資料4

開発課題名「革新的粘弾性計測手法実現への要素技術開発」

(平成21年度採択:要素技術プログラム【一般領域】)

チームリーダー : 石原 進介【京都電子工業(株)開発推進部 テクニカルエクスパート】
中核機関 : 京都電子工業(株)
参画機関 :  東京大学生産技術研究所
T.開発の概要
 流体を工業的に扱う際に、粘弾性特性が重要な物性値となる。この計測には、数十年前に開発された計測方式が今でも使用されている。本開発は、新たな方法論をもとに、非接触かつ少量の試料で粘弾性を計測可能な装置の開発を目指す。この開発により、新規材料開発、希少価値の高い医療分野などへの応用が可能になるとともに、簡便に測定ができることにより、計測機会を増大させることが期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)電流制御型磁場生成方式の基本方針策定と最終目標達成への課題抽出
 電磁スピニング法のコア技術となる電流制御型磁場生成機構を実現できた。試料セット部分のエアーギャップを確保しつつ、磁場強度100mT以上を実現することができた。また、周波数幅2オーダ可変(10〜1,000Hz)を実現することができた。現時点では目標数値に対して十分な余裕を確保できた状態ではないが、最終目標値には到達していることから、残りの期間で実用化を前提にした意味のある数値の達成を目指す。また、電磁スピニング法で0.89〜96.5mPa・sの粘度測定を実証することができ、更に粘弾性計測を実現する上で必要となる球体回転子の回転方向反転操作が可能であることを確認できた。
(2)性能目標実現へのキーファクター抽出と、実現への方針確定
 永久磁石回転方式の検証機構で、再現性が最終目標のCV10%以下を実現でき、当該手法が実用化に耐えうるものであることを示すことができた。今後、検証機構で得られた知見を基に電流制御型磁場生成方式でも再現性の数値目標を実現できるように進めて行く。現状で再現性を大きく阻害している要因は、磁界中に保持される試料を中心としたエリアにおける温度変動であることを確認した。高磁場発生のために狭い空間に大きな電力を投入することから、この部分の高精度温度調整が重要である。
(3)EMS(電磁スピニング)法における流動場解析手法の確立とモデル精密化に向けた方針確定
 理論式・数値解析解・実試料測定結果の相互照合により、実効せん断速度に関する多くの知見を得ることができた。中粘度域から高粘度域については、シンプルな線形モデルが実用的に十分な精度の範囲で現象を記述していると思われる。今後は2次的な現象発生が疑われる低粘度域への検討を進めていく。精密化へのポイントは以下の通り。
@ 回転子赤道近傍の流動場が、実効せん断速度を支配。
A 回転子径・試料容器との隙間距離に注目した検証が必要。
B 低粘度・低せん断速度領域は特に詳細な解析が求められる。
V.評 価
 極微小量の液体粘度を測定する要素技術開発であり、開発は計画に対して順調に進捗している。今後は、球体回転子の球径と表面粗度や容器内壁面との距離など、次のステップである機器開発を実施する際、設計指針となる基礎データ(回転子の材質、サイズ、表面処理等)を収集することが必要である。また、四極子回転磁場装置の発熱を抑え、粘度測定部分の温度制御など未解決な課題も視野に入れつつ、着実に開発を推進するべきである[A]。


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