資料4

開発課題名「中性子集光用非球面スーパーミラーの開発」

(平成21年度採択:要素技術プログラム【一般領域】)

チームリーダー : 山村 和也【大阪大学大学院工学研究科附属 超精密科学研究センター 准教授】
中核機関 : 大阪大学
参画機関 :  (独)日本原子力研究開発機構
T.開発の概要
 世界最高性能の中性子二次元集光用の大型非球面スーパーミラーの製造技術を確立する。このため、ミラー基板の精密加工には、大阪大学で開発されたローカルウェットエッチング法(LWE法、非接触化学的形状創成法)を用い、多層膜ミラーには原研で開発されたイオンビームスパッタ成膜によるスーパーミラー形成技術を用いる。これを大強度陽子加速器中性子源施設等に設置することにより、高密度記録媒体の微小領域精密磁気構造解析などの高機能材料の開発促進が期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)1次元集光用長尺楕円筒スーパーミラー基板の作製技術の確立
 スーパーミラー用石英基板については、精密研磨後にLWE法を適用し、長辺400 mmでの形状誤差0.39μm p-v、表面粗さ0.211 nm rmsを得た(共に成膜前精度)。本ミラーを用いた中性子集光実験においては、目標を大きく上回る集光幅0.128mm、ゲイン52倍を達成した。さらに、TOF測定より臨界角付近における反射率が70%以上であることを確認した。本形状創成技術が中性子集光用スーパーミラーデバイスの作製プロセスとして十分な能力を有することが実証できた。
(2)多重ミラー用薄板非球面スーパーミラー基板作製技術の確立
 楕円面形状を有する薄板非球面スーパーミラー基板の製作では、NC-LWEおよび低圧研磨法を用い、長辺100 mm、基板厚さ1.5mm の極薄石英基板に対して、形状精度 0.5 μm p-v以下(成膜前値)、表面粗さ0.2nm rmsレベル(成膜後)を達成した。これにより、ミリメータレベルの極薄基板に対してもサブミクロンの形状精度をトライアンドエラー無く決定論的に得ることが可能となった。
(3)2次元集光用回転楕円面スーパーミラー作製技術の確立
 回転楕円体形状を有する2次元集光スーパーミラーデバイスを作製するプロセスを新規に開発した。本プロセスを用いて小型モデルを試作し、2次元集光が可能であることを実証した。円筒基板の高精度作製プロセスの開発に関しては、直径44mm、肉厚2mmの石英ガラス製円筒基板の幅5mmの領域に対し、形状誤差0.71μmを達成し、表面粗さは成膜前で0.3 nm rms以下を達成した。
V.評 価
 本課題は、大強度陽子加速器中性子源施設等の中性子ビームラインに設置する集光用スーパーミラーの開発を目的としている。ミラー石英基板の精密加工も、ミラー上に積層する多層膜のスパッターも順調に進められており、さらに中性子ビームを用いたミラーの性能評価でも、当初予定した性能を達成している。本研究では、特に大型スーパーミラー基板の精密加工法を開発し、多層膜成長の際に生じる石英基板からの剥離の起因を解明し解決した点は非常に優れた成果である。大型非球面スーパーミラーの製作にチャレンジし、予想されなかった問題を次々と解決している点は高く評価できる。今後は、大型スーパーミラー製作技術の知的財産権を確保しつつ、広い分野への波及を推進し、更なる性能の向上を目指した開発を積極的に推進すべきである[S]。


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