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資料4

開発課題名「排水全量の放射能モニタリング装置の実用化開発」

最先端研究基盤領域 実証・実用化タイプ

開発実施期間 平成26年12月〜平成29年3月

チームリーダー :  福井 久智【鹿島建設株式会社 環境本部 課長】
サブリーダー :  秦野 歳久【量子科学技術研究開発機構 量子ビーム科学研究部門 研究企画室主席研究員】
中核機関 :  鹿島建設株式会社
参画機関 :  量子科学技術研究開発機構、日本原子力研究開発機構、日本金属化学株式会社
T.開発の概要
 排水処理施設において、処理水の放射性セシウム濃度を現場で全量モニタリングできる装置を開発する。本装置は、水による自己遮蔽型のモニタリング装置であり、7トン/時間程度の大容量、高速計測できることを目指す。本装置を実用化することで、中間貯蔵施設などの大量の排水処理が予測される状況においても全量モニタリングが実現可能となる。
U.開発項目
(1)開発装置の最適化
 数値解析を用いた撹拌の最適化により、槽内平均流速がプロトタイプ機の約15倍となるモデル構築を行い、槽内SS(浮遊性懸濁物質)の均一化を行った。また、循環方法も見直した後、試作機を完成させ、放射性物質を含む模擬排水および実排水を用いた運転を実施し、槽内SSの均一性を確認した。1バッチ(4 m3)15〜30分での計測 → 8〜12 m3/時間での計測を行える装置を完成し、目標値以上の装置開発に成功した。バックグランド放射線の遮へい性については、環境放射線について99.9%の遮蔽に成功した。
(2)放射線解析
 モンテカルロシミュレーションコードPHITSを用いて装置詳細モデルを作成し、放射性セシウムの点線源および体積線源(モニタリング水内均一)による放射線解析を行っている。点線源において解析モデルの妥当性を評価し、実験結果に対して1.6 %以内で一致することを確認した。体積線源では、実験から得られた校正直線は、解析結果と良好な一致を確認した。
(3)放射線センサーの開発・最適化
 福島県の除染現場排水を用いた実排水計測試験を実施した。最小検出感度0.32 Bq/Lを達成し、数値目標(10 Bq/L)を大幅に上回るセンサー性能を得た。ゲルマニウム半導体検出器での公定分析結果との計測結果の相関性評価を行い、結果として直線性が得られ、2 %以内の精度でモニタリングできることが確認できた。2 ℃〜38 ℃の範囲において、温度と放射線計測データとの相関データを取得し、温度補正式を導き出した。5インチNaI(Tl)結晶を用いた計測センサーの実用化に成功している。
(4)システム運転の検討
 自動化制御盤の開発を行い、自動運転プログラムソフトを組み込み、オンサイト実験にて自動運転の実証を行った。スクリーニングのためのPC上で稼働する専用制御ソフトを開発した。中央センサーの洗浄機能を持つ構造として、計測バッチごとに自動洗浄できる装置の実証を行った。
V.評 価
 本課題は、中間貯蔵施設等の排水管理を想定し、放射性セシウム10 Bq/kgを検出下限とする装置の開発を進め、外部放射線対策、均一攪拌、高速化など実用化への課題を着実に解決した。また、大型センサーの採用で目標を大きく上回る検出下限(1 Bq/kg未満)を達成し、当初目標の排水だけでなく、浄水場や食品工場等の取水の管理にも適用可能であることを実証したことは高く評価できる。さらに、実用機の販売体制も確立しており、今後はさらに広い活用が期待される。
 本開発は、当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する。 [S]