チームリーダー : |
木村 建次郎【神戸大学 大学院理学研究科 准教授】 |
サブリーダー : |
木村 憲明【株式会社Integral Geometry Science 代表取締役】 |
中核機関 : |
神戸大学 |
参画機関 : |
株式会社Integral Geometry Science、千葉工業大学
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- T.開発の概要
- 環境問題が深刻化する中で、次世代リチウム二次電池の高性能化が注目されている。本開発では、電池内部の電流経路を超高分解能で映像化するシステムを開発、リチウム二次電池の負極でのデンドライト発生をパッケージ越しに非破壊画像診断し、性能劣化の少ない負極材料開発の促進、正極負極短絡に係る爆破事故を未然に防ぐことを目的とする。
- U.開発項目
- (1)ナノスケールの位置決めを実現するステージの開発
- XYZ圧電スキャナとXYZステッピングモータを併用し、異常箇所をサブミリメートルスケール精度で特定後、ナノメートルスケール精度で物体内部の電流密度分布を非破壊に映像化することに成功した。また、θxθyステージで0.001degの精度を実現し、最終目標を達成した。
- (2)高分解能電流経路映像化システムの開発
- 車載用蓄電池を想定して、磁場検出感度は目標を3桁上回る2pT/√Hz、導電率分布画像の画像再構成, 出力速度1秒以下、データ取得時間は1μm分解能で10秒(1mm分解能では2秒)を達成した。さらにインライン検査に向けて、磁気センサのラインアレイ化を行い、128 chの目標を超え2次元300 chのシステムを完成させ、数秒で映像化可能な高分解能電流経路映像化システムを開発した。
- (3)その他(蓄電池内の3次元電流解析)
- 蓄電池内の3次元電流解析は当初目標に掲げていなかったが、ユーザーからの強い要望を受け、蓄電池内から発する磁場の計測結果から蓄電池内の3次元電流を再構成し、断層映像化することに成功した。本技術は蓄電池以外にも活用の可能性があり、企業との共同研究を実施するなど成果が期待される。
- V.評 価
- 本課題は、電池内電流経路を映像化する非破壊画像診断システムを開発して、電池作動中での劣化箇所の可視化や、異物混入などで正極・負極が短絡して起こる爆破事故の防止など、幅広い利用が期待できるものである。開発は、極めて順調に進捗し、当初難解と考えられた3次元電流解析についても断層映像化に成功するなど、目標を大きく上回る成果が得られた。
要素技術課題にも関わらず機器開発まで行い、多くの電池関連メーカーなどと実証研究を進め、一部については既に製品化していることも高く評価できる。また、電池関連だけでなく鉄筋劣化診断や医療診断への適用など、様々な分野への発展も進めており、今後さらなる活用が期待できる。
本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する。 [S]
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