄電池固体内反応局所領域の非破壊分析装置と手法の開発」

グリーンイノベーション領域 機器開発タイプ

開発実施期間 平成24年10月〜平成29年3月

チームリーダー :  櫻井 吉晴【公益財団法人高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門 主席研究員】
サブリーダー :  長峰 勝【株式会社長峰製作所 相談役】
中核機関 :  公益財団法人 高輝度光科学研究センター
参画機関 :  株式会社長峰製作所、群馬大学、京都大学、トヨタ自動車株式会社
T.開発の概要
 高い物質透過能を有する100 keV 以上の放射光・高エネルギーX線のマイクロビームを用いて、蓄電池固体内局所領域の物質挙動を非破壊に観察し、蓄電池内部の反応分布を経時的に可視化する統合計測システムを開発する。また、本装置の利用が期待される大型Liイオン2次電池の研究開発現場での実証試験を行う。
U.開発項目
(1)コンプトン分析装置の開発
 空間分解能9μmx50μmx50μm、Liイオン濃度の測定精度4%のコンプトン分析装置を開発し数値目標を達成した。一方、リチウム推定誤差±0.1で組成決定するための計測時間は、正極10秒、負極8秒であった。
(2)コンプトン分析装置の機能評価
 モデル蓄電池で、Liイオン濃度の時間依存性、場所依存性を計測した。また、実蓄電池では、市販のコイン型2次電池でLi濃度時間変化マッピングを実現した。大型蓄電池のLiイオン濃度時間変化マッピングは今後の課題となった。
V.評 価
 本課題は、100keV以上の放射光高エネルギーX線のマイクロビームを用いて、蓄電池内部の物質挙動を非破壊観察する計測システムの開発であり、蓄電池の安全性を高める計測・診断技術としての利用が期待される。当初の開発目標はほぼ達成し、蓄電池内部のLiイオン分布の可視化に成功している。
 ただし、蓄電池評価試験のデータが不十分であり、Liイオン電池の動作状態や性能向上のための問題点を明確にするためには、さらなる開発が必要である。今後は、本装置の使用希望者に出来るだけ早期に門戸を開放し多くの実験データを積み重ねるとともに、技術の普及に取り組むことを期待する。
 本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する。 [A]