チームリーダー : | 松本 弘一【東京大学大学院工学系研究科 特任教授】 |
中核機関 : | 東京大学 |
参画機関 : | ネオアーク(株) (独)産業技術総合研究所 高エネルギー加速器研究機構 |
- T.開発の概要
- 近年、大型科学・生産工場・安全工学などの分野においては、長さ・距離測定の精密化が重要な課題となっている。本開発では、光コムレーザーの精密パルス干渉性と高周波数群とを利用して、空間絶対位置を精密に計測する装置を試作・開発し、また大型部品の三次元空間位置設置技術の実現も目指す。これにより、わが国の国家戦略として期待される次世代フォトンファクトリー建設の他、ものづくり産業における品質管理やインフラ設備の安全確保など大型施設の建設・管理に貢献することが期待される。
- U.中間評価における評価項目
- (1)基点間隔の計測
- 高エネルギー加速器研究機構の基点間隔計測において、音響光学変調器を用いた高機能ヘテロダイン干渉計を開発し、干渉縞の精密位相計測実証実験を実施した。その結果、46.5 mの距離において、測定誤差は14 nm/5分、88.5 mの距離において24 nm/5分であった。誤差は想定値よりも小さく、光周波数コムのパルス性と大気ゆらぎの観点から誤差が小さい原因を解析・検討中。
- (2)空気屈折率の補正
- 中心波長1.5μmの光コムを作成しPPLN結晶を用いた第二高調波の変換効率を向上させ、最大8mW発生させた。基本波と第二高調波の2色の光コムを用いて隣り合うパルス同士の干渉縞を形成し、光コムの制御によって高コヒーレンスの干渉縞を生成した。さらに干渉縞位相の変動を評価し、各波長の信号に比べて2色の位相差の変動が低減化され、高精度な位相差測定が可能であることを実証した。
- (3)非接触計測
- 半導体レーザーを光コムに位相ロックしたヘテロダイン干渉測長器を開発した。この干渉によって合成波長が形成されるが、これと等価な光コムの自己ビート信号を発生させ、表面粗さra=0.4μmまでの表面の物体において光の位相計測を行った。この検出信号の位相を0.2°の精度で測定できたことは、信号のSN比が100以上あることを意味する。さらに補足実験によって、6mの距離まで確認した。
- V.評 価
- 光コム技術を用いることにより、測長の限界に挑戦し、野外でも使用可能な超精密な位置測定装置を目指した機器開発である。開発は順調に進捗しており、中間評価目標で設定したマイルストーンは全て達成し、基点間隔計測においては、当初の予想を超えたデータを計測するに至っている。今後は、汎用光コム装置の早期実用化を目指して、開発を積極的に推進するべきである[S]。