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資料4

開発課題名「マルチモーダル発光イメージングシステムの開発」

最先端研究基盤領域 要素技術タイプ

開発実施期間 平成25年10月〜平成29年3月

チームリーダー :  永井 健治【大阪大学 産業科学研究所 教授】
中核機関 :  大阪大学
T.開発の概要
 励起光の照射を必要としない化学発光イメージングは、光によって生理機能を制御するオプトジェネティクスとの併用が原理的には可能であったが、従来は、発光光度が弱すぎるなどにより実用化は困難であった。本開発では、複数の生体分子を光で操作しながら高速かつ長期間、焦点ずれなく複数の生理機能を化学発光により可視化できる「マルチモーダル発光イメージングシステム」を構築し、これまでにない多次元機能動態操作イメージングに資する技術を確立する。
U.開発項目
(1)化学発光タンパク質及びそれを用いた機能センサー開発
 化学発光タンパク質(NanoLuc)と蛍光タンパク質(mNeonGreen)を組合せ、Nano-lanternより10倍以上高光度のタンパク質を開発した。5色(シアン、緑、黄、橙、赤)の多色化も実現し、最終目標を上回った。また、開発した化学発光タンパク質を用い Ca2+、Mg2+、ATP、cAMP、膜電位のセンサーを開発した。
(2)化学発光自動焦点システムの構築
 カメラのデッドタイム中に高速にオートフォーカスを駆動させることで12 msでの動作が実現でき、最終目標を上回った。
(3)化学発光3D超解像装置の開発
 光スイッチング型化学発光タンパク質Nano-lantern(LOV2)を作成し、100 ms以下の青色光刺激に対しスイッチングオフすることを確認した。また、これを活用し 超解像3次元計測の検証を試みたが、オン・オフのコントラスト比が不十分であった。
(4)自動発光化の確立
 発光生物の発光基質合成酵素遺伝子群を取り込むことで発光イメージング対象細胞を長時間自動発光させることを検討したが、予算削減による一旦開発中止のため、酵素遺伝子同定までには至らなかった。
V.評 価
 本課題は、化学発光イメージングの高光度化・多色化を図り、オプトジェネティクスとの併用も可能で複数の生理機能をリアルタイムに可視化できる3次元化学発光イメージングシステムを開発する挑戦的な課題である。
 化学発光タンパク質の高光度化、多色化、それを用いた機能センサーの開発、多色光刺激光学系の構築、化学発光自動焦点システム化などの要素技術開発は、当初の目標を上回る成果を達成し高く評価できる。挑戦的テーマである発光基質合成遺伝子群導入による自動発光化の確立、化学発光3D超解像装置の開発はいまだ開発途上であるが、後者は次の機器開発ステージにて継続して取り組んでいる。
 今後は、目標とするオールインワン化学発光顕微鏡システムを製品化することで、ライフサイエンス分野での学術的知見の発見や産業的活用が推進されることを期待する。知財上の観点からは、独自のルシフェラーゼの開発・知財化を急ぐべきである。
 本開発は、当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する。 [A]