チームリーダー : |
森居 隆史【(株)生体分子計測研究所 取締役】 |
サブリーダー : |
安藤 敏夫【金沢大学 数物科学系 教授】 |
中核機関 : |
(株)生体分子計測研究所 |
参画機関 : |
金沢大学 |
- T.開発の概要
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現状の高速原子間力顕微鏡(高速AFM)は、試料を走査するサンプルスキャン方式を採用しているため試料サイズに制限があり、これがアプリケーションの幅を著しく狭めている。本課題では、プローブスキャン方式の高速AFM用スキャナーを開発し、高速AFMを、単に表面形状観察装置という位置付けではなく、固液界面反応の動的解析装置として、生命科学分野にとどまらず工業材料一般にも広く適用できる汎用のツールとして進化させることを目指す。
- U.中間評価における評価項目
- (1)プローブ変位検出系のトラッキング技術の確立
- プローブの走査範囲はX, Y軸20 μmと当初の予想を上回るトラッキング範囲を達成するとともに、目標通りのトラッキングの精度を達成した。
振動抑制は逆伝達補償により10 kHz以上でほぼ目標通りの達成である。その結果、X走査を1.3 kHzで行うことができた。未だ広域/高速スキャナーは搭載できないが、プローブスキャン方式高速AFMの基本デザインを構築した。
- (2)簡便に着脱可能なカンチレバー固定法の確立
- 振動抑制は未だ固定法が確立していないが当初計画していなかった方法、逆伝達補償による振動抑制、フィードフォワード補償法によるヒステリシス及びXY間干渉の効果を除去することに成功し、固定できる見通しである。
- (3)スキャナーのコーティング技術の確立
- 水濡れによるショート防止は107 MΩ(飽和食塩水浸漬後のZピエゾ電気抵抗値)を達成し、防水方法の見通しが立った。
- V.評 価
- 本開発では、AFMの操作範囲を広げるために、従来のサンプルスキャン方式ではなく、プローブスキャン方式のための高速スキャナーを開発するもので、プローブスキャン型の高速AFMの開発として、中間目標である走査範囲20 μmのプローブトラッキングを実現し、カンチレバーの固定法とスキャナーのショート防止策については目処が立っている。ユーザビリティや頑健性までを考慮した実用化を視野に入れた開発となっている。試料側の制約が少ないプローブスキャン方式で高速化を図ることから、様々な動的観察での利用が期待されており、プローブスキャンのデータを早急に出すことが望まれる。今後も開発を着実に推進すべきである。[A]
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