チームリーダー : |
秋山 英文【東京大学 物性研究所 准教授】 |
サブリーダー : |
久保田 英博【アトー株式会社 技術開発部 部長・取締役】 |
中核機関 : |
東京大学 |
参画機関 : |
アトー株式会社、(独)産業技術総合研究所 |
- T.開発の概要
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生物化学発光や蛍光は、医療検査、環境計測、バイオイメージングなどに広く用いられているが、微弱な発光蛍光の高感度評価には絶対光量の標準がいまだ存在しない。本開発では、評価分析対象検体の発光蛍光の絶対値定量計測を可能にする微弱発光標準光源を開発し、その実施例を示し有用性を例証する。さらにこの標準光源を用いて、これまで相対値でのみ示されてきた生物化学発光蛍光試薬自体の性能や、発光分析装置ハードウエアの感度や検出限界を、絶対値で評価し、比較可能にする技術を確立する。
- U.中間評価における評価項目
- (1)発光標準光源の作製
- 素子パッケージの試作については、開口直径2〜0.01 mmのLED素子を作製し、パルス変調技術により平均パワー1 mW〜1 pWを達成した。細胞培養容器内にLED素子と駆動回路を組み込んだ標準光源を作製した。この技術に関する特許出願は目標値を上回る2件完了できた。
- (2)波長依存性の評価ツールの開発
- 波長依存性の評価ツールについては、被校正装置の任意波長の絶対感度を工場内校正するための方針を策定する目標値に対し、白色光源とバンドパスフィルターセットを用いた校正システムと600 nm標準光源による絶対感度校正を組み合わせ、目標値より広範囲の400〜1100 nm範囲で評価し、工場内校正の実施可能なことを確認した。
- (3)微弱発光標準光源の評価
- 最小評価能力パワーの標準光源について、1 mW〜10 fWまでを評価するシステムを構築してテクニカルノートを作成し、目標値を達成した。
- (4)微弱発光定量計測の実施
- 計測事例として4項目計画し、微弱光源に対する要求出力レンジを把握した。生物発光遺伝子を組み込んだ培養細胞については、細胞あたり1 fWの発光定量計測に成功した。病理組織切片については、発光プローブの開発ができたが、発光の定量評価は未達である。汎用装置の評価については、アトー社倒立型イメージング装置と正立方イメージング装置を校正しテクニカルノートを作製できた。また蛍光定量計測については、半導体PLおよび太陽電池のELを定量評価しテクニカルノートを作製できた。計画外として多接合太陽電池の品質評価に関する適用事例を示すことができた。
- V.評 価
- 微弱光発光標準光源の作製はチームリーダーの長年の成果であり、ダイナミックレンジ11桁に亘る平面型発光ダイオード(LED)の開発に成功している。未達項目が一つあるが、多くの項目で目標値を上回っている。本研究はこのような微弱発光光源を用いて、生物発光強度を絶対評価するなど、様々な応用用途に活用しようとするものである。本分野に活躍するアトー(株)がバックアップしていることも心強く、ユーザーである産業技術研究所と共にバランスの良いチーム構成である。要素技術タイプに対する要求を超えているが、世界で標準光源として使ってもらうために、国際標準化へのスキーム・戦略を早急に描き、トレーサビリティーを作るアクションを開始することが期待される。今後も着実に開発を推進すべきである[A]。
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