資料4

開発課題名「微量放射線の生物影響評価システム(装置)の開発」

(平成24年度採択:「放射線計測領域」革新技術タイプ(要素技術型))

チームリーダー :  藤野 亮【日美商事(株) 取締役社長】
サブリーダー :  森島 信裕【(独)理化学研究所 小林脂質生物学研究室 専任研究員】
中核機関 :  日美商事(株)
参画機関 :  (独)理化学研究所、国立保健医療科学院、(株)柴崎製作所
T.開発の概要
 放射線の低線量被ばくによる生体への影響は解明されていない部分も多く、大規模、高精度かつ迅速に解析するシステムが求められている。本課題では、新規のアレイ技術、スポッティング技術を用いることにより、低線量被ばくによってタンパク質量の微小な変化を大規模、高精度かつ迅速に観測するためのシステムを開発する。これにより、低線量被ばくによる生体への影響を詳細に解明することを目指す。
U.中間評価における評価項目
(1)高精度スポット技術の開発
 384ウエルマイクロタイタープレートの半分(192ウエル)を使用できるスタンプヘッドの設計を行い、192本のスタンプピンを4.5mmピッチでセット可能なスタンプヘッドを試作した。384ウエルプレートから計測用メンブレンシートに自動的にスタンプ可能な試験評価用半自動装置の設計を行い、縦横5 x 5回のスタンプを半自動で行う試作試験機を製作し、0.9 mmピッチで4800スポット可能なアレイヤーの試作を完了した。試料のスポット結果を画像処理ソフトにより解析した結果、シグナルのばらつきは16021±2503 (mean±SD)、最大値24658、最小値8001で、SDは平均値の15.6 %、となり、目標のCV20%以下を達成した。
(2)サンプル調製法、アレイ染色法の確立
 タンパク質抽出液の選定において、2種類のタンパク質抽出液をそれぞれ用いることでタンパク質を変性状態または非変性状態で得ることができ、細胞試料の量や数、またはタンパク質の疎水性度に応じた使い分けが可能となった。優良抗体の選別では33種を選定することが出来た。
(3)統計解析とソフトウェアの開発
 アレイ画像認識プログラムを完成し、プレート内のスポット配置、および検量線の領域指定をあらかじめ指定して解析することで、照射条件別にタンパク質発現量のパターンの類似性を抽出することが可能となった。さらに、メタアナリシス機能を統計処理プログラムに追加し、反復データ(実験データでは5回)から実験差によるノイズを低減することができた。
(4)実証試験
 現地での実証試験または実試料試験を行うためのサンプル調製法、細胞の選択、照射条件についての検討を終了した。
V.評 価
 本開発は、1)高精度な試料スポット技術の開発、2) サンプルの調製法・アレイ染色法の確立、3) 統計解析とソフトウェアの開発、の三項目から構成されている。特殊スポットピンの作製とアレイヤーの作製は完了し、分析が実行できる基盤ができたことは評価できる。放射線被ばくにより影響を受けるタンパク質を探査・選別する本開発の中心的な役割を担う特異性が高い優良抗体33種類を選別したことで、次のステップへの移行に目処がついた。さらに、実証試験についてもデータ数は少ないが、放射線量により区別できる指標があることが示されたことは意義がある。今後は、放射線の影響をより安定して評価できるタンパク質の選定をさらに進め、各放射線レベルに対しての評価や装置が有効である事例を示すことが望まれる。実証件数を増やしながら、放射線被ばくの定量的評価実現に向けて、開発を着実に推進すべきである。[A]


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