資料4

開発課題名「1細胞分子診断システム」

(平成25年度採択:ライフイノベーション領域 機器開発タイプ)

チームリーダー :  升島 努【理化学研究所 生命システム研究センター 一細胞質量分析研究チーム チームリーダー】
サブリーダー :  小倉 誠【富士通(株) 総務部 特命顧問】
中核機関 :  理化学研究所
参画機関 :  富士通(株)、理化学研究所、広島大学、(株)デンソーウェーブ
T.開発の概要
 世界唯一の1細胞質量分析法を基盤に、浮遊細胞等の捕捉も自動で行うことができる「細胞診断システム」の開発を行う。このシステムを更に、マーカー検出や高精度診断への応用に繋げて、低侵襲で迅速、簡易な、高汎用・高次分子診断法の確立を目指す。
U.中間評価における評価項目
(1)細胞捕捉アレイおよび顕微システムの開発
 1細胞捕捉アレイ及び多細胞捕捉アレイとも、当初の数値目標(それぞれ、1000細胞/プレート、10%が1細胞/ウエル及び200ウエル/プレート、100細胞以上/ウエル)を凌駕する性能のアレイを作製した。また、従来の明視野観察顕微鏡に蛍光共焦点顕微光学系を追加し、新しく蛍光像と融合した1細胞質量分析を行った結果、蛍光顕微検出下で行う1細胞質量分析が非常に有効であることが判明した。並行して、ラマン散乱分光法による分泌液分析法の確立を進めた。
(2)ロボット1細胞成分捕捉装置開発
 針先認識機構について、針先検出の高速化、高精細化を図った結果、当初の数値目標(先端分解能2 μm、認識時間10秒以内、針先認識所要時間20秒以内)を凌駕する装置を完成させた。また、追加成果として、ナノスプレーチップアダプター・ホルダー及びマイクロマニュピレーター自動復帰システムを新たに開発した(それぞれ特許申請済み及び特許申請準備中)。
(3)汎用超感度nano-sprayイオン源の開発
 ナノスプレーイオン源に、5cm直径の同軸状の窒素ガスを周囲から吹き出す様にすることで、大気アミノ酸ピークの低減(1/3-1/8程度)に成功し、0.5 amolのドーパミンを検出が可能となった(目標:1 amol)。この1細胞質量分析用のイオン源については、大手質量分析計メーカー3社が各社の機器に設置したいとの要望があり、NDAを締結し、現在、共同開発に着手した。
V.評 価
 本課題は、浮遊細胞等の捕捉も自動で行うことができる「1細胞分子診断システム」の開発を目指している。機器開発としての主要目標である細胞捕捉アレイの開発及び1細胞成分採装置のロボット化に成功し、取得した単細胞からの生体試料を用いて質量分析結果を既に得ている。また、周辺技術である超感度ナノスプレー専用イオン化装置の開発においても、当初の目標を上回るペースで開発が進捗している。更に、当初の目標にはなかった要素技術の開発にも成功していること、知的財産確保に関しても卓越した成果を残していること、将来の事業展開の芽が出始めていることも高く評価できる。今後は、スループットの大幅な向上とソフトウェアの使い勝手の向上を念頭に置きつつ、開発を積極的に推進すべきである。[S]