資料4

開発課題名「走査エレクトロスプレーによる分子イメージング」

(要素技術プログラム)

チームリーダー :  平岡 賢三 【山梨大学 クリーンエネルギー研究センター 教授】
中核機関 :  山梨大学
参画機関 :  山梨大学(大学院医学工学総合研究部)
アリオス 株式会社
T.開発の概要
 大気圧下、前処理なしの生体組織を走査プローブ顕微鏡観測下で直接局所的に質量分析する走査エレクトロスプレー分子イメージング装置を開発する。XYZ 軸ピエゾ素子駆動STM 探針を、Z方向駆動の振動数:数kHz、振幅:数10μm で上下振動させ、nm オーダーの空間分解能で生体試料と接触させて、針先に試料分子を電場誘起効果により捕捉する。探針先端に捕捉した試料分子をプラズモンで支援したエレクトロスプレーによって脱離イオン化し、直交型飛行時間質量分析計を用いて質量分析する。この走査をXY 軸方向に掃引し、生体試料のnm 領域における分子イメージング像を測定する。
U.中間評価における評価項目
(1)探針駆動システムの構築
 磁気駆動及びモーター駆動装置を用いることで、目標値の振動数を達成した。一回の試料捕捉で40amol程度の試料が検出され、果物、ヒト尿、魚肉、魚卵などの実試料の直接測定において、特有のマススペクトルが得られた。
(2)直交型飛行時間型質量分析計の高感度化
 イオン計測システムの改造を行っている。また、種々の内径と長さをもつ石英キャピラリーの設計・製作及び、飛行時間型質量分析計における第二真空チャンバーへのキャピラリー直結システムの製作・組み込み調整を行っている。
(3)探針駆動システムとYAGレーザーのシステム化
 磁気及びモーター駆動法により、駆動距離、上至点及び下至点における位置の再現性について目標値を達成した。モーター駆動装置に連動したレーザー照射システムの構築を完了した。
(4)プラズモン脱離イオン化
 ナノ先端径冷却探針による凍結試料からの分子捕獲系の構築及び、シングルイオントラップ分析系の基本設計を完了した。
V.評価
 ナノメートルオーダーの空間分解能をもつ分子イメージング質量分析技術の開発は、分子量の大きな生体高分子の分析に有用であり、次世代の生命科学分野および工業分野等への貢献が期待される。
 開発は順調に進行しており、当初目標に掲げた成果は十分達成できると思われる。 今後は、生体分子イメージングを可能とするために探針の位置決めの精度を向上する等の問題を解決し、測定可能な対象から実用化を行うように努めつつ、着実に推進すべきである。


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