資料4

開発課題名「臨床用PETのための68Ga標識薬剤製造システムの開発」

(平成21年度採択:要素技術プログラム【一般領域】)

チームリーダー : 中山 守雄【長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 教授】
中核機関 : 長崎大学
参画機関 :  (なし)
T.開発の概要
 PET(ポジトロン断層法)で用いられる短半減期核種はサイクロトロンを設置した大型の製造装置で製造される。しかしこれらの核種は、その半減期の短さから製造施設からの輸送時間に制限があるため、利用できる施設が限られている。短半減期核種の中でも68Gaは半減期が長い68Geから産生されるため、次世代の有用なPET用核種として注目されている。本開発では68Gaをサイクロトロンなどの大型施設を用いずに、安定的に供給できるシステムの開発を行う。この開発によってPETの利用可能施設が増え、診断の地域差の解消が期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)有機系ポリマーを基体とするGe吸着剤の合成と機能評価
 68Ge−68Gaジェネレーターから68Gaを精製するために必要なGe吸着剤の開発を進めた。吸着剤の形状は真球状とし、その基本性能としては、湿潤による膨潤度1.1、吸着飽和量90〜430μmol/g、キャリアフリー(無担体)で吸着率99.99%以上、0.1Mクエン酸三ナトリウムを溶離剤として用いた場合、90〜95%の68Ga溶離率、中性pHで68Geの脱離は0.00017%以下となり、いずれも目標を達成した。
(2)68Ga錯体標識技術の確立
 常温もしくは加熱下の間接法による68Ga標識について、配位子交換効率は目標値80%以上に対して85〜90%を達成した。今回調製した68Ga標識体について生理的条件下での分解物生成についてラジオクロマトグラムを用いて検討したところ、分解物は確認されなかった。
V.評 価
 がんの診断に利用されるPETに必要な放射性核種である68Gaを大型放射光施設によらず、臨床現場で安定的に供給できるジェネレーターを開発することを目的としている。開発は順調に進捗しており、設定された中間評価時点でのマイルストーンを全てクリアしている。本分野の開発では、吸着剤の機能を従来に比べて格段に向上させることがカギとなるが、開発チームの地道な努力により、性能向上の期待が高い材料が発見されている。今後は、この材料を用いて目的とするジェネレーターの開発を着実に推進するべきである[A]。


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