資料4

開発課題名「超伝導ナノ細線HEBM素子の高性能化開発」

(平成21年度採択:要素技術プログラム【一般領域】)

チームリーダー :  福井 康雄【名古屋大学大学院理学研究科 教授】
中核機関 :  名古屋大学
参画機関 :  (なし)
T.開発の概要
 地球大気中の様々な分子・原子・イオンのスペクトル線が、テラヘルツ(THz)帯と呼ばれる高い周波数の領域に分布していることは知られているが、これらのTHz帯スペクトル線をヘテロダイン分光する実用的な高感度検出器は存在していない。本課題では、NbTiNナノ細線を用いた静電気や熱サイクルに強い超伝導HEBM(ホットエレクトロンボロメーターミクサ)素子を開発する。これにより、反応性が高いため採取観測が困難であるOHなどの短寿命微量分子の測定に寄与することが期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)1.9THz帯でのHEBMの初期開発と評価
 1.9THz帯を検出可能なHEBM素子を開発するため、細線構造の試作、電極の厚み改善、ミクサマウントとレンズの改修を実施した。これらを踏まえ、素子の製作にとりかかろうとしたが、SEMの電子ビームが時間変動して不安定化し、描画中にSEMが機能せず、重ね描画ができなくなる等の問題が発生したが、機器メーカーの協力を得て、イオンポンプの交換、電子銃エレメントの交換、SEMの光軸アライメント調整等を行い、問題を解決した。これら一連のトラブルで1ヶ月ほどの遅れが生じたが、再び素子製作を進めることが可能となった。
(2)中間周波増幅系の設計・製作
 1GHz(1GHz中心)の帯域幅をもつIF系を構築した。ショットノイズに対する出力応答も確認済である。
(3)デジタル分光計の動作試験
 IF系とのつなぎ込みを行い、基本動作試験を実施中。年内にはシステムのアラン分散の評価に進む予定である。
(4)クライオスタット、プラズマガスセルの設計
 クライオスタット内にワイヤーグリッドと冷却黒体を設置し、入力信号と冷却黒体の信号を切り替える回転導入機を構築し、導入した。プラズマガスセルについては、微量ラジカル種を生成できるガスセルサイズの設計を実施した。
V.評 価
 地球温暖化やオゾン層破壊に寄与すると言われる短寿命ガス種(ラジカル等)や星間物質等をリモートセンシングにより検出することを可能とするヘテロダイン分光法に用いる素子の開発を目標としている。素子作製プロセスラインで予期しない機器のトラブルが生じたが、チームの努力により早期に復旧し、ほぼ予定通り開発は進捗しており、トラブルに影響しなかった部分については、中間評価目標値もクリアしている。今後はトラブルの影響を取り戻すとともに、早期に目標とする素子の試作を終了し、素子を用いた応用研究によって実データの取得を行い、実用化を目指して開発を着実に推進するべきである[A]。


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