チームリーダー : | 森川 淳子【東京工業大学大学院理工学研究科 助教】 |
中核機関 : | 東京工業大学 |
参画機関 : | 三幸電子(株) セキテクノトロン(株) |
- T.開発の概要
- これまでに赤外線カメラを温度センサーに用いた熱伝導率測定装置並びに二次元示差熱分析装置を開発してきた。温度画像を高速で得られるメリットを生かし、顕微レンズを用いることで微小試料について、従来にはない高感度熱量変化測定と熱の移動の様子が同時に観測できる。本装置を実用化するためには、データの取り込みと画像処理が迅速であること、各種の物性値に換算できること、安価なカメラにも適用できることなどが必要である。本課題では、可視化熱分析装置として、材料開発の現場で使用されるような安価で操作性のよい装置の完成を目標としたプログラムの開発を行う。
- U.中間評価における評価項目
- (1)画像取り込み・画像処理ソフトの開発
- 3種類の赤外線カメラからの画像取り込み、取り込んだ画像の補正、位相変化像や熱拡散計算等のデータ処理、録画の一連のプロセスにつき要求仕様を確定した。既存カメラからの画像をTIFF形式あるいはAVI形式で取り込むことに成功し、画像処理については、テストした全てのカメラについて位相変化描画を全画面で行えるソフトを完成させた。
- (2)自動温度変換ソフト、ハードウェア制御ソフトの開発
- 試料を2つの温度で観測し、それぞれの画像を温度とペアにして保存後、画面内に輻射率分布があった場合に対応するため、画面上の全画素について温度へ変換するアルゴリズムを組み込んだ。ハードウェアの制御については、インターフェース案を完成したが、通信方式やソフトの体系について構成案を検討するに留まった。
- (3)可視化熱分析測定ソフト、熱拡散率解析ソフトの開発
- 二次元熱分析可視化ソフトについては、輻射率補正ソフトの完成後に、一定温度を走査した場合の画像処理アルゴリズムを構築することとし、融点分布、差分法による熱流解析には着手しなかった。また、一定周期で加熱した場合の熱解析ソフトの一部を完成した。
- (4)全体のつながりとデータベースソフト
- 現状では各機能のソフト開発が実施されており、ユーザビリティ向上、ソフトのGUI等の視認性はデザイン案を検討中である。
- V.評 価
- 細胞内の凍結過程を高速で捉えることが可能で、温度波の伝搬解析から熱伝導率、熱拡散率、界面熱抵抗などの従来の熱分析では得られないデータを取得可能な赤外線カメラ用熱分析ソフトウェアの開発を目標としている。開発は概ね計画通り進捗しており、主要な開発目標も達成されている。今後は、本ソフトウェアの要となる温度変換ソフトの開発に本格的に取り組み、早期に統合ソフトウェアのユーザー評価版を完成させた上で、ハードウェアとともにユーザーの評価を受け、ハードウェアが真に市場性をもつよう、着実に開発を進めるべきである[A]。