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資料4

開発課題名「環境中病原性微生物の迅速定量装置の実用化開発」

最先端研究基盤領域 実証・実用化タイプ

開発実施期間 平成26年12月〜平成29年3月

チームリーダー :  福澤 隆【日本板硝子株式会社 情報通信デバイス事業部 事業開発部 主席技師】
サブリーダー :  永井 秀典【産業技術総合研究所 次世代メディカルデバイス研究グループ 研究グループ長】
中核機関 :  日本板硝子株式会社
参画機関 :  産業技術総合研究所、株式会社ゴーフォトン
T.開発の概要
 環境中の病原微生物を正確、迅速に検出し、水際での封じ込めを可能とするため、これまでに開発した小型軽量なリアルタイムPCRシステムをもとに、食中毒起因菌やウイルスを、測定開始から10分程度で定量できることを目指す。大規模食中毒のリスクを懸念する食品生産・加工会社などにおいて、環境水検査や拭き取り検査機器としての有効性を検証し、世界に類のない迅速性と感度、正確性を兼ね備えた手のひらサイズの装置を開発する。
U.開発項目
(1)チップインターフェース部開発
 チップを装置に挿入し、蓋を閉めるという2動作でポンプとの接続及び蛍光検出器との接続を行いながらチップをセットできる機構とした。
(2)最適な蛍光検出器の開発
 蛍光検出器用光源の光量をモニターし、これをもとに点灯用電流にフィードバックする方法を開発した。消費電力は点灯時で0.6 W、未使用時は消灯することから、低消費電力化に成功している。
(3)逆転写リアルタイムPCRの迅速化
 分析手法の簡略化については、装置内に逆転写領域を設けることにより、ワンステップの試薬を試作し、逆転写を含めたワンステップ化を実現した。全反応時間の短縮は、PCR試作機と同じく試作したノロウイルス用検査試薬を使用して、逆転写含めて13.5分で測定が終了できることを実現した。
(4)小型PCR装置の開発
 基本性能としてノロウイルス用及び大腸菌用PCR試薬を用いての評価を行い、ともに10 copiesまでは測定できていることを確認、CV値に関しては1 %程度であった。 装置サイズ150×100×50 mm以下、重量1 kg以下を目標としたが、サイズは機能を追加したこともあり、200×100×50 mmとなったが、重量は約500 gと大幅な軽量化に成功している。
V.評 価
 本課題では、現場で食中毒起因菌やウイルスを迅速に定量できるPCR装置の実用化開発を目標とした。
 開発目標をほぼ達成するとともに、開発途中で想定ユーザーから寄せられた測定項目の追加、使用環境の拡大などについても対応している。当初予定していた牡蠣の生産現場でのノロウイルスの検出については、ノロ陽性検体数が少なく試験的に少数のテストしかできなかったものの、それ以外の食品工場や給食施設等の現場で、ウイルスの迅速検出という新しい市場を見いだしたことは高く評価できる。
 モバイル遺伝子検査装置として、競合品と比較して圧倒的優位性を持つことから、今後チップと試薬の低コスト化、測定対象ごとの前処理方法の確立、協業する企業との連携など、事業化に向けた展開を迅速に進めることで、広く普及することが期待される。
 本開発は、当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する。 [A]