資料4

開発課題名「太陽電池評価のための3D顕微メスバウア分光装置の開発」

(平成24年度採択:グリーンイノベーション領域・機器開発タイプ)

チームリーダー :  吉田 豊【静岡理工科大学 理工学部 教授】
サブリーダー :  原田 芳仁【(株)アプコ 代表取締役社長】
中核機関 :  静岡理工科大学
参画機関 :  (株)アプコ
T.開発の概要
 本プログラムの一般領域「要素技術タイプ」で開発したγ線集光技術と電子計測技術をもとに、3次元顕微メスバウア分光装置を開発し、多結晶シリコン太陽電池に含有する鉄不純物を制御するための“目”を与え、発電効率向上に寄与することを目指す。本開発により、発電中の多結晶シリコン太陽電池中の鉄不純物のキャリア捕捉過程を、結晶粒毎に粒界や転位などの格子欠陥との相関、異なる格子位置および電子状態などを区別しつつ、表面からの深さ関数で評価することを可能にすることが期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)高分解能型2次元顕微メスバウア分光装置の高機能化
 顕微メスバウア分光装置の新大型チェンバーに複数の要素技術[SEM、EBIC(Electron Beam Induced Current)、EBSD(Electron BackScatter Diffraction)]、イオン銃、光照射光学顕微鏡、XYZステージ、メスバウア分光装置など)を搭載可能にし、XYZステージの精度が当初目標より低いものの、各ハード仕様は概ねマイルストーン目標を達成し、同一サンプルの複合計測を可能にした。
(2)3次元顕微メスバウア分光装置の設計・製作
 顕微メスバウア分光装置に集光スポットサイズ100μmの新MCX(Multi-Capillary X-ray )レンズを組み込み、照射γ線を強化するとともに、エネルギー分解能のあるオージェ電子分光装置を搭載して、深さ方向の鉄成分を測定可能にする検討をしており、目標通りのスケジュールで進捗している。
(3)鉄不純物のキャリア捕捉断面積評価
 光照射下の太陽電池を測定した透過メスバウアスペクトルに格子間の鉄成分(Fe2+〜Fe1+)が100nsの時間スケールで揺動している結果が得られ、揺動速度からこの成分のキャリア捕捉断面積を明らかにした。
V.評 価
 本プログラムの要素技術タイプで開発した顕微メスバウア分光装置を応用した装置で、太陽電池の発電効率を低下させるシリコン基板中に含まれる微量鉄成分の深さ方向を含めた3次元分布を状態分析できる画期的な装置である。開発は順調に進んでおり、2次元計測はもちろん、3次元計測による太陽電池の発電効率との関連性を明確にできる結果が十分に期待される成果を挙げている。今後は、装置の複合化やソフトウェアを含めて網羅的に特許化を進めるべきである。また、ユーザーが使いやすく、必要な情報を的確に提供できる装置の開発を着実に推進すべきである。 [A]


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