資料4

開発課題名「水分子をプローブとする物質・生体評価手法の開発」

(平成21年度採択:要素技術プログラム【一般領域】)

チームリーダー : 八木原 晋【東海大学理学部 教授】
中核機関 : 東海大学
参画機関 :  (なし)
T.開発の概要
 あらゆる物質や生体には、含有されている水分子による構造形成と機能発現のメカニズムが備わっている。1μHz〜30GHzの広帯域でダイナミックな水構造を直接観測する電磁波分光装置に対し、水構造観測用電極と構造や物性・機能評価の解析手法を開発する。生体・食品からコンクリート建築物に至るあらゆる含水物質について、水分子をプローブとした品質・健常性評価システム構築へとつなげる。
U.中間評価における評価項目
(1)広帯域誘電分光法(BDS)による基礎計測部の改良
 測定周波数範囲1MHz〜3GHzを達成した。また、試料と電極装着、データ校正時間を除外すると計測時間は5分で目標を達成している。当該周波数帯では試料に含まれる水等の液体が揮発することから、揮発性試料で10時間以上測定しても揮発量を1%未満に抑制可能な電極を開発し、対処する予定である。また、測定温度範囲は目標値を達成し、校正および試料・電極の装着後、目標温度±0.1度の範囲で、温度変動速度±0.1度/分以下の計測条件で10時間の計測時間を達成した。
(2)生体の水構造評価手法の開発
 標準試料を用いた生体用高周波電極の特徴づけ手法の構築、生体自由水構造評価手法の構築を行った。電極については同軸型電極を用いて測定電場の浸透深さを定義し、外部導体直径6mmまでの特性長を求めた。また、バルクな水の観測やタンパク質水溶液、生体測定などから、0〜100%の含水量評価手法を開発し、精度±5%〜±20%とすることができた。生体不凍水については110〜273Kの範囲でタンパク質−水系の低温域での観測ができることを示した。
(3)セメントの水構造評価手法の開発
 生体水の場合と同様に測定電場の浸透深さを定義した。セメント構造水の評価については、バルクな高分子や液体の誘電測定、フレッシュセメントやモルタルの経年変化の観測から、0〜100%の含水量評価手法を開発し、精度±50%(経年モルタル)とできた。セメント構造水では(実験室系で10年経過した試料)0.1ns〜10sとなり、目標を達成した。
V.評価
 水分子の誘電分光を広帯域(1μHz〜30GHz)で測定し、生体中の水、セメント中の水の構造変化を測定することを目的とした要素技術の開発である。開発は順調に進捗しており、測定時間の短縮に成功している。また、導入した装置によって周波数領域の拡大を達成し、ほとんどの開発目標値を達成した。今後は、電極プローブのさらなる改良、電極設計のシステム化など、汎用装置化を目指した開発も視野に入れつつ、着実に開発を推進するべきである[A]。


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