資料4

開発課題名「普及型・高精細PET/MRI一体型装置の開発」

(平成25年度採択:ライフイノベーション領域 要素技術タイプ)

チームリーダー :  山谷 泰賀【放射線医学総合研究所 分子イメージングセンター チームリーダー】
サブリーダー :  清水 啓司【浜松ホトニクス(株) 開発本部 PET開発グループ グループ長】
中核機関 :  放射線医学総合研究所
参画機関 :  浜松ホトニクス(株)、横浜市立大学、千葉大学、東京大学
T.開発の概要
 ここ数年欧米で開発が進むPET/MRI一体型装置は、被ばく低減や高い診断能の点で有利であるが、高額な装置コストが普及の妨げとなっている。本開発では、PETによるアルツハイマー病の発症前診断の普及を見据え、高性能かつ普及型の新しいPET/MRIの開発を目指す。具体的には、独自のPET検出器であるDOI検出器を応用し、既存のMRI装置にもアドオンできるPET一体型MRI用RFコイルの開発を行う。
U.中間評価における評価項目
(1)MRI中でRFコイルと合体できるPET検出器の開発
 開発チームが有する2つの要素技術(反射材方式、クリスタルキューブ)の最適な融合方法を模索し、DOI検出器性能を高めつつコストの削減を図った。具体的には、反射材方式にクリスタルキューブのレーザ加工面を導入することにより、コスト、分解能、量産性の両立に成功した。また、光学接着とレーザ加工の組み合わせ方法について試行錯誤を繰り返しながら、最適条件を得た。中央部だけでなく周辺部においても、すべての結晶素子を明確に分離することができた。MRI(3T)の測定中においても、2 mm(位置分別性能の目標値)の結晶素子が分離されていることを実証した。
(2)PET・MRI間干渉低減技術(RFシールドボックス)の確立
 PET検出器一体型RFコイルの実現の鍵となるPET検出器から発する電磁波ノイズとMRI装置から発するRFシグナルの相互干渉を低減させるシールドボックスの開発に成功した。位置弁別性能の変動及びエネルギ分解能の変動で評価したMRIによるPETへの影響については、それぞれ最大1%及び5%であり、いずれも目標としていた変動30%以下を十分に凌駕する成績であった。また、PET検出器によるMRI静磁場ゆがみ及びシールドケースに流れる渦電流による二次磁界を測定した結果、どちらもMRIの許容範囲内であることを検証した。
(3)フルリング試作機(プレテスト版)の開発
 当初の開発実施計画にはなかったが、プレテスト版のPET検出器モジュールを計8個製作し、上記の検証実験を実施することができた。
V.評 価
 脳・頸部に特化したPET/MRI普及型装置のための要素技術開発であり、開発は極めて順調に進捗している。特に、独自開発したクリスタルキューブを応用して、3T MRI同時測定で、PET分解能1〜2 mmを達成したこと及びそれにより日常診療に使用できるかの検証段階に到達したことは非常に高く評価できる。S/Nの低減を回避するシールドボックスの改良等の課題があるものの、製品化に向けてなお一層開発スピードをあげて、早期の実用化に向けた努力を期待したい。今後は、特許戦略とソフトウェアの開発体制にも配慮しつつ、開発を積極的に推進すべきである。[S]