資料4

開発課題名「深紫外プラズモニック・ナノ分析顕微鏡の開発」

(平成25年度採択:最先端研究基盤領域(旧一般領域) 機器開発タイプ)

チームリーダー :  河田 聡【大阪大学 大学院工学研究科 教授】
サブリーダー :  小林 実【ナノフォトン(株) 開発担当ゼネラルマネージャー】
中核機関 :  大阪大学
参画機関 :  ナノフォトン(株)
T.開発の概要
 光の回折限界を超えた高い分解能でナノ構造を観察する近接場顕微鏡を深紫外域に展開し、細胞内生体有機分子の分布、最先端半導体デバイス、ナノ材料の新しい観察分析評価装置としての役割を目指す。アルミニウムを用いたナノプローブを設計・製造開発し、従来、可視域でしか実現されていなかった表面プラズモンポラリトンを紫外域に励起する。10 nm 以下の空間分解能、1分子レベルの検出感度、99 %以上のイメージング再現性を目標とする。
U.中間評価における評価項目
(1) ナノプローブを組み込むベースとなる深紫外ラマン散乱顕微鏡の開発について、波数分解能1.7 cm-1、測定スペクトル範囲3000 cm-1以上、検出効率1.0 %、空間分解能130 nm(分光器スリット垂直方向)、250 nm(平行方向)を確認し、目標値を達成した。

(2)ナノプローブの金属マルチグレイン構造の作製について、アルミニウムのマルチグレイン構造を形成でき、プラズモン散乱波長300 nm以下で共鳴可能であることを確認した。ラマン散乱増強効果としては、アデニンの深紫外ラマンスペクトルにおいて(平面基板でのSERS増強として)増強度100倍を確認し、目標値を達成した。また当初計画になかったインジウムのマルチグレインプローブの作製にも成功し、ラマン散乱増強効果を見出した。

(3)励起光焦点位置制御については、静電容量センサーによるフィードバック制御システムを完成させ、目標値であるZ軸方向の焦点変位±40 nm以下を達成した。

(4)深紫外顕微鏡用対物レンズの開発については、スペクトル範囲2000 cm-1をカバーできる実効的な257〜279 nmでNA1.3以上、透過率80%以上の目標値を達成するレンズ設計を完了した。
V.評 価
 本研究(TERS;Tip-Enhanced Raman Scattering)は河田グループによる先行研究があり、実績も十分あると考えられる。今回は高空間分解能(<10 nm)、単一分子検出を目標とし、さらに汎用化を目指したTERSの実現に向けた戦略をとっている。AFMと深紫外ラマン散乱顕微鏡との組み合わせで発生する問題の有無が懸念されるため、組み込み実験を早急に進めるべきである。また深紫外励起であるため、医療や生体分析に応用が制約されるかも知れない点が課題である。ナノ材料評価への応用も期待されるが、光による損傷は問題とならないか、応用分野はグラフェンの他に具体例・実証例を多く示すことが望まれる。今後も着実に開発を推進すべきである[A]。