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資料4

開発課題名「微弱発光標準光源開発による発光蛍光計測定量化」

最先端研究基盤領域 要素技術タイプ

開発実施期間 平成25年10月〜平成29年3月

チームリーダー :  秋山 英文【東京大学 物性研究所 教授】
サブリーダー :  久保田 英博【アトー株式会社 技術開発部 部長・取締役】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  アトー株式会社、産業技術総合研究所
T.開発の概要
 生物化学発光や蛍光は、医療検査、環境計測、バイオイメージングなどに広く用いられているが、微弱な発光蛍光の高感度評価には絶対光量の標準がいまだ存在しない。本開発では、評価分析対象検体の発光蛍光の絶対値定量計測を可能にする微弱発光標準光源を開発し、その実施例を示し有用性を例証する。さらにこの標準光源を用いて、これまで相対値でのみ示されてきた生物化学発光蛍光試薬自体の性能や、発光分析装置ハードウエアの感度や検出限界を、絶対値で評価し、比較可能にする技術を確立する。
U.開発項目
(1)微弱発光標準光源の作製
 素子パッケージを試作し、LED光源素子を用いて、1秒積算時間に対して平均パワー1 mW−3 fW相当、応答速度10 MHz、開口直径2 mm−0.01 mmを得ており、当初目標を達成している。1素子のパルス幅制御、印加電流電圧の制御、素子サイズの最適化により、11桁のダイナミックレンジの光源設計を可能とした。
(2)波長依存性の評価ツールの開発
 被校正装置の400 nm-800 nmの範囲内の任意波長の絶対感度を校正すために平面型LED素子の絶対光量評価計測系として、積分球を用いた全光量計測系を開発した。併せて、タングステン白色ランプとバンドパスフィルタを組み合わせた波長可変単色光源ツールも開発し、これを用いて実際の装置校正や定量計測を行った。
(3)微弱発光標準光源の評価
 前項で開発した評価ツールを用いて、実際に1 fWレベルまでの光源校正を達成した。
(4)微弱発光定量計測の実施
 培養細胞の微弱発光の絶対量計測実験に成功し、ガン診断のための病理組織切片の微弱発光の3次元画像の絶対量計測実験を行い、1 fWレベルの発光を計測している。1 fWレベルまでの発光量を評価できる画像計測装置のほか、一連の汎用装置の校正実験を行った。半導体薄膜材料のPL定量実験と、太陽電池デバイスのエレクトロルミネッセンス定量測定も行っており、目標を達成している。
V.評 価
 本課題では、医療検査やバイオイメージングに有用である微弱発光標準光源の開発とその応用展開を目的とした開発である。当初目標である微弱発光標準光源の作製、波長依存性評価ツールの開発、微弱発光標準光源の評価と微弱発光定量計測の実施において、すべて目標を達成している。
 さらに、より早い製品化に向けて新たに市販LED素子を組み込んだ標準光源の作製にも成功し、補償回路を設けて発光量の変動を抑えるなどして、市場に投入できるものとなったことは評価できる。今後は、広く標準光源として使ってもらうために、ユーザーニーズを踏まえたさらなる開発を行うとともに、国際標準化に向けた展開も期待する。
  本開発は、当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する。 [A]